伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業
愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『韓国カルチャー──隣人の素顔と現在』(集英社新書)、『韓国 現地からの報告──セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)など、訳書に『搾取都市、ソウル──韓国最底辺住宅街の人びと』(イ・ヘミ著、筑摩書房)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
これまで日韓両国は双方が新型コロナを理由に、厳しい入国制限(日本でいう水際対策)を行ってきた。特に日本は、あらゆる外国人の家族や留学生まで入国を不可とした時期があり、その厳しすぎる政策は国内外で批判もされた。韓国でもまた、当初は世界有数の厳しい入国検疫があり、人権とプライバシーに関しては、やはり国内外で問題となった。
「まさか新型コロナがあそこまで長引くとは思わなかった」
多くの韓国人が振り返るように、多少の厳しい措置も少し我慢すれば終わると思っていた。ところが何度も何度も感染の波が来て、みんな疲れてしまった。閉店する飲食店が続出し、もうもたない。さらに未知の病を恐れた初期に比べれば、人々の恐怖心も小さくなっていた。
「もう周囲でコロナに罹ったと聞いても誰も驚かないし、2回目という人だって結構いる」
驚かないというのは日本も同じだろう。8月に入ってからは1日の陽性者数が、日韓で並んで世界1位・2位を占めた日もあった。とっくに全感染者のカウントなどやめてしまった国が多い中、それでも日韓は一応保健所が数を把握している。もちろん漏れている人も相当多いだろう。
とはいえ「コロナはただの風邪」とまで言う人に韓国で会ったことはなく、よく耳にするのは「もうインフルエンザと同じだから」という言い方だ。これは韓国政府が4月下旬より感染症としてのランクを第1級から第2級に下げたためだ。指定病院もなくなり、「インフルエンザ等と同じく」(韓国メディア)普通の病院に行く。治療や入院も一部有料となったのだが、大きな不満の声は聞こえてこない。
「だって、政府の財源だって限界があるでしょうし」
その引き換えに国民に課された行動制限などもなくなった。残りは屋内でのマスク着用義務ぐらい。日本のようなアクリル板やビニールの囲いのような「感染対策」はほとんどない。
「政府も国民も十分頑張ったと思うんですよ」
まだまだ混迷する日本に比べると、韓国の人のほうがそこはさっぱりしているように感じる。切り替えが早いというのだろうか。瞬発力やスピードは、彼らの強みでもある。とはいえ、後遺症に悩む人は少なくなく、また一部にワクチン被害を訴える人もいる。さらに飲食店経営者が抱えている莫大な負債などの経済的問題も深刻であり、課題は山積みである。
論座ではこんな記事も人気です。もう読みましたか?