岸田内閣は、すでに倒壊へのカウントダウンが始まっている
2022年09月07日
【岸田首相の理由説明なき「統一教会との訣別」は、更なる大混乱を招く】でも述べたように、岸田政権は、それまで「聞く力」を強調し、「検討」ばかり重ねてきた岸田文雄首相が、安倍元首相殺害事件後に行った、前のめりの国葬の決定と「統一教会問題」払拭のための内閣改造前倒し、という2つの“決断と実行”によって重大な危機に直面することになった。
そして、内閣改造直後の「家族と一緒に楽しんだ休暇」と、その間と思われる「コロナ感染」により、久々となった、8月31日の官邸での記者会見でさらに墓穴を掘った。「統一教会」の何がどう問題なのかを全く示すことなく、「理由もない統一教会との訣別宣言」を行ったことで、今後、いまだに9月27日に実施予定となっている安倍元首相の国葬に向けて、そして、来春の統一地方選挙に向けて、党内の大混乱は必至である。
国葬に対する国民の反対意見は日を追うごとに増加し、「統一教会問題」での自民党議員へのワイドショー等での批判報道はとどまることを知らない。しかも、統一教会との関係を報告することなく経済財政担当大臣に留任した山際大志郎氏は、教団との親密な関係が次々と発覚して説明不能の状態に陥っており、その山際氏を「コロナ対策担当大臣」として閣内に抱えていることは岸田内閣にとって「爆弾」そのものである。
上記記事でも書いたように、この事態を収拾する手立ては、安倍元首相と統一教会との関係を理由に国葬を取り止めて、「統一教会問題」のケジメをつけるしかない。もちろん、それは、一旦行った閣議決定を、内閣の判断で取り消すのであるから、岸田内閣の総辞職につながることは言うまでもない。
つまり、岸田内閣は、すでに倒壊に向けてのカウントダウンが始まっているということだ。
このような局面で、今週中に、岸田首相も出席して国会の閉会中審査が行われる。
ここで野党各党がどのような姿勢で臨むのか、どのような質問を行うのかは、「岸田内閣の帰趨」を左右するというより、岸田内閣倒壊後の政治の枠組みにおいて、どの党が、国民の信頼に値すると評価されるのかの「試金石」となる。
その中でも特に注目されるのが、民主党の流れを汲む、一応野党第一党の立憲民主党である。
90年代の衆議院の小選挙区制導入後、「二大政党制」に向けて政権を担い得る野党が期待され、離合集散の末、ようやく野党勢力が結集してできたのが民主党だった。
しかし、2006年、ライブドア事件に関連して、所属国会議員が、偽メールで自民党幹事長の追及を国会で行った「永田メール事件」で、議員本人だけでなく、国対委員長、代表までもが大失態を演じ、国民の信頼を失い、結党以来の危機に遭遇した。
その後、その事件を教訓に、党組織を是正し「責任野党」を構築することが必要だった。しかし、それが十分に行われないうちに、与党自民党の方が、「消えた年金」問題で国民から厳しい批判を受け、2009年8月の総選挙で惨敗して政権の座から転落し、民主党に政権が転がり込んだ。
しかし、初の本格的な政権交代が実現したものの、政権発足前から執拗に繰り返されていた、小沢一郎氏に対する検察の攻撃が、政権発足後、党幹事長に就任した後も続いたことが原因で、党内抗争が繰り返され、東日本大震災、原発事故対応などでも厳しい批判を受け、国民の支持を一気に失って民主党政権は崩壊した。
そして、再び野党に転落した民主党とその流れを汲む、民進党、立憲民主党は、集団的自衛権での憲法解釈変更など、強引な政治手法で臨む第二次安倍政権との対立を深めたが、野党の国会での追及の多くは、当時の安倍首相など政権の主要人物の批判につながる直接的な事実を「主題」として、その疑いについて執拗に追及を続けるという単純なやり方に終始した。
森友学園問題であれば、「安倍首相又は夫人の関与」が主題とされ、それがあったのか、なかったのか、という点ばかりが追及の焦点となる。加計学園問題では、加計学園の優遇について、安倍首相の指示や関与があったのか否かの追及に終始する。
そこには、表面化した問題の本質をとらえ、政府の政策に関連づけて、追及を行っていくという姿勢は全くなかった。
加計学園問題については、【加計学園問題のあらゆる論点を徹底検証する ~安倍政権側の“自滅”と野党側の“無策”が招いた「二極化」】でも述べたように、単に、総理大臣が「腹心の友」に有利な指示・意向を示したか、という個別の問題だけではなく、その背景となった、規制緩和と行政の対応の問題、国家戦略特区をめぐるコンプライアンスに関する議論など、多くの重要な論点が含まれていた。国会での追及は、そのような点に関連づけて幅広く行っていくべきだった。
しかし、実際の野党の追及は、そのような「政策」を意図することなく、安倍首相に対する個人攻撃ばかりを繰り返す「政局」的な追及に終始してしまった。
そのような安倍首相個人をターゲットにした「政局的」な追及も、首相側の対応の拙さもあって、長期政権のイメージと信頼を低下させることには相応の効果があり、内閣支持率が大きく低下する場面もあった。しかし、その時、決まって起きたのが、
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