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「国葬」閉会中審査 野党は「モリカケ」的追及の愚を繰り返すな

岸田内閣は、すでに倒壊へのカウントダウンが始まっている

郷原信郎 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士

「関与があったのか」の追及に終始した野党

 90年代の衆議院の小選挙区制導入後、「二大政党制」に向けて政権を担い得る野党が期待され、離合集散の末、ようやく野党勢力が結集してできたのが民主党だった。

 しかし、2006年、ライブドア事件に関連して、所属国会議員が、偽メールで自民党幹事長の追及を国会で行った「永田メール事件」で、議員本人だけでなく、国対委員長、代表までもが大失態を演じ、国民の信頼を失い、結党以来の危機に遭遇した。

 その後、その事件を教訓に、党組織を是正し「責任野党」を構築することが必要だった。しかし、それが十分に行われないうちに、与党自民党の方が、「消えた年金」問題で国民から厳しい批判を受け、2009年8月の総選挙で惨敗して政権の座から転落し、民主党に政権が転がり込んだ。

 しかし、初の本格的な政権交代が実現したものの、政権発足前から執拗に繰り返されていた、小沢一郎氏に対する検察の攻撃が、政権発足後、党幹事長に就任した後も続いたことが原因で、党内抗争が繰り返され、東日本大震災、原発事故対応などでも厳しい批判を受け、国民の支持を一気に失って民主党政権は崩壊した。

 そして、再び野党に転落した民主党とその流れを汲む、民進党、立憲民主党は、集団的自衛権での憲法解釈変更など、強引な政治手法で臨む第二次安倍政権との対立を深めたが、野党の国会での追及の多くは、当時の安倍首相など政権の主要人物の批判につながる直接的な事実を「主題」として、その疑いについて執拗に追及を続けるという単純なやり方に終始した。

 森友学園問題であれば、「安倍首相又は夫人の関与」が主題とされ、それがあったのか、なかったのか、という点ばかりが追及の焦点となる。加計学園問題では、加計学園の優遇について、安倍首相の指示や関与があったのか否かの追及に終始する。

 そこには、表面化した問題の本質をとらえ、政府の政策に関連づけて、追及を行っていくという姿勢は全くなかった。

 加計学園問題については、【加計学園問題のあらゆる論点を徹底検証する ~安倍政権側の“自滅”と野党側の“無策”が招いた「二極化」】でも述べたように、単に、総理大臣が「腹心の友」に有利な指示・意向を示したか、という個別の問題だけではなく、その背景となった、規制緩和と行政の対応の問題、国家戦略特区をめぐるコンプライアンスに関する議論など、多くの重要な論点が含まれていた。国会での追及は、そのような点に関連づけて幅広く行っていくべきだった。

 しかし、実際の野党の追及は、そのような「政策」を意図することなく、安倍首相に対する個人攻撃ばかりを繰り返す「政局」的な追及に終始してしまった。

参院予算委の集中審議で質問する民進党の福山哲郎氏=2017年6月16日(肩書は当時)拡大参院予算委の集中審議で加計学園問題をめぐり質問する民進党の福山哲郎氏=2017年6月16日(肩書は当時)

 そのような安倍首相個人をターゲットにした「政局的」な追及も、首相側の対応の拙さもあって、長期政権のイメージと信頼を低下させることには相応の効果があり、内閣支持率が大きく低下する場面もあった。しかし、その時、決まって起きたのが、

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筆者

郷原信郎

郷原信郎(ごうはら・のぶお) 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士

1955年、島根県生まれ。東京大学理学部卒。東京地検特捜部、長崎地検次席検事、法務省法務総合研究所総括研究官などを経て、2006年に弁護士登録。08年、郷原総合コンプライアンス法律事務所開設。これまで、名城大学教授、関西大学客員教授、総務省顧問、日本郵政ガバナンス検証委員会委員長、総務省年金業務監視委員会委員長などを歴任。著書に『告発の正義』『検察の正義』(ちくま新書)、『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮新書)、『思考停止社会─「遵守」に蝕まれる日本』(講談社現代新書)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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