有権者の地方選での投票行動はどう変わったか?~国民民主党の見方は……
「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究【14】
岡野裕元 一般財団法人行政管理研究センター研究員
「論座」では「『政党』としての公明党~一学究の徒の政治学研究」を連載しています。1999年に自民党と連立を組んで以来、民主党政権の期間をのぞいてずっと与党だったこの党はどういう政党なのか、実証的に研究します。前回から引き続き14回目では、公明党をはじめ各党にとって重要な地方選挙(特に都道府県議会選挙)について、さらに考察を深めます。(論座編集部)
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有権者視点と政党視点から読み解く
前回「地方選挙における候補者の集票環境はどう変わったか~明推協意識調査から考える」)では、統一地方選挙における候補者の集票環境の変化を見てきた。特徴は次の三点にまとめられる。
第一に、現在の有権者の関心ある選挙は、衆議院選が「一強」状態であり、市(町・村)議選と県(道・府)議選への関心が低い。第二に、地縁組織と候補者との結びつきの希薄化が進行している。第三に、後援会組織自体は衰退(加入している有権者の割合が低下)、「政党本位」時代であるはずなのに党員数が伸びずに、候補者の集票力が厳しい状況にある。
これを受け、本稿前半部では、有権者の地方選での投票行動の変容について、データ(出典先は、明るい選挙推進協会のもの。詳細は第13回参照のこと)を用いて説明していく。さらに本稿後半部では、政党が地方政治や地方議会選挙の現状をどう認識しているのか、国民民主党の古川元久・国対委員長(衆議院議員)への取材をもとに論じたい。(2022年8月18日、筆者取材・インタビュー)。古川氏は党政治改革・行政改革推進本部長でもある。
有権者を困らせる候補者情報の不足
有権者は、統一地方選挙において、候補者情報の不足により直面するようになった。調査では、「地方選挙について『候補者の人物や政見がよくわからないために、誰に投票したらよいか決めるのに困る』という声があります。最近の地方選挙で、あなたはそう感じたことがありますか。1つ選んで番号に○をつけてください」(下記の図1)と質問している。
図1を見ると、「感じたことがある」は長期的に上昇傾向(「ない」が下落傾向)にあり、有権者は候補者情報の不足問題に直面している。「感じたことがある」は、第7回(1971年)に最小値26.3%を記録したが、第17回(2011年)で初めて「ない」と入れ替わった後、第18回(2015年)で最大値53.4%を記録した。直近の第19回(2019年)でも46.9%ある。
さらに、上記の質問項目で「ある」と回答した者に対し、「どの選挙でしたか。あてはまるものをいくつでも選んで番号に○をつけてください」(下記の図2)と複数回答方式で聞いている。
図2を見ると、「県(道・府)議会議員選挙」が一貫して最多割合を占めている。最小値52.0%(第8回・1975年)、最大値65.1%(第17回・2011年)であり、直近でも64.1%(第19回・2019年)もある。
その次に位置するのは、「市(町・村)議会議員選挙」である。最小値36.6%(第8回・1975年)、最大値59.6%(第18回・2015年)であり、直近も55.3%(第19回・2019年)となっている。有権者の身近な選挙ではなくなってきている。両選挙とも、変動があるものの長期的には増加傾向であり、図1の候補者情報不足の要因に寄与していることは明らかだ。
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