内閣支持率が急落。与党体制の退潮に有効な歯止めは用意されずに
2022年09月14日
緊迫する安全保障環境や野党の足並みの乱れから、接戦になると見られていた沖縄県の知事選挙が9月11日に投開票された。結果は、野党勢力「オール沖縄」が推す現職の玉城デニー氏が、保守のエースと言われた前宜野湾市長の佐喜真淳氏(自民、公明推薦)に予想外の大差で圧勝した。
今回の敗北は、安倍晋三元首相の国葬を半月後に控える岸田文雄政権、そして自民党にとって手痛い打撃になっている。
佐喜真氏の敗因については、“第三の候補”として元郵政民営化担当大臣の下地幹郎氏が立候補したことや、自民党本部と県連の連携が乱れたことなどさまざまな指摘がされるが、やはり世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党との深い関係、そうした関係が発覚してからの自民党の甘い対応によるところが大きいと思われる。
とりわけ、佐喜真氏自身が教団と親密な関係にあったと言われていたのは致命傷だっただろう。自民党の森山裕選挙対策委員長も、「現地では気にしている県民がおられたというのは間違いない」と述べ、教団問題が敗因のひとつだったという認識を示している。
7月に参院選を終え、これからは衆議院の解散・総選挙がなければ、本格的な国政選挙(衆院選、参院選)は2025年まで実施されることがない状況だ。だから、岸田政権にとって、今後の3年間は「黄金の3年間」になると言われてきた。
とはいえ、政治とは不思議なもので、そうした安定するはずの時期に、内部の活性化が驚くほど進むことがしばしばあるのは、歴史が教えるところだ。
今回の沖縄県知事選を皮切りに、今後、地方の首長選は波乱含みになるのではないか。さらに、来年春に控える統一地方選の結果しだいでは、地方政治の姿が大きく変わり、3年後の国政選挙を大きく揺さぶる可能性もある。
それどころか、統一地方選の結果で来秋の自民党総裁選の様相が変わり、場合によっては、総裁の交代や衆議院の解散・総選挙を招来する可能性がでてくるかもしれない。
報道各社の最近の世論調査は、そうした政治の潮流の変化を如実に映し出しているように見える。直近では、朝日新聞の世論調査(9月10、11日実施)の結果が衝撃的だ。
岸田内閣の支持率は41%で、前回8月調査の47%から低下。不支持率は39%から47%に増え、内閣発足以来、初めて不支持率が支持率を上回る結果になった。
しかも、前回調査は8月27、28日に実施されているので、わずか2週間でのこの急変である。
調査で私がとりわけ注目しているのは、「自民党の政治家は、旧統一教会との関係を断ち切れると思いますか」という設問への回答だ。8月調査では「断ち切れる」が16%で「断ち切れない」が76%であったのに、それから半月後の今回調査では「断ち切れる」はわずか12%まで減り、「断ち切れない」が81%と8割以上に達している。この間の首相の説明や自民党の「点検」に対する世論の不信感が強く表れている。
こうした不信感の拡大傾向は、自民党が旧統一教会との関係を明らかにしたうえで、断固とした対応をとらない限り、決して反転することはないだろう。少なくとも、各議員の無気力な「点検」ですむ話ではない。
メディア、とりわけテレビや雑誌では、このところ連日のように旧統一教会の過去、現在の実態、そしてそれと自民党、及び自民党国会議員との関係を追及している。世論の関心が高まる一方なので、メディアも当然にそれに応える。
メディアの報道ぶりや世論の反応を見ていると、国民や社会の関心や疑問は以下の3点に絞られてきているような印象を受けている。
第一に、反社会性を強く指摘されてきている宗教団体がなぜ、「宗教法人」として法人格を認められているのか。
第二に、報道されているように、日本人の熱心な信者が献金した莫大な額の“浄財”を、どうして北朝鮮や韓国など他国に環流させるのか。
第三に、教団の反日的、侮日的教義が明示されているのに、ことさら保守を標榜(ひょうぼう)する日本の政治家がそれになぜ同調して支援するのか。とても従来の“勝共主義”では説明できない。
これらの三つの疑問が解明されるまで、日本の世論は決して矛を収めないであろう。換言すれば、自民党が本腰を入れて疑問解明に努めなければ、党の構造的な凋落(ちょうらく)は続くだろう。
こうした基本的な問題が棚上げされていることによるマイナスは、月末に迫る安倍元首相の国葬に対する国民の賛否にも影響を与えているはずだ。
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