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ウクライナ軍の反転攻勢 その「勝因」はなにか

情報、作戦、兵站、人事の軍事的分析から考察する戦争の行方

山下裕貴 元陸将、千葉科学大学客員教授

 2022年2月24日、ロシア軍がウクライナに侵攻を開始した。ロシア軍は、北部・東部・南部の各地区において予想を超えるウクライナ軍の激しい抵抗に遭遇し、3月末には北部地区(キーウ近郊)から撤退した。その後、ロシア軍とウクライナ軍は東部及び南部地区で戦闘を継続し、両軍とも大きな損害を出しながら戦線は膠着状態になっていた。

9月6日、ウクライナ軍は東部ハリコフ州地区において攻勢作戦を開始し、わずか5日間という短期間で同州のほぼ全域を奪還する大きな戦果を上げた。

 今回は、東部ハルキウ州地区における両軍の作戦に関して、陸軍の考察要素(情報、作戦、兵站、人事)を当てはめて定性的に分析してみたい。

拡大ウクライナ東部・ハルキウ州 RESTOCK images/shutterstock.com

ウクライナ軍勝利の要因はなにか

 ウクライナ軍は短期間で、東部ハルキウ州の要衝イジュームをロシア軍から奪還し、同州の被占領地域の大半に当たる3000平方キロメートル以上を奪還した(ウクライナ軍ザルジニー総司令官のSNS)。ゼレンスキー大統領は14日にはロシア軍から解放したイジュームを訪問し、兵士達と国旗掲揚式典に参加して、作戦成功を全世界にアピールした。

〈情報〉媒体を駆使しロシアを惑わせた偽情報

 ウクライナ軍は米国及びNATO諸国から精度の高い情報(画像、電波、ヒューミントにより収集)提供を受けて、ロシア軍部隊の編成及び配備状況、装備・弾薬の現況などを正確に把握できた。

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筆者

山下裕貴

山下裕貴(やましたひろたか) 元陸将、千葉科学大学客員教授

1956年宮崎県生まれ。1979年陸上自衛隊入隊、自衛隊沖縄地方協力本部長、東部方面総監部幕僚長、第3師団長、陸上幕僚副長、中部方面総監などを歴任し2015年に退官。現在は千葉科学大学客員教授、日本文理大学客員教授。著書に『オペレーション雷撃』(文藝春秋)など。アメリカ合衆国勲功勲章・功績勲章を受章。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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