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政治家の「声」を有権者はどう聞いているか?~声質と信頼感・投票行動との関係

党首と選挙候補者の声を収集・分析して見えてきたものとは

岡田陽介 拓殖大学政経学部准教授

 この夏、選挙運動期間中に安倍晋三元首相が銃弾に倒れるという事件が発生するなか、2022年7月10日に参院選が実施された。結果は、自民党が過半数を獲得するものであった。

 そもそも岸田文雄内閣は「国民の声を聞く」内閣として2021年10月に発足した。参院選の結果が「国民の声を聞く」ことができたことを示すのか否かの議論は他に譲るとして、本稿では政治と「声」との関連について検討してみたい。

政治家のイメージ形成と「声」との関係

 政治において「声」は、考えや意見の比喩として用いられ、「政治家が国民の『声』に寄り添う」や「国民の『声』を政治に届ける」など多用される。岸田内閣の「国民の声を聞く」も同様である。ただし、本稿が焦点を当てるのは、こうした比喩としての「声」ではない。政治家が発する声そのもの、つまり、話し方や声の高さ、アクセント、抑揚なども含めた音声としての声である。

 例えば、好きな政治家や嫌いな政治家を思い浮かべてほしい。それらの政治家に対するイメージは何によって生み出されているであろうか。政治家が主張する政策への賛否はあるだろう。見た目や振る舞いの好き嫌いもあるだろう。その中に、政治家の発する声の好き嫌いはないだろうか。

 ものまね芸人による政治家の声帯模写を引くまでもなく、見た目が異なっていても、声を真似することで、政治家本人を想起させることができる。政治家のイメージ形成において、声が占める要素は存外に大きいのではないか。

 政治家は、演説や選挙カーでの連呼、政見放送、SNSの動画などを駆使し、自身の声を使って政策や公約を国民に訴えている。換言すれば、声を媒介として、政治家と有権者との直接的なコミュニケーションが広く行われている。

 仮に声が政治家のイメージ形成に効果があるとすれば、声が政治家の発するメッセージの評価や投票先の選択に対して影響を及ぼすことも充分に考えられるのではないだろうか。筆者はこれまで、政治家の声、なかでも声の高低に焦点を当てた研究を行ってきた。本稿では、そうした研究結果を基に、政治家の声について改めて考えてみたい。

拡大参院選で街頭演説をする自民党の岸田文雄総裁=2022年7月3日、札幌市中央区

説得する場面で有利に働く低い声

 人の声は声帯の振動によってもたらされる。声帯は体の大きさに比例して大きさが決まり、声の高低も異なる(Titze 1989)。

 楽器を想像してみるとわかりやすい。管楽器であれ弦楽器であれ、大きい楽器であれば音も低くなる。人の声も同様に体が大きくなれば声も低くなる。したがって、一般に体の大きい男性が女性に比べ声は低くなる。声の高低を測る代表的な指標は周波数(Hz)であるが、既存研究では概ね成人男性で100~150Hz、成人女性で200~300Hz程度とされ、周波数が低いほど低い声となる。

 声の高低によって、聞き手が受ける印象も異なる。高い声が「誠実さ」「真面目さ」「説得力」「強さ」などの評価を下げる一方で、「神経質」との認識を高めるとされている(Apple,Streeter & Krauss 1979) 。すなわち、対人的コミュニケーションにおいては、低い声の方が他者を説得する場面で有利には働くといえる。

 ニュースを伝えるテレビのアナウンサー、あるいは検査結果を伝える医師を想像してみてほしい。甲高い声で伝えられる場合と落ち着いた低い声で伝えられる場合とでは、どちらがより好ましく信頼感があるだろうか。おそらく、低い声ではないだろうか。これは、政治家も同様であろう。

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筆者

岡田陽介

岡田陽介(おかだ・ようすけ) 拓殖大学政経学部准教授

1976年生まれ。学習院大学大学院政治学研究科博士後期課程修了、博士(政治学)。専攻は政治心理学。立教大学社会学部助教等を経て現職。著書に『政治的義務感と投票参加』(木鐸社)、『日本政治とカウンター・デモクラシー』(共著、勁草書房)、『東日本大震災からの復興過程と住民意識』(共著、木鐸社)など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです