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臨時国会で岸田首相が追い詰められる、国葬と統一教会をめぐる三つの矛盾

安倍、細田、山際各氏というアキレス腱、内閣府設置法によるごまかし

郷原信郎 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士

細田議長は安倍氏と統一教会との関係を説明せよ

 第一の、安倍元首相と統一教会の関係の問題は、岸田首相が会見や答弁で繰り返してきた「国葬実施の理由」の4つの理由の一つ「6回の国政選挙で信任を得て憲政史上最長の8年8ヶ月首相に在任したこと」に関連する。

 第二次安倍政権下において、国政選挙で勝利を重ねてきたことと「統一教会」との関係が問題にされ、安倍氏が、信者に対して広告塔的な役割を果たす一方、参院選等で統一教会票の差配をしていた疑いがあることが関係者の証言によって指摘され、国葬への反対理由の一つとされてきた。

 岸田首相は、国葬の1か月近く前の8月31日の記者会見で、自民党総裁として、「旧統一教会とは一切の関係を断つ」と明言したが、そのように「自民党が絶縁すべきとしている宗教団体」との間で、安倍元首相が、国政選挙で応援を要請し、教団の票を自分と親しい候補者に割り当てていたということになると、「国政選挙での勝利」の正当性に重大な疑念が生じることになる。

 しかも、統一教会は、「歴史的に韓国を苦しめてきた日本は、“罪滅ぼし”をするために、信者が、お金を集めて教祖の文鮮明に捧げなければならない」という「反日カルト」の教義を有する宗教団体だ。保守政治家でありながら、そのような宗教団体と緊密な協力関係を有していたことは、その政治家の「国葬」を実施することの正当性を強く否定する理由になるのは当然だ。

 このような安倍元首相と統一教会との関わりについて、岸田首相は、

 「本人が亡くなっている以上、調査には限界がある」

 として、調査の対象とすることを拒絶してきた。その点に関して、安倍氏以外で「当事者的立場」にあったと指摘されているのが、安倍派(清和会)の安倍氏の前任の会長の細田博之衆院議長だ。

 細田氏は、参院選における統一教会票を差配していたが、関係者の証言によって指摘されている上に、韓鶴子総裁も参加した統一教会のイベントで来賓として挨拶し、その際、

 「今日の模様は安倍総理にも報告しておく」

 と発言した映像が残っている。

衆院本会議を終え、記者の質問に答えながら国会を出る細田博之議長=2022年10月5日、国会内拡大衆院本会議を終え、記者の質問に答えながら国会を出る細田博之議長=2022年10月5日、国会内

 臨時国会開会前、細田氏は、野党側の要求に応えて、説明用の「一枚紙」で、教団のイベントへの出席を認めたが、否定しようのない会合への出席と、選挙で支持されていたことを認めただけのものだった。教団との関係等について追加の説明を求められた細田氏は、10日以内にさらなる説明をするとしている。

 前記イベントでの発言からしても、細田氏は、安倍氏と統一教会との関係についても説明できる立場であることは明らかであり、その点について、今後の説明の中で、新たな事実が確認される可能性がある。それ如何では、安倍氏の国葬を行ったことの正当性が大きく失われる事態になる可能性がある。このような形で、容易に解明できる「安倍元首相と統一教会」との関係を調査の対象とせず、国葬を強行したことについて追及されると「説明不能」となることは必至だ。

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筆者

郷原信郎

郷原信郎(ごうはら・のぶお) 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士

1955年、島根県生まれ。東京大学理学部卒。東京地検特捜部、長崎地検次席検事、法務省法務総合研究所総括研究官などを経て、2006年に弁護士登録。08年、郷原総合コンプライアンス法律事務所開設。これまで、名城大学教授、関西大学客員教授、総務省顧問、日本郵政ガバナンス検証委員会委員長、総務省年金業務監視委員会委員長などを歴任。著書に『告発の正義』『検察の正義』(ちくま新書)、『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮新書)、『思考停止社会─「遵守」に蝕まれる日本』(講談社現代新書)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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