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臨時国会で岸田首相が追い詰められる、国葬と統一教会をめぐる三つの矛盾

安倍、細田、山際各氏というアキレス腱、内閣府設置法によるごまかし

郷原信郎 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士

 9月27日、安倍元首相の「国葬」が、国民の多数の反対にもかかわらず「強行」された後、10月3日に、国会が召集された。12月10日までの会期で臨時国会が開催される。

 これまで、私は、安倍元首相殺害事件後の岸田首相の対応を厳しく批判してきた。

 7月22日に、「国葬」が閣議決定された直後の拙稿【安倍元首相「国葬儀」が抱える重大リスクに、岸田首相は堪え得るか】では、安倍氏の「政治手法」に起因する社会の「二極化」「分断」は、「国葬儀」実施でさらに深刻化すること、国葬の警備等に膨大な費用を要することなどから、国民の批判が高まることは必至だと述べた。

 そして、安倍氏殺害事件の背景となった統一教会問題での閣僚や自民党への批判の高まりを受けて、9月と予想されていた内閣改造を急遽前倒しして、8月10日に、新内閣を発足させたことが、最悪の「決断と実行」であったことを、内閣改造直後の拙稿【岸田首相は「反日カルト」と決別し、統一教会への日本からの資金の流れを解明せよ】で指摘した。

 【岸田首相の理由説明なき「統一教会との訣別」は、更なる大混乱を招く】では、家族との休暇、自身のコロナ感染の後、内閣改造後初めて記者との対面で行った8月31日の首相官邸での記者会見で、岸田首相が、自民党としての「統一教会との訣別宣言」を宣言しながら、「統一教会の何がどう問題だから訣別するのか」について何も述べなかったことで、事態は一層混乱、深刻化すると述べた。

 その後も、国葬への反対意見は日を追うごとに高まり、賛成を大きく超えたが、岸田首相は、「国葬」を強行した。それについて内閣として説明責任を問われるのが、この臨時国会だ。

開会した臨時国会の衆院本会議で、所信表明演説を行う岸田文雄首相=2022年10月3日、瀬戸口翼撮影 開会した臨時国会の衆院本会議で、所信表明演説を行う岸田文雄首相=2022年10月3日

 支持率が大きく低下している岸田内閣は、国会での野党の追及、マスコミの批判に対して、説明が困難な多くの問題を抱えている。とりわけ、「説明不可能」と思える問題が、三つある。

 第一に、安倍元首相と統一教会の関係、第二に、重要閣僚である山際大志郎大臣と統一教会との関係、第三に、「国葬儀」の法的根拠として「内閣府設置法」を持ち出したことに関する問題だ。

細田議長は安倍氏と統一教会との関係を説明せよ

 第一の、安倍元首相と統一教会の関係の問題は、岸田首相が会見や答弁で繰り返してきた「国葬実施の理由」の4つの理由の一つ「6回の国政選挙で信任を得て憲政史上最長の8年8ヶ月首相に在任したこと」に関連する。

 第二次安倍政権下において、国政選挙で勝利を重ねてきたことと「統一教会」との関係が問題にされ、安倍氏が、信者に対して広告塔的な役割を果たす一方、参院選等で統一教会票の差配をしていた疑いがあることが関係者の証言によって指摘され、国葬への反対理由の一つとされてきた。

 岸田首相は、国葬の1か月近く前の8月31日の記者会見で、自民党総裁として、「旧統一教会とは一切の関係を断つ」と明言したが、そのように「自民党が絶縁すべきとしている宗教団体」との間で、安倍元首相が、国政選挙で応援を要請し、教団の票を自分と親しい候補者に割り当てていたということになると、「国政選挙での勝利」の正当性に重大な疑念が生じることになる。

 しかも、統一教会は、「歴史的に韓国を苦しめてきた日本は、“罪滅ぼし”をするために、信者が、お金を集めて教祖の文鮮明に捧げなければならない」という「反日カルト」の教義を有する宗教団体だ。保守政治家でありながら、そのような宗教団体と緊密な協力関係を有していたことは、その政治家の「国葬」を実施することの正当性を強く否定する理由になるのは当然だ。

 このような安倍元首相と統一教会との関わりについて、岸田首相は、

 「本人が亡くなっている以上、調査には限界がある」

 として、調査の対象とすることを拒絶してきた。その点に関して、安倍氏以外で「当事者的立場」にあったと指摘されているのが、安倍派(清和会)の安倍氏の前任の会長の細田博之衆院議長だ。

 細田氏は、参院選における統一教会票を差配していたが、関係者の証言によって指摘されている上に、韓鶴子総裁も参加した統一教会のイベントで来賓として挨拶し、その際、

 「今日の模様は安倍総理にも報告しておく」

 と発言した映像が残っている。

衆院本会議を終え、記者の質問に答えながら国会を出る細田博之議長=2022年10月5日、国会内衆院本会議を終え、記者の質問に答えながら国会を出る細田博之議長=2022年10月5日、国会内

 臨時国会開会前、細田氏は、野党側の要求に応えて、説明用の「一枚紙」で、教団のイベントへの出席を認めたが、否定しようのない会合への出席と、選挙で支持されていたことを認めただけのものだった。教団との関係等について追加の説明を求められた細田氏は、10日以内にさらなる説明をするとしている。

 前記イベントでの発言からしても、細田氏は、安倍氏と統一教会との関係についても説明できる立場であることは明らかであり、その点について、今後の説明の中で、新たな事実が確認される可能性がある。それ如何では、安倍氏の国葬を行ったことの正当性が大きく失われる事態になる可能性がある。このような形で、容易に解明できる「安倍元首相と統一教会」との関係を調査の対象とせず、国葬を強行したことについて追及されると「説明不能」となることは必至だ。

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山際氏の疑惑は内閣の致命傷になりかねない

 第二に、安倍元首相の国葬実施の閣議決定の際も、その後の改造内閣でも経済再生担当大臣の要職を務めている山際大志郎氏の統一教会との関係についての重大な疑惑だ。

 これまでの山際氏の説明は、教団の会合、イベントへの出席等について自発的に真実を明らかにしようとする姿勢は全くなく、客観的事実を突きつけられて、やむを得ず認める、ということを繰り返してきた。

 さらに、

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