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スウェーデンの総選挙からあぶり出される、公選法でがんじがらめの日本の選挙

静かなのに熱気があり、オープン。日本ではできない戸別訪問が有権者と政党を結ぶ

逢坂 巌 駒澤大学 法学部准教授

 9月、スウェーデンとイタリアに行った。両国で行われる選挙を見物するためだ。選挙運動の日本との相違などが興味深かったが、何より両国とも移民排除を掲げてきた右派が伸長し政権を得たことが印象的だった。もしかしたらヨーロッパの曲がり角になったかもしれない先月の二つの選挙。日本との比較を交えつつ、2回に分けてレポートしたい。

 最初はスウェーデンのストックホルム。4年に1度おこなわれる総選挙の見物だ。ざっと街を見ただけの慌ただしい見物だったが、感想としては明るくも薄ら寒い選挙だった。

 明るいというのは、町が色とりどりの選挙ポスターで飾られ、「選挙小屋」では候補者らと市民が議論する。選挙がみんなで参加するお祭りのように楽しげなものだったことだ。

 うすら寒いというはその華やかなポスターの中身や選挙結果に移民排斥やナショナリズムの高揚など欧州の右傾化・排他化が感じられたからだ。移民は敵だ、EUを出ようなど訴えてきたスウェーデン民主党が勝利して、国会の各委員会の議長職を得ると共に政権入りする可能性も高まっている(2022年10月5日現在)。

日本は衆参議員選挙の選挙区の投票率(総務省)、スウェーデンは国政選挙(選挙管理委員会)拡大日本は衆参議員選挙の選挙区の投票率(総務省)、スウェーデンは国政選挙(選挙管理委員会)

 スウェーデンは北欧の立憲君主国。国土は日本の1.2倍、人口は約1000万人で首都ストックホルムに約100万人が暮らす(同都市圏には240万人)。政治的には長く社会民主主義の力が強く、高負担高福祉の福祉先進国。文化面での多様性を重んじるリベラルな国としても有名だ。国民の政治参加も盛んで投票率は高い。

 若者へのデモクラシー教育も盛んで若年層の投票率も高く、デモクラシーのお手本と見做されることも多い。しかし、21世紀に入って移民排斥を掲げるスウェーデン民主党(SD)が徐々に勢力を伸ばしてきており、パンデミックを挟んだこの4年間でどのような変化が起こったのか。


筆者

逢坂 巌

逢坂 巌(おうさか・いわお) 駒澤大学 法学部准教授

東京大学法学部卒。同大学院法学政治学研究科修了後、同博士課程中退。同大学助手、立教大学社会学部助教などを経て現職。専門は現代日本政治、政治コミュニケーション。著書に『日本政治とメディア』(中公新書、2014年)『「戦後保守」は終わったのか』(KADOKAWA、2015年、共著)『政治学』(東京大学出版会、2022年、共著)『テレビ政治』(朝日選書、2006年、共著)など。現在はアイルランドに滞在、University College Dublin, Ireland Visiting Professor。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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