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政治も経済も外交も習近平という独裁の危うさ 経済は? 台湾は?

中国共産党大会を分析する

田中均 (株)日本総研 国際戦略研究所特別顧問(前理事長)、元外務審議官

 第20回中国共産党大会はかつて見ない独裁体制を誕生させ閉幕した。部外者から見れば中国の様な市場経済を半ば取り入れた情報化現代社会と強権体制は両立しうるのか、はなはだ疑問に思うが、それが習近平のいう「中国の特色ある社会主義」たる所以か。共産党大会の結果から見えてきた諸点について率直に論考したいと思う。日本の戦略については今後の記事の中で論じていく事としたい。

中国共産党の次期最高指導部となる7人=2022年10月23日、北京・人民大会堂

権力を求める習近平の執拗なアプローチ

 驚くべき執拗さである。習近平は総書記に就任した2012年から中華民族の復興、即ち、中華人民共和国が100周年を迎える2049年までに米国を凌駕する最強の国家になる事を「中国の夢」と掲げ、それを実現するためには毛沢東時代の様な権力の集中が必要と考えたのだろう。「反腐敗闘争」も事実上政敵を排除する道具ともなった。

 そして二期10年に限るとする国家主席の任期を撤廃することに始まり、今次共産党大会ではかって鄧小平が毛沢東時代の反省の上に導入した集団的指導体制や世代交代の仕組みを事実上無効にするような行動をとった。独裁的体制を防ぎ世代交代を実現することを旨として実践されてきた政治局常務委員会の68歳定年の内規は無視される結果となった。習近平は68歳を超え総書記として3期目に入ることとなり、更には4期、5期を狙えるような体制が出来つつあるようにも見える。

共産党大会の開幕式で政治報告を行う習近平総書記(国家主席)=2022年10月16日、新華社

 今回の政治局常務委員会の布陣では年齢、実績等の基準で見て習近平の後継となり得るような人材が登用されているわけではない。むしろ習近平の側近グループが新たに常務委員に登用され、習近平との「距離」が重視されている。

 習近平との意見の違いが注目されてきた李克強首相は常務委員から外れ、将来のリーダーと目されていた胡春華に至っては常務委員に登用されなかったばかりか政治局からも外され、その一段階下の中央委員に降格となった。習近平の有力な対抗勢力と見られてきた共産主義青年団出身者は軒並み権力中枢から外される結果となっている。

 共青団出身の長老である胡錦涛前総書記が共産党大会閉会式の途中で追い立てられるように退席したのは、巷間伝えられる体調不良による自発的な退席ではなく、人事に不満を持つ胡錦涛前総書記をこれ見よがしに退席させたと考える方が自然なのかもしれない。

中国共産党大会の閉幕式で、係員に腕をつかまれて退席を促される胡錦濤前総書記。隣には習近平総書記が座っていた=2022年10月22日、北京の人民大会堂

 習近平体制が格段に強化されたのは間違いがない。しかし中国特有の権力闘争が完全に封じ込められたわけではない。この間、人事等での大きな不満が蓄積され、機会を捉え権力闘争に繋がっていく可能性もないわけではない。特に来春以降の政府人事で習近平総書記の側近で常務委員会No.2に取り立てられた李強上海市党委員会書記が首相となる事が想定されている。

 従来は政治・外交面では習近平総書記、経済運営については李克強首相という大まかな役割分担があったが、これからは政治も経済も外交も習近平総書記が采配を振るうということになる。果たして習近平の強権を振るう姿勢が経済運営に通じるのかが最大の着目点となろう。

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