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中国が台湾に攻めこむ可能性は、きわめて低い

上陸作戦も空挺部隊による急襲も、成功はおぼつかない

山内康一 前衆議院議員

6年以内に中国が台湾に侵攻?

 台湾海峡をめぐる国際情勢が注目されている。2021年3月の米インド太平洋軍デービッドソン司令官の「6年以内に中国が台湾に侵攻」する可能性があるとの衝撃的発言もあった。ウクライナ戦争に加えて台湾情勢の緊迫化が、防衛費をGDP比2%に引き上げる流れをつくった感もある。習近平体制の長期化が確定し、さらに雲行きがあやしくなったとの報道もある。

 本当に台湾海峡はそれほど差し迫った危機なのだろうか?

 防衛省の官僚(背広組)の岩池正幸氏が書いた「データで知る現代の軍事情勢」(2021年、原書房)のデータを主に参照しながら台湾海峡をめぐる軍事情勢について考えてみたい。

 なお、サイバー戦や宇宙空間の戦いについては前例も少なく、状況がよくわからない(予測しにくい)ためふれない。また、中国共産党は台湾を領土の一部と見なしている以上、核攻撃の選択肢はないと思われるため、核戦力についてもふれない。通常兵器の戦力に限って考察する。

Tomasz Makowski/shutterstock.com拡大Tomasz Makowski/shutterstock.com

中国が備えるべき14カ国の国境

 第一に地勢は重要だ。台湾本島は約3.6万平方キロで、ざっくり言うと日本の10分の1の広さである。山地と丘陵地が多く、平地は少ない。人口は約2300万人と、日本以上に人口密度が高く、都市化が進んでいる。

 台湾には1200キロの海岸線があるが、上陸作戦に適した土地は限られ、わずか14カ所と見積もられる。上陸作戦の適地が限られ、守備側に有利である。夏は熱帯風が強く、冬は寒風が強いため、上陸作戦に適した時期は3月下旬から4月末、および、9月下旬から10月末に限られる。

 単純に軍事力を比較したのが以下だ。

● 陸上兵力: 中国 203.5万人 VS 台湾 16.3万人

● 戦術潜水艦: 中国 54隻 VS 台湾 4隻

● 水上戦闘艦: 中国 82隻 VS 台湾 26隻

● 第4世代戦闘機: 中国 1080機 VS 台湾325機

● 防空ミサイル: 中国 882 VS 台湾202

 中国軍が圧倒的ではあるが、単純な比較はあまり意味がない。台湾が備えるべき軍事的脅威は中国大陸だけだ。一方、中国が備えるべき脅威は数多い。

 ロシアとは良好な関係にあるとはいえ、かつて中ソ国境紛争を戦い、完全に心を許せる相手ではなく、東北地方のロシア国境に軍隊を張り付ける必要がある。インドとの国境も緊張しており、近年も国境紛争で死者が出ている。ベトナムともかつて戦火を交えており、その抑えも必要だ。南シナ海の人工島にも守備隊を置かなくてはならないし、国内のチベットや新疆ウイグル自治区の治安対策も無視できない。

 中国は14カ国と地上で国境を接するため、国境警備だけで相当な兵員が必要だ。陸軍や空軍の全兵力を台湾に向けられるわけではない。

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筆者

山内康一

山内康一(やまうち・こういち) 前衆議院議員

 1973年福岡県生まれ。国際基督教大学(ICU)教養学部国際関係学科卒。ロンドン大学教育研究所「教育と国際開発」修士課程修了。政策研究大学院大学「政策研究」博士課程中退。国際協力機構(JICA)、国際協力NGOに勤務し、インドネシア、アフガニスタン等で緊急人道援助、教育援助等に従事。2005年衆議院議員初当選(4期)。立憲民主党国会対策委員長代理、政調会長代理等を歴任。現在、非営利独立の政策シンクタンクの創設を準備中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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