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トランプ氏は何に敗れたのか~米国中間選挙を読み解く

Z世代が押しとどめた「赤い波」と民主党の課題

花田吉隆 元防衛大学校教授

 米国中間選挙は、予想に反し大接戦の展開となった。選挙前、下院は共和党が過半数を制し、また、上院も接戦になるとしても共和党が有利、といわれていた。13日現在、CNNによれば、下院は、民主党と共和党が204対211と、双方とも過半数獲得に至っていない(過半数は218議席)。

拡大民主党と共和党の獲得予想議席=朝日新聞デジタルから

 上院は、ジョージア州でいずれの候補も過半数を獲得しなかったため12月6日に行われる再選挙の行方が注目されたが、残ったネバダ州で民主党が勝利したことで民主党の議席が非改選も含め50議席に達し、ジョージア州の結果いかんにかかわらず民主党が上院を制することとなった。これは大きい。

 下院で、仮に共和党が多数をとれば法案の成立が難しくなることは事実だが、民主党が否決したい法案が下院で成立しても上院で否決できることになり、民主党は一定の影響力を確保できることになる。更に、政府高官や連邦最高裁の人事は上院の承認事項だ。

拡大バイデン大統領(左)とトランプ前大統領

 選挙前、「レッドウエーブが起きるのではないか」(赤は共和党のシンボルカラー)といわれたが、バイデン大統領はこれまでの結果を踏まえ「レッドウエーブは起きなかった」と断じた。何故、事前の予想が外れたか、今後の米国政治のポイントは何か、最終結果はまだ判明していないが、とりあえず以下2点が重要だろう。

共和党「インフレと治安」vs. 民主党「中絶と民主主義」

 第1は、当たり前だが、有権者と投票者は同じでないということだ。事前の世論調査は、有権者全体を対象にその関心や支持の動向を探っていく。全ての有権者が投票に行けば、投票結果は世論調査を反映したものになるだろうが、投票に行くのは全ての有権者ではない。つまり、調査結果に表れた有権者の関心や支持の動向は必ずしも投票者のそれと一致するわけではない。

拡大トランプ前大統領の演説に盛り上がる有権者ら=2022年11月5日、米ペンシルベニア州

 事前の各社世論調査では、有権者の関心はインフレ、経済・雇用、移民、犯罪麻薬等にあるとされた。共和党はこれを踏まえ、選挙の争点をインフレと治安に絞った。これに対し、民主党が争点としたのは中絶と民主主義だ。民主党が取り上げた争点は有権者の関心とずれており、これでは勝利は覚束ないと大方が予想した。ところが事実はそうでなかった。

 6月、連邦最高裁は中絶の権利を認めた1973年判決を覆し、これを各州の判断に委ねるとした。これに危機感を持った有権者が大挙して投票に向かったのだ。NBCによる出口調査ではインフレが31%と最も高かったのは予想どおりとして、中絶がそれに次ぐ27%と予想外の関心の高まりを見せた。ちなみにその他は、犯罪(11%)銃規制(11%)移民(10%)となっている。更に、もう一つの「民主主義を守らなければならない」との民主党の主張も有権者の心にそれなりに響いた。

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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