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国会をどう改革するか~「変換型議会」を志向する立憲民主党と日本維新の会

「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究【19】

岡野裕元 一般財団法人行政管理研究センター研究員

 「論座」では「『政党』としての公明党~一学究の徒の政治学研究」を連載しています。1999年に自民党と連立を組んで以来、民主党政権の期間をのぞいてずっと与党だったこの党はどういう政党なのか、実証的に研究します。今回はその19回。立憲民主党、日本維新の会の野党2党が国政・統治システム、わけても国会改革についてどういうスタンスを示しているかを論じます。(論座編集部)
◇連載「『政党』としての公明党~一学究の徒の政治学研究」は「こちら」からお読みいただけます。

拡大衆院本会議場=2022年11月17日、国会内

 前回「日本で政治への信頼喪失はなぜ進むのか?~統治システムの観点から検証する」から、新たなフェーズとして、各党からの聞き取りも交えつつ、地方政治と選挙制度から現代日本の政党についての考察を深める作業に入っている。本稿では、野党第1党を争う立憲民主党、日本維新の会が統治システム、とりわけ国会についてどういうスタンスを示しているか論じる。

統治システム改革で重点を置く分野

 まず、立憲、維新の野党2党は、国の統治システム改革に関して、どの分野に重点を置いているかを分析したい。手がかりは、2021年衆院選における選挙公約である。

 立憲民主党の「立憲民主党 政策集2021」を見ると、項目は、公務員制度改革(詳細項目数9)▽選挙制度(同9)▽政治改革(同2)▽若者の政治参加(同2)▽国会改革(同18)▽行政改革(同11)▽行政監視(同6)である。詳細項目数の数から、国会改革に重点を置いていることがうかがえる。

 公約全体をとおして、具体的な数値や期間、財源といったものがほぼ欠如しており、その点では民主党時代と比較して「後退」したように見える。ただし、「マニフェストにおいて数値目標や期限、財源を過度に重視するのは、日本的な誤解であり、それは今までの日本政治における公約なるものがきわめて具体的な利益誘導か、逆に抽象的なレベルでは整合性を欠いた願望の羅列(ウィッシュ・リスト wish list)かのどちらかであったという経験に由来していると思われる」との山口二郎の指摘もある(山口二郎『内閣制度』東京大学出版会、2007年、p.140)。

拡大衆院選公約の発表の記者会見で、記者の質問に答える立憲民主党・枝野幸男代表=2021年10月13日、東京都千代田区

 次に、日本維新の会の「日本維新の会 基本政策 維新八策2021」を見てみよう。8個ある重点の一番目は「『身を切る改革』と徹底した透明化・国会改革で、政治に信頼を取り戻す」である。その中身は、議員待遇(詳細項目数10)、国会改革(同18)、公務員改革(同7)、行政改革(同19)、選挙制度改革(同8)であった。

 大阪府や大阪市などの自治体マネジメント経験から、行政改革に重点が置かれているのは当然だが、国会改革も重視しているのが特徴的だ。

機能を十分に果たしていない日本の国会

 このように、選挙公約からは、両党とも国会改革に重きを置いていることが分かった。

 実際、政治学において、平成の政治改革で残った領域は、国会(特に参議院)と地方自治体内部の政治制度とされている(待鳥聡史『政治改革再考 変貌を遂げた国家の軌跡』新潮社、pp.272-274)。また、「政治主導の政策決定は、国会改革と一組で考える必要があることは、国会や政府の制度に精通していた人々には自明」との指摘もある(前田幸男・濱本真輔「政権と政党組織」前田幸男・堤英敬[編著]『統治の条件 民主党に見る政権運営と党内統治』千倉書房、2015年、p.13)。両党の問題意識は的を射ていると言えよう。

 では、両党は国会をどう改革しようとしているのだろうか。

 ところで、議会の分類方法として、立法の出力方法の視点から、アリーナ型議会と変換型議会に分ける見方がある(N・W・ポルスビー(加藤秀治郎・和田修一[訳])「立法府」1975年(加藤秀治郎・水戸克典[編]『議会政治[第3版]』慈学者、2015年、p.122))。

 アリーナ型議会とは、イギリス庶民院の本会議を舞台に、時間をかけ、白熱した論戦の場(アリーナ)として機能させる議会である。一方、変換型議会とは、アメリカ連邦議会のように委員会の存在が大きく、「いろいろと出される要望をまとめ、法律に変換する自立的能力を有し、その能力をよく発揮する型の立法府」のことであり、「そこでは変換という活動が最も重要となる」(同上、pp.117-118)。

 「21世紀臨調」は、2010年の時点で「わが国の国会はこれまで、『アリーナ型=議論する国会』はもちろん、『変換型=丁寧な法案審議と法案修正の可能性』『行政監視』のいずれの機能も十分ではなかった」と指摘する(21世紀臨調「政権選択時代の政治改革課題に関する提言」平成22年4月16日、佐々木毅・21世紀臨調[編著]『平成デモクラシー 政治改革25年の歴史』講談社、2013年、p.360)。

 また、民主党政権が試みた統治機構改革が挫折した原因も、「国会での立法化と国会自体にかかわるハードルがあまりにも高かったこと」が指摘されている(野中尚人「政治主導・政府・国会」佐々木毅・21世紀臨調[編著]『平成デモクラシー 政治改革25年の歴史』講談社、2013年、p.61)。

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筆者

岡野裕元

岡野裕元(おかの・ひろもと) 一般財団法人行政管理研究センター研究員

1989年千葉県佐倉市出身。学習院大学法学部卒業。学習院大学大学院政治学研究科政治学専攻博士後期課程修了、博士(政治学)。現在、一般財団法人行政管理研究センター研究員のほか、報道番組の司会者の政治アドバイザーも務める。元青山学院大学文学部・学習院大学法学部非常勤講師。専門は、地方政治、政治学。著書に、『都道府県議会選挙の研究』(成文堂)、『官邸主導と自民党政治――小泉政権の史的検証』(共著、吉田書店)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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