合意文言は「ガラス細工」のようなものだった
2022年12月01日
11月19日までの約1週間、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議(カンボジア)、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット、インドネシア)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議(タイ)と、一連の重要な国際会議が東南アジアを舞台に開催された。会議には各国首脳が集結、東南アジアを軸に外交が展開され世界の命運を決めていった。中でも最大の焦点はG20サミットだ。
G20サミットは最終的に首脳宣言を採択し閉幕した。その首脳宣言は「ほとんどのメンバーは侵略を強く非難した」「核の威嚇や使用は認められない」と明記する一方、「状況と制裁について他の見解や異なる評価があった」と併記した。これをもってこの首脳宣言は両論併記に終わったとし、一つの立場にまとまらなかったかのような印象で語られる。
しかし、宣言は、「ほとんどのメンバー」が侵略に反対で、そうでない「ロシア」の立場もあったとする。つまり、明らかにロシア非難のトーンでまとめられている。だが、G20開幕前、メンバー国の立場はそれぞれ異なり、決してロシア非難のトーンで一致していたわけではない。一体、首脳宣言採択の裏で何があったのか。
インドネシアのジョコ大統領にとり、G20議長国のお鉢が回ってきたのはまたとないチャンスといえた。インドネシアは世界4位の人口を擁し、世界最大のイスラム教国でもある。経済も過去10年、GDP1兆ドル超の国の中で中印に次ぐ成長を達成してきた。かつて、バンドン会議(第1回アジア・アフリカ会議)を主催し非同盟の盟主として鳴らしたのもインドネシアだ。ここでG20を率いるリーダーとして名を馳せることができれば、ジョコ大統領にとり大きな財産になる。ジョコ大統領は、G20サミット開催前から首脳宣言の採択に並々ならぬ意欲を示した。ゼレンスキー大統領やプーチン大統領とも会談し、その本音を探っていった。
G20はこれまで首脳宣言を採択せずに閉幕したことがない。今回も、何とかして各国が受け入れられる線を探り出し宣言としてまとめ上げたい。サミット前に開かれた一連の閣僚級会合は、いずれも共同声明の発出に至らず議長総括で終わっている。そういう事態になるのは、何としても避けたいとの思いだった。
G20は、発足した2008年のリーマンショックの時こそ、G7に代わり世界経済の牽引役になるとの気概にあふれていたが、その後、次第にメンバー国の利害が錯綜、近年に至っては、最早G20は存在意義を失った、とする者も出始めた。とりわけ、今回、会議に影を落としたのがロシアによるウクライナ侵攻だ。これにたいする各国の立場は大きく異なっていた。
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