「転嫁」できない中小企業に重い負担を課し、輸出産業を優遇
2022年12月16日
物価高対策として消費税減税を求める声は、政府に無視される一方、来年10月に予定されているインボイス(適格請求書)制度によって、消費税免税事業者は、適格請求書発行事業者の登録をして課税事業者となるか、仕入れが「消費税の仕入税額控除」の対象外となる免税事業者にとどまることで仕事を失うリスクを覚悟するか、困難な選択を迫られている。
2019年10月に8%から10%に引き上げられた消費税率が、今後さらに引き上げられる可能性も取り沙汰されている。
こうした中で、1989年に3%の税率で導入されて以降30年余の間、国民のほとんどが、当たり前のように信じてきたのが「消費税は預り金」という説明だ。
しかし、少なくとも消費税法の規定からは、消費税を「預り金」と解する余地はない。過去の訴訟では、政府側が、「消費税は取引の対価の一部であり、預り金ではない」と主張し、裁判所もそれを判決で認めている。
経済評論家の三橋貴明氏、藤井聡京都大学教授や、一部の税理士などから、「消費税は預り金ではない」という指摘が行われているが、新聞、テレビなどの大手メディアで、そのような話が取り上げられることはほとんどない。
「消費税は預り金」だという認識は、1988年の消費税導入の際から、国民に受け入れさせようとする大蔵省(当時)・国税当局が行ってきた「キャンペーン」によって生じたものだ。
消費税は、バブル景気の最後の時期に導入され、その後、バブルの崩壊による長期化するデフレ不況下で引き上げられ、第2次安倍政権下でさらに引き上げられる中で、「消費税は預り金」という、法律上は誤った認識が、様々な影響を生じさせてきた。
「消費税は預り金」との認識によって生じている影響を、今、改めて問い直す必要がある。それは、インボイス制度の導入の是非という当面の問題だけではなく、消費税を今後どうしていくのか、という根本的な議論においても欠くことができないものだ。
間接税とは、担税者(税を負担する者)が直接税金を納めず、事業者などの納税義務者を通じて納める租税のことを言う。日本の「消費税」は「間接税」とされてきたが、それは、「消費税は、事業者が納税義務者だが、税を負担するのは消費者」との理解を前提にしている。
税の負担者が「入湯者」であり、納税義務者が「浴場の経営者」であることが、法律で明確に規定されている「入湯税」などは、典型的な「間接税」だと言える。
一方、「間接税」と言われる税の中には、「税の負担者」が、法律上明確に規定されておらず、税負担が事業者側のコストに含められて最終的に消費者に転嫁することが予定されているに過ぎないものがある。
欧州諸国の多くで導入されている「付加価値税」がそれであり、製造から小売に至る多段階で課税される。それに対して、米国の「小売売上税」は、小売の取引段階にのみ課税される。日本の「消費税」は、前者の「付加価値税」の一種である。
「入湯税」のように明確に入湯者が税の負担者とされている税を、旅館の経営者等が旅館入館時などに受領して納付するという形態の場合、入湯者からの「預り金」と考えても差し支えはない。
一方、「付加価値税」「小売売上税」などでは、税金相当額が購入価格に転嫁(上乗せ)されて消費者が最終的に負担することが「予定」されているだけだ。米国の「小売売上税」のように小売り段階だけ課税される場合は、「預り金」に近い。
一方、付加価値税の場合は、転嫁の程度は、経済状況や取引当事者の関係によって異なる。転嫁が容易な状況では「預り金」に近くなるが、転嫁困難な状況では「預り金」とは程遠いものとなる。
日本の消費税は、欧州型の付加価値税であり、転嫁が、実際にどの程度実現するかによって「預り金」としての性格が異なってくる。
それを、導入時から、無条件に、そして、無批判に「預り金」のように認識してきたところに、根本的な問題がある。
「間接税」の典型であり、法律上も「預り金」と言えるのが入湯税だ。
地方税法701条は、
「鉱泉浴場所在の市町村は、(中略)鉱泉浴場における入湯に対し、入湯客に入湯税を課するものとする」
と規定して、市町村が、「入湯客」に「入湯税」を課すとしている。そして、同法同条の4第1項で、「浴場の経営者」などを、当該市町村の条例によって「特別徴収義務者」として指定し、これに徴収させることとしている。
第2項で、特別徴収義務者は、「納入金を当該市町村に納入する義務を負う」とされており、第3項で、「納入した納入金のうち入湯税の納税者が特別徴収義務者に支払わなかつた税金に相当する部分については、特別徴収義務者は、当該納税者に対して求償権を有する」とされている。
つまり、
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