中道主義のジレンマと連立与党・公明党の役割~難しい安全保障環境の中で
山口代表は「中道」について積極的に発言をし、行動を起こすべきだ
赤松正雄 元公明党衆院議員 元厚生労働副大臣 公明党元外交安保調査会長 公明党元憲法調査会座長
日本独自の外交姿勢をどう貫くか

外務省 yu_photo/shutterstock.com
こうした時代に日本はいかに行動するべきなのか。私は、反撃能力を含めた文字通りの最小必要限の軍事力を持ったうえで、米国にも中国にもおもねらない独自の外交姿勢を貫くことに尽きると思う。
新年元旦のNHKテレビで「混迷の世紀 2023年巻頭言 世界は平和と秩序を取り戻せるか」という番組を見た。フランスのユベール・ヴェドリーヌ元外相が、かつてイラク戦争当時に「フランスはアメリカと友人で同盟国だが、同調はしない」との方針をとったことに触れていたのが強く印象に残った。
「同盟関係について日本も議論を深めるべきだ」とも言い、「日本の独自の姿勢をアメリカに認めさせられるかが大事」と提言していた。そうは言っても、ヨーロッパの中核で核保有国であるフランスと極東の対米敗戦国日本とでは、歴史的な立ち位置が違う。同じようには論じられないのも事実である。ただ、私の心に元外相の言葉はかすかな痛みを伴って響いた。どうしてか?
当時、日本の小泉純一郎政権は、サダム・フセインのイラクが大量破壊兵器を隠し保有しているとの立場を取り、米国の参戦要請に応じた。小泉政権の与党として公明党も自衛隊派遣を容認した。
もちろん、自衛隊の活動は後方地域・人道支援に限定したもので、直接戦闘に関わったわけではない。自衛隊員に犠牲はなく、多大な貢献をしたとの評価を関係各国から受けたのは僥倖(ぎょうこう)だった。
しかし、後に大量破壊兵器保有の事実はなく、誤った情報に踊らされたことが明らかになった。公明党の機関紙に、イラク糾弾と自衛隊派遣の正当性を宣揚する論考を書いた私は自らの誤りを恥入り、後味の悪さを覚えた。フランスの元外相の“成功体験”に基づく日本への提言を聞きながら私は、あの頃、独自のスタンスで、米英の戦争に反対し抜いた、かの国が眩(まぶ)しく見えたことを、苦い記憶と共に思い出したのだ。
確かに、核兵器保有国が近在にひしめいている環境のもと、同盟国の核の傘に入らざるを得なかったこれまでの日本の歴史は認めざるを得ない。だが、自ら核保有をすることも、未来永劫に核の傘に入り続けることも、どちらも認められない。
目指すべきは「核廃絶」である。それに向け、世界唯一の被爆国として、国際社会に独自の立ち位置を発揮していくことこそ至上課題である。その手立ては、公明党の掲げる「中道主義」にこそあると私は思う。
「平和の党」の真骨頂とは
1月6日付けの毎日新聞の「記者の目」で、公明党担当の畠山嵩記者が「反撃能力 公明党の容認 防衛政策の難しさ説明を」という見出しの興味深い論考を書いていた。
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