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防衛費増額や小手先の自衛隊定員振り替えではなく、現実を見据えた防衛力の整備を

北海道の機甲師団に不要、戦車を減らし、ジブチからも撤収を

山内康一 前衆議院議員

中東から中国へとシフトチェンジする海兵隊

 米国海兵隊は、2025年までに沖縄県に駐留する第12海兵連隊を第12海兵沿岸連隊に改編し、有事に南西諸島に展開する能力を整備する方針と報道されている。「海兵沿岸連隊(MLR=Marine Littoral Regiment)」という言葉はまだあまり知られていないと思われるので、米海兵隊ホームページの情報に基づいてまず概要を紹介したい。

 一般に軍事においては、(1)戦略、(2)作戦、(3)戦術の3つのレベルに分けて考えることが多い。海兵隊と関係が深い戦略は、米国家防衛戦略(The 2018 National Defense Strategy)である。新しい国家防衛戦略では防衛戦略の重点が、中東におけるイスラム過激派対策からインド太平洋地域における国家間競争に移った。テロとの戦いから正規軍同士の戦いへのシフトである。より直截にいえば対中国シフトの強化だ。

 同戦略に沿って海兵隊は、海軍との連携を強化し、内陸部の戦い(イラクやアフガニスタンでの戦闘)から沿岸部の戦いへと重点を移し、伝統的な海兵隊の戦闘教義を大転換する改革(Force Design 2030)を進めている。そのために海兵隊は、削減対象(divestment)と強化対象(investment)を明確にしている。

 戦車、重火器、水陸両用兵員輸送車、戦闘爆撃機、攻撃ヘリ、輸送ヘリ(オスプレイ含む)などを削減する方針だ。歩兵大隊を削減し、砲兵大隊は半分以下に大幅削減し、さらに戦車部隊にいたっては全廃を検討している。

 他方、強化するのは、地対空ミサイル、地対艦ミサイル、無人機、偵察部隊、電子戦能力などだ。敵の長距離ミサイル攻撃により一定の損害が出てもそれに耐えて抗戦する能力(force resilience)を重視している。固定した基地は敵の標的になりやすいため、スピードと移動性(機動力)を重視した部隊をめざしている。

揚陸艦に着艦したオスプレイから降りる海兵隊員ら 拡大揚陸艦に着艦したオスプレイから降りる海兵隊員ら

 映画「プライベートライアン」の冒頭シーンのような強襲上陸作戦はもはや想定していない。戦車や重火器は陸軍にまかせて、スピード重視の海兵隊に生まれ変わろうとしている。新しい海兵隊の仮想敵ナンバーワンは明らかに中国であり、そのための新しい「海兵沿岸連隊」である。

 中国は、弾道ミサイルや空対艦ミサイル、地対空ミサイルなどを増強し、対米国の「接近阻止・領域拒否(Anti-Access / Area Denial : A2AD)戦略」に力を入れてきた。それに対抗して米国も対中国のA2AD戦略を実行するために海兵沿岸連隊を新設したということだ。

 もともと米軍には地対艦ミサイル部隊は存在しなかった。米軍には地対艦ミサイルで米本土を防衛するという発想はない。世界最強の空母機動部隊と艦載機で米本土に敵を近づかせないという発想だった。しかし、

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筆者

山内康一

山内康一(やまうち・こういち) 前衆議院議員

 1973年福岡県生まれ。国際基督教大学(ICU)教養学部国際関係学科卒。ロンドン大学教育研究所「教育と国際開発」修士課程修了。政策研究大学院大学「政策研究」博士課程中退。国際協力機構(JICA)、国際協力NGOに勤務し、インドネシア、アフガニスタン等で緊急人道援助、教育援助等に従事。2005年衆議院議員初当選(4期)。立憲民主党国会対策委員長代理、政調会長代理等を歴任。現在、非営利独立の政策シンクタンクの創設を準備中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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