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香港の「一国二制度」コモン・ロー主義は中国の大陸法に力ずくで書き換えられてしまうのか?

アップルデイリー裁判の弁護人選びが浮き彫りにするもの

ふるまいよしこ 中国/香港専門フリーランスライター

 2023年、香港は2019年のデモやそれにまつわる裁判が続く。特に注目されるのが、ネットメディア「立場新聞」の「煽動出版物発行共謀罪」裁判、2020年立法会議員改選における民主派予備選挙参与者の「国家政権転覆共謀罪」裁判、そして新聞「アップルデイリー」(蘋果日報、「リンゴ日報」とも訳される)への「国家安全を損なう外国勢力との共謀罪」裁判だ。そのどれもが2020年6月に中国政府が制定した「香港国家安全維持法」(以下、国家安全法)が適用され、また被告のほとんどは未決囚としてすでに1年以上拘束されたままだ。

国安法違反の疑いで捜索されたアップルデイリー本社前で検問する警官=2021年6月17日、香港

 同法施行以降、「改善」と謳うものの実質的内容は民主からは大幅な後退となった選挙制度の改定など当局主導の度重なる制度変更が行われ、庶民はそれへの態度表明として公の場で白票投票や無投票などを呼びかけただけで逮捕されるという事態が起きた。そして大型裁判が目白押しとなるここに来て、今度は主権返還以降維持されている司法制度の根本を大きく揺さぶる、新たな「力技」が始まった。本稿はその動きについてお伝えする。

 「アップルデイリー」裁判はそれらの先陣を切って昨年12月1日に開廷する予定だった。被告は中国政府に批判的な論調で知られた「アップルデイリー」の運営関係者5人で、その親会社「壱伝媒」(ネクスト・デジタル)の社主だった黎智英(ジミー・ライ)氏は、国家安全法制定当初からの「トップターゲット」と噂されてきた。アパレル業で大成功し、資金の面で香港民主派を支えてきた大富豪の彼をいかに追い詰めるかは、香港政府よりも中国政府にとって大きな意義を持っている。

 だが、開廷直前になって、その黎被告がわざわざイギリスから雇用した、英国王の法律顧問を務める大物法廷弁護士ティム・オーウェン氏に対し、香港律政司(法務省に相当)が待ったをかけた。「国家安全法は中国の法律であり、外国人にはその意義と重みを理解できない」と主張し、その起用差し止めを法廷に求めたのである。

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