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立憲と維新の連携は政権交代につながるか?~選挙「6・3の法則」と野党の展望

低迷が続く岸田政権。政治の閉塞状況を打破する「次の一手」を模索する与野党

星浩 政治ジャーナリスト

 防衛増税などをめぐって岸田文雄政権の低迷が続き、自民党内でも不満が募るが、「岸田氏に代わるリーダーがいない」というのが党内の大方の反応だ。さらに「野党が弱いから自民党は安泰」という世論の反応も加わって、岸田政権は奇妙な安定状態となっている。

 そうした中で、野党内で起きている新たな動きが、立憲民主党と日本維新の会の「連携」だ。当面は国会内に限った共闘で、国政選挙での協力は見えていない。憲法問題などで両党の考え方の隔たりも大きい。だが、自民党政権に取って代わるには野党の一本化は必須条件だ。立憲・維新の連携は、将来の政権交代にまでつながるのか。

拡大党首会談を終え、合意文書を交わす立憲民主党の泉健太代表(右から2人目)と日本維新の会の馬場伸幸代表(同3人目)=2023年1月18日、国会内

衆議院の議席状況と立憲の選挙事情

 立憲民主党を中心とする野党勢力が政権を奪取するためには、当然のことながら、衆院選で過半数の議席を取る必要がある。

 2021年の衆院選(総定数465)の獲得議席は、自民261、公明32に対して、立憲96、維新41、共産10。自公は63%の議席を占めて圧勝した。得票数で見ると、小選挙区で自民2781万、公明87万、立憲1721万、維新480万、共産263万。比例区では自民1991万、公明711万、立憲1149万、維新805万、共産416万となっている。立憲が共産と組んでも過半数には遠く及ばないことが分かる。

 289の小選挙区の事情は千差万別だが、立憲の選挙区は大別して、
①岡田克也幹事長や安住淳国会対策委員長ら支持基盤が強力、
②与党候補と接戦を繰り広げている、
③与党候補に大きく水をあけられている、
といった類型に分けられるだろう。①は立憲の候補者の1割程度、残りは厳しい戦いが強いられる選挙区である。

選挙取材40年で実感する「6・3の法則」

 40年ほど選挙を取材してきた私が実感していることがある。「6・3の法則」である。どういうことか?

 多くの選挙区では自民の支持層が厚く、かつての社会党、民主党、立憲と続く勢力は劣勢である。さらに公明が自民に加わって、自公の地盤は強化された。いま、全国の選挙区を概観すると、自公対立憲の実力は「6対3」という選挙区が多いと思う。

 例えば、2021年の衆院選でドキュメンタリー映画の舞台となって注目された香川1区。立憲の小川淳也氏が9万票を獲得し、自民党の平井卓也氏に2万票の差をつけて勝利した。しかし、比例区の票を見ると自公で8万5千に対し、立憲は3万2千。立憲の地力は自公の半分にも届かなかった。

 小川氏が選挙区で勝てたのは、自公支持者の票が多く流れたからだ。地力では「6対3」という力関係でも、自公の2が立憲の3に加わると「4対5」になって形勢が逆転する。香川1区ではまさしくそういう現象が起きたのである。

 千葉8区では立憲の新顔・本庄知史氏が13万5千票を獲得して、自民党のベテラン・桜田義孝氏(8万1千票)を圧倒したが、比例区票を見ると、自民(7万8千)、公明(2万4千)の与党が立憲(5万8千)を大きく上回っている。ここでも、本庄氏が大量の自民票を奪ったことが勝因となったことは明らかである。

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筆者

星浩

星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト

1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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