都道府県議会の2~4人区化をもたらした公選法15条8項ただし書の“裏技”
「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究【22】
岡野裕元 一般財団法人行政管理研究センター研究員
「論座」では「『政党』としての公明党~一学究の徒の政治学研究」を連載しています。1999年に自民党と連立を組んで以来、民主党政権の期間をのぞいてずっと与党だったこの党はどういう政党なのか、実証的に研究します。今回はその第22回です。(論座編集部)
◇連載「『政党』としての公明党~一学究の徒の政治学研究」はこちらからお読みいただけます。

最高裁判所=2022年8月18日、東京都千代田区隼町(筆者撮影)
この連載ではこの2回、自民一強、野党多弱の要因のひとつと見られる都道府県議選について、多角的に分析してきた。
・都道府県議会はなぜ小選挙区が多いのか?~自民一強、野党多弱の理由を考える
・人口の「縮小」と「偏り」が都道府県議選に与える影響とは~2045年に政党は…
本稿では引き続き公職選挙法第15条第8項(旧第7項)ただし書(以下、「但書規定」と称す)を中心に、都道府県議選について論じたい。
「但書」規定が意味すること
まず前提として、日本国憲法第14条(※)で平等原則が規定されている(※すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。)ことを押さえておきたい。そのうえで公職選挙法第1条は、法の目的として「その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする。」と規定する。
他方、公職選挙法第15条第8項(旧第7項)には、次の但書規定(「ただし、」以下の部分)が挿入されている。
(地方公共団体の議会の議員の選挙区)
第十五条
8 各選挙区において選挙すべき地方公共団体の議会の議員の数は、人口に比例して、条例で定めなければならない。ただし、特別の事情があるときは、おおむね人口を基準とし、地域間の均衡を考慮して定めることができる。
この規定の意味するところは、「おおむね」人口を基準とするが、「地域間の均衡」に基づき、人口比例の原則の考え方を変える可能性がある、ということにほかならない。
理論上の定数と実際の定数
次に、この但書規定が選挙区定数にどのような影響を及ぼすか、具体的に見ていく。千葉県議会を例に、選挙区の定数について、配当基数を算出して考えてみたい。
なお、配当基数については前回21回に説明をしたが、次の式で導かれる。
配当基数:当該区域の人口÷議員1人当たりの人口※
※議員1人当たりの人口:都道府県の人口÷議員の定数
まず千葉県議1人当たりの人口を算出する。具体的には以下の通り。
628万7034 人(千葉県全体の令和2年国調人口〈速報値〉)÷94人(千葉県議会の定数)=6万6883人
次に、議員1人当たりの人口(6万6883人)から、選挙区定数のもとになる配当基数を計算しよう。船橋市選挙区(船橋市)の場合、次のようになる。
64万2972人(船橋市選挙区の令和2年国調人口〈速報値〉÷6万6883人(議員一人当たりの人口)=9.613
配当基数は9.613。配当基数は、小数点以下を処理(0.5未満は切り下げ、0.5以上は切り上げ)した上で、「基本的に」各選挙区定数(理論値としての人口比)となる。船橋市だと10となる。
つまり、船橋市選挙区は本来10人区で構成されなければならない。だが、現実には7人区である。どうしてそうなるのか?
但書規定を適用して減員選挙区(減員3)となっているからだ。
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