人口の「縮小」と「偏り」が都道府県議選に与える影響とは~2045年に政党は…
「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究【21】
岡野裕元 一般財団法人行政管理研究センター研究員
「論座」では「『政党』としての公明党~一学究の徒の政治学研究」を連載しています。今回はその第21回。前回に引き続いて、自民一強、野党多弱の要因のひとつと見られる都道府県議選の選挙制度と、人口の「縮小」と「偏り」が与える影響について論じます。(論座編集部)
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選挙区・定数設定と配当基数計算の方法
前回「都道府県議会はなぜ小選挙区が多いのか?~自民一強、野党多弱の理由を考える」で、衆議院議員の“供給源”として都道府県議会議員が多いこと、その都道府県議会の選挙で非自民各党が苦戦していること、苦戦の背景として都道府県議会の選挙区で1人区が多い事情があること、を指摘した。
さらに、1人区が多い理由として、
①市への昇格と郡に残存する町村、
②議会定数の抑制、
③政令指定都市の行政区、
④特例選挙区、
⑤県内基礎自治体間での人口の極端な偏り、
の五つを挙げた。
このうち、①~③について前回詳述したので、本稿では④、⑤に関して論じる。
本論に入る前に、選挙区の定数設定について説明する。都道府県議会議員の選挙区・定数の設定方法は行政区画を基本とする。詳細は総務省の資料を参照されたい(総務省「都道府県議会議員の選挙区・定数の設定について―公職選挙法の一部を改正する法律(平成25年法律第93号)による改正前後の比較表―」。そのうえで、各選挙区定数の求め方は、都道府県ごとに以下の式から算出される。
配当基数:当該区域の人口÷議員1人当たりの人口※
※議員1人当たりの人口:都道府県の人口÷議員の定数
ここで算出された配当基数は、小数点以下を処理(0.5未満は切り下げ、0.5以上は切り上げ)した上で、「基本的に」各選挙区定数(理論値としての人口比)となる。「基本的に」と括弧付けした理由は、公職選挙法第271条、第15条第8項に例外的な規定が存在するからである。
昭和41年の選挙区を維持する特例選挙区
1人区が多くなる第四の要因は、特例選挙区の存在である。特例選挙区は、1票の格差の議論で指摘されるが、1人区化の要因としても触れる必要がある。
特例選挙区の規定は、公職選挙法第271条にある(平25法93・一部改正)。
(都道府県の議会の議員の選挙区の特例)
第271条 昭和四十一年一月一日現在において設けられている都道府県の議会の議員の選挙区については、当該区域の人口が当該都道府県の人口を当該都道府県の議会の議員の定数をもつて除して得た数の半数に達しなくなつた場合においても、当分の間、第十五条第二項前段の規定にかかわらず、当該区域をもつて一選挙区を設けることができる。
特例選挙区は、昭和41(1966)年1月1日時点で設定されていた選挙区を、「当分の間」維持することができる仕組みであり、令和の時代の現在も続いている。1966年は、第1次佐藤内閣のときであり、「ひのえうま」での出生数激減、「交通戦争」の語が誕生、3C(カラーテレビ、カー、クーラー)が新三種の神器といわれた頃である(中村政則・森武麿[編]『年表 昭和・平成史 1926―2011』岩波書店、2012年、p.46)。
さらに特例選挙区は、第15条第2項前段の規定(「前項の選挙区は、その人口が当該都道府県の人口を当該都道府県の議会の議員の定数をもつて除して得た数(以下この条において「議員一人当たりの人口」という。)の半数以上になるようにしなければならない。」)が適用されない。
とても簡単に言うと、有権者数が少なすぎて選挙区維持を本来できない地域が、昭和41(1966)年1月1日時点で選挙区があったため、当該選挙区をそのまま維持できる。要は、強制合区の規定(条文に「しなければならない」とある)があるも、合区を免れる規定が別に存在しているのである。
現在の特例選挙区の原形は、1966年の公職選挙法改正時にある(昭41法77・一部改正)。
(都道府県の議会の議員の選挙区の特例)
第271条② 昭和四十一年一月一日現在において設けられている都道府県の議会の議員の選挙区については、当該区域の人口が当該都道府県の人口を当該都道府県の議会の議員の定数をもつて除して得た数の半数に達しなくなつた場合においても、当分の間、第十五条第二項の規定にかかわらず、条例で当該区域をもつて一選挙区を設けることができる。
お気づきのように、平成25年改正のものと、ほとんど同一である。
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