ジェネラティブAIの出現は果たして朗報?
2023年03月01日
米オープンAIの対話型AI「Chat(チャット)GPT」が世間の耳目を集めている。学生がレポートを書かなくて済むようになるという。これは驚きだ。メディアは大手ITの競争に焦点を当て、半導体メーカー、エヌビディアの株価は早速上昇に転じるが、我々はむしろ、これは諸手を上げて喜ぶべきものかと疑念を抱く。学生が怠けられる道具などいいわけがない。果たしてChatGPTの出現は人間にとり進歩か退化か。
ChatGPTでは人の質問に対しAIが文章で答える。こういうものはこれまでなかった。まさに対話型AIだ。AIが人の話し相手になるという、何とも画期的なものが出てきたものだ。マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏は「パソコンやインターネットの出現くらい重要な出来事」とし、現CEOのサティア・ナデラ氏は「検索にとって新時代」と言う。
インターネットが開発された初期の頃、ネットには多くの記事が掲載され、利用者はそのどれを読めばいいか分からず困った。情報は途方に暮れるほどあるが、人はこれを利用しようがない。そこに検索エンジンが現れた。キーワードを入力しただけで関連記事を瞬時に見つけられる。しかも優先順位つきだ。我々はそれを順に見ていくだけでいい。山積みの情報が初めて「利用できる情報」になった。
検索エンジンのグーグルは圧倒的な市場支配力を手にし、2011年以降、その親会社アルファベットは年率20%以上の成長を記録、その時価総額は3倍にまで膨れ上がった。
グーグル帝国は盤石で揺るぎなかった。マイクロソフトがビングを登場させても、市場シェアの5%を奪っただけでグーグルの前には赤子同然だった。
その力関係をChatGPTが変えるかもしれないという。何せ、検索といってもキーワードを入力し関連記事を並べさせるだけだ。これに対しChatGPTは、自分で関連記事を読み込み然るべき文章の形に仕上げてくる。こちらの方がずっと使い勝手がいい。昨年11月に発表されまだ3カ月ほどでしかないが、今年1月末時点の月間ユーザー数は1億人を超えたという。その人気ぶりはすさまじい。
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