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都道府県議選候補者の政党間競合の実態と課題~議会を多様にするために必要なこと

「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究【24】

岡野裕元 一般財団法人行政管理研究センター研究員

 「論座」では「『政党』としての公明党~一学究の徒の政治学研究」を連載しています。1999年に自民党と連立を組んで以来、民主党政権の期間をのぞいてずっと与党だったこの党はどういう政党なのかを、実証的に研究します。今回はその第24回です。(論座編集部)
◇連載「『政党』としての公明党~一学究の徒の政治学研究」はこちらからお読みいただけます。

支援者を前にマイクを握る候補者=2023年3月31日、神奈川県内

 道府県議会議員選挙が3月31日に告示された。しかし、筆者は今回も大きな波風の立たない「予定調和的な」選挙となるのではないかと考えている。本稿ではそう考える理由をデータから解き明かそう。

1~3人区が8割超える都道府県議会

 昨年の夏、都道府県議会の選挙制度について、立憲民主党の泉健太代表と立ち話する機会があった。しかし、野党第1党の立憲が直面している状況は、以下で詳しく説明するように、「1人区の区域の狭さ」だけでない。

 そもそも都道府県議会では、第20回「都道府県議会はなぜ小選挙区が多いのか?~自民一強、野党多弱の理由を考える」と第21回「人口の「縮小」と「偏り」が都道府県議選に与える影響とは~2045年に政党は…」 で説明したように、五つの要因によって選挙区の1人区化が加速した。さらに第22回「都道府県議会の2~4人区化をもたらした公選法15条8項ただし書の“裏技”」で示したように、公職選挙法第15条第8項ただし書は選挙区の2~4人区化も促した。

 図1は2019年4月~2023年3月期(19ターム)における選挙区定数の内訳である。1~3人区で83.12%も占めていることが分かる。

 前回「都道府県議の人材供給源『偏り』と深刻化するパイの『縮小』~ 候補者の人物像は」は、都道府県議と候補者予備群の人物像について論じた。そこで、「政治・行政関係の経歴」のあった者が候補者・当選者で約7割を占めていること、なかでも市区町村議、政治家秘書、行政職員が主要な人材源となっていることなどを指摘した。

 さらに党派や選挙区定数によって、人材供給源に差があることも明らかとなった。例えば、1人区の当選者において「市区町村議」のみの経験者は、自民党(39.06%)と無所属(42.86%)でそれぞれ多数を占めている。一方、議員政党の野党各党(立憲民主党、国民民主党、維新)の候補者は、選挙区定数全体で見ると、「市区町村議」よりも「政治家秘書」のみの割合の方が高かった。

 先に見たように1~3人区の選挙区が多数のため、こうした選挙区での候補者・各党派の競合結果が、都道府県議会全体の大勢を決める。そこで、本稿では、1~3人区に焦点を当て、最新の2019年4月~2023年3月期(19ターム)における「政党間競合」について分析を加えたい。

 ここで分析する期間は、岡野裕元『都道府県議会選挙の研究』(成文堂、2022年)の未収録範囲である。また前稿と本稿の内容は、学術論文として別途バージョンアップする予定である。ただ、4月の統一地方選挙に際し、本稿では社会への知の還元を最優先させた。

相対候補者比率の党派別特徴

 はじめに、各党派の相対候補者比率を分析する。算出方法は、「(各選挙区定数における各党派の立候補者数)÷(各選挙区定数における総候補者数)」だ。

 選挙区定数全体での相対候補者比率(立候補者総数3709人)は、自民党40.63%、無所属28.39%、日本共産党8.20%、立憲民主党5.90%、公明党5.50%、国民民主党3.86%、維新2.64%、その他の党派2.62%、都民ファーストの会1.27%、社民党1.00%だ。立候補の段階から、自民党と無所属が多数占めており、他党と明確に差がある。

 ただ、選挙区定数別で見ると、様相が少し異なる。図2は、選挙区定数別の相対候補者比率である。選挙区数が多い1~3人区において、自民党(1人区・50.15%、2人区・44.41%、3人区・39.90%)と無所属(37.19%、30.69%、24.83%)の相対候補者比率が高い傾向にある。

 自民党と無所属以外の党の1~3人区における状況は相当に深刻だ。例えば1人区では、日本共産党(2.93%)、立憲民主党(2.62%)、都民ファーストの会(0.93%)、その他の党派(0.77%)、国民民主党(0.62%)と低く、公明党と社民党は候補者擁立にすら至らない。維新(4.78%)がやや健闘しているのが目立つぐらいだ。

 一方、自民党の相対候補者比率が低いのは、7人区(25.62%)、6人区(30.61%)である。他党で相対候補者比率が10%を超えているのは、選挙区定数の小さい順に、日本共産党(4人区・10.77%)、公明党(5人区・10.55%)、立憲民主党(6人区・10.20%)であった。国民民主党、維新、社民党、都民ファーストの会、その他の党派では、10%以上となった選挙区定数は存在しない。

 自民党と無所属から多数立候補している状況は揺るぎないが、議会の党派的多様化を促す観点からすると、選挙区定数によって自民党と無所属が多数を占める状況を多少緩和することが可能かもしれない。

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選挙区定数別の議席率は

 党派ごとの相対候補者比率に明確に差が生じていることは、議席率の構造にも当然、影響を及ぼす。

 選挙区全体での各党派議席率(定数2679)は、自民党49.12%、無所属22.47%、公明党7.61%、立憲民主党5.41%、日本共産党5.19%、国民民主党3.96%、維新2.58%、その他の党派1.38%、都民ファーストの会1.16%、社民党1.12%。自民党と無所属で圧倒的多数を占める。

 選挙区定数別の各党派議席率を図3に示す。選挙区数が多い1~3人区において、自民党(1人区・62.29%、2人区・56.27%、3人区・47.22%)と無所属(28.95%、24.07%、20.37%)の議席率が高いことが鮮明だ。例外は1人区で6.33%と健闘する維新である。

 一方、他党の選挙区定数別の議席率について、定数の小さい順から見ていくと、初めて10%を超えた選挙区定数は、公明党が4人区・11.51%、共産党が6人区・13.89%である。立憲民主党、国民民主党、維新、社民党、都民ファーストの会、その他の党派は、該当する選挙区定数が存在しない。立憲民主党の最大議席率が3人区・8.80%であり、公明党の3人区・8.56%と似た値になっている。

都道府県議会選挙と「自民一強」の関係

 地方議員、とくに都道府県議会議員は、自民党国会議員の主要な人材供給源の一つである。地方議会議員を多数擁することは、選挙活動や議会活動、日常活動の経験がある有力な潜在的候補者層が厚いことを意味する。特に国政選挙戦の際、地方議員が選挙活動の実務で果たす役割も大きい。

 他方、野党の状況は相当深刻だ。第2次安倍晋三政権からの国政における野党の細分化は、地方政治、地方選挙にも波及している。細分化した野党各党がそれぞれ都道府県議選で候補者擁立を模索し、現職に挑む構図が続く。そして野党各党は、国政選挙の候補者擁立で、都道府県議数の少なさに直面する。

 結果として、自民党の地方議員層の厚さは、候補者予備群の質、地方議員が果たす選挙での役割の両面において、国政における「自民一強」を支え続ける強力な基礎となっている。都道府県議選1人区の自民党当選者に市区町村議の経歴がある者が多数占めている事実を踏まえると、野党の候補者予備群となる市区町村議の数が十分でない現状が持つ意味は大きい。

 自民党が約3年で民主党から政権奪還に成功したのは、いわゆる「民主党政権の失敗」だけが要因でない。「自民党の内部で共通認識となっているのは、地方組織の強靭さである」(中北浩爾『自民党―「一強」の実像』中央公論新社、2017年、p.229)。自民党は、全国に都道府県連があり、構成する地方議員も多数擁しているが(県連の運営の中心も多くが県議)、都道府県議の多くは1~3人区中心に選出されている。

長崎県議選の候補者の出陣式で「がんばろー」を三唱する支援者たち=2023年3月31日、長崎県佐世保市

都道府県議選でも自公連立が効果を発揮

 もう一つ見逃せない事実は、自民党の友好団体の集票力が低下しているなか、国政での公明党との連立の効果が都道府県議選にも波及している点である。

 自民党は立候補者総数3709人のうち40.63%(1507人)という圧倒的に高い割合を占めているが(19ターム)、図4で公明党からの推薦・支持がある自民党候補者の党内割合を見ると興味深いことがわかる。1999年10月の自公連立以降、推薦・支持の割合が急速に拡大しているのだ。

 図4を見ると、公明党が自民党の都道府県議選候補者に推薦・支持を出したのは、2003年4月~2007年3月期(15ターム)からである。選挙区定数全体で見ても、わずか3.70%であった。その後、徐々に拡大し、最新の2019年4月~2023年3月期(19ターム)では50.50%となった。野党転落も経た後、第2次安倍晋三政権期(統一地方選挙時)で急速に拡大した。

 筆者は、公明党の太田昭宏前代表に、自公連立の長期的変容について話をうかがったことがある。その際、次のように語っていた(岡野裕元「公明党の立体的政策形成――『ヨコ』関係の軸となる国会議員・地方議員・事務局との協働ネットワーク」奥健太郎・黒澤良[編著]『官邸主導と自民党政治 小泉政権の史的検証』吉田書店、2022年、pp.471-472)。

 それぞれ党の歴史も文化も政策も違う。最初、公明党は、野党で反自民ということできた。細川政権時も反自民だった。連立政権に参加した最初の頃はお互いに戸惑いがあったと思います。しかし、苦労を共にして自公の協力関係は深化してきた。どのように変容していったのかと言えば、徐々に徐々に苦労を共にし、自公の協力関係が熟してきたという人もいます。もう一つ、「苦労を共にして深化した」とともに、党対党の国会の幹部レベルでの相互理解、協力関係から始まるわけなんです。そして、それが徐々に現場に降りてきて、地方、地域レベルで理解が進んできた。これもこの二〇年での変容で、自民党を支持する人たちと公明党の党員支持者との間で、協力関係、親しみができてきているように思います。

 実際、都道府県議選レベルで国政での自公の連立効果が十分成熟するまで20年を要したとを、この図は証明している。公明党が自民党候補者に対して推薦・支持を出す際の考え方や党内手続については、第17回「地方の政治・選挙の現状と選挙制度の課題と今後~石井啓一公明党幹事長に聞く」を参照していただきたい。

 とはいえ、推薦・支持の割合は、選挙区定数ごとに違いがある。19タームを例にすると、1人区75.08%、2人区70.71%、3人区53.65%であるのに対し、大選挙区La(7~11人区)と大選挙区Lb(12~19人区)は該当者が存在しない。推薦・支持の割合を押し上げたのは、1人区、2人区と言える。

 自公間の選挙協力が成立する理由は、公明党が完勝主義を採用しており、都道府県議選の選挙区定数が小さいところ(選挙区の数自体は多い)で候補者擁立を見送ることもある。大阪市内のような選挙区定数が小さくとも地盤を築いているところや、選挙区数が大きいところでは、公明党が候補者を擁立している。

 都道府県議選レベルからの自公の結びつきは、自民党都道府県議が国政へも昇進するため、国政における「自公連立が当然」という風景をつくる一役を担っている可能性もある。「自公連立の揺らぎ」というインターネット記事を時折、目にすることがあるが、記事をよく調べると、国政領域での単一の事象のみに注目したものがほとんどである。本連載で示したように、地方政治の領域までパッケージで考えると、選挙と執政の双方で上手く組み合わさっている。

 とすれば、公明党と同じ地方発の政党である維新にも、公明党に代わる自民党のパートナーに成長する可能性があると言える。

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野党第1党の立憲民主党の状況

 自公は、10年、20年単位の時間をかけて、連立効果を地方選挙まで波及させ、「成功事例」とした。これに対して野党はどうか。

 野党共闘が効果を発揮しない理由としては、①繰り返される野党の離合集散に伴って、政党間や人間間の信頼関係がリセットされること、②国政で行われる野党合同ヒアリングのような枠組みが地方政治に波及していないこと、③共産党に対する野党各党の態度の差と共産党自身の党改革状況――という三つが指摘されるが、実際、どうだったのか。

 立憲民主党の立候補者数(219人)は立候補者総数(3709人)の5.90%(19ターム)だが、そのうち社民党からの推薦・支持がある候補者の党内割合を算出し、表1に示した。

 表1を見ると、立憲民主党は、18タームに5人区、6人区でそれぞれ1人擁立したが、両人とも社民党からの推薦・支持がない。全国での選挙が初めて一巡した19タームでは、社民党からの推薦・支持の割合が選挙区定数全体でも24.20%にとどまった。

 選挙区定数別に見ると、選挙区数が多い1~3人区で、社民党からの推薦・支持が自公間よりも高いわけでもない。社民党が推薦・支持を出す理由は、第15回「地方政治、沖縄県民と向き合う社会民主党の流儀とは~福島瑞穂党首に聞く」で福島瑞穂党首が述べている、選挙区定数の小さいところでは候補者擁立自体が困難であるという点が考えられる。

全候補者のうち8割が党派と関係

 無所属候補者は立候補者総数3709人のうち自民党に次ぐ28.39%(1053人)を占めている。無所属候補者のうち32.38%(341人)がいずれかの党派から推薦・支持を得ている。選挙区定数別に無所属候補者の中での推薦・支持の割合を調べると、1人区26.14%、2人区38.08%、3人区35.17%、4人区37.50%、5人区36.51%、6人区22.22%、大選挙区La(7~11人区)29.52%、大選挙区Lb(12~17人区)20.00%という結果になり、2~5人区で3割以上にのぼる。

 それゆえ、各党派公認(2656人)と無所属への推薦・支持を合わせると、全候補者のうち80.80%(2997人)が政党と関係を有していることになる。有権者視点から見ても、第14回「有権者の地方選での投票行動はどう変わったか?~国民民主党の見方は……」で紹介した明推協の有権者意識調査結果(「県(道・府)議選で政党か候補者か」)の傾向とも整合的だ。

 無所属候補者は、どの党派から推薦・支持を得ていたのか。リンク先の表2は、各党派からの推薦・支持がある無所属候補者内での割合(19ターム)を算出したものである。

 表2を見ると、組合せを大きく四つに分類(「国政与党が含まれる」48.39%、「国政野党が含まれる」45.75%、「国政与野党の相乗りが含まれる」0.29%、「地域政党のみ」5.57%)すると、与野党伯仲の結果となっている。

 具体的な推薦・支持の組合せについて、割合の高い順に見ていくと、「自民党」20.53%、「自民党・公明党」15.25%、「国民民主党」10.85%、「公明党」9.97%、「社民党」9.97%、「国民民主党・社民党」9.38%となった。

 「国政与党が含まれる」組合せを見ると、無所属候補者にも自公連立枠組みが機能している。他方、「国政野党が含まれる」組合せは、かなり多様なバリエーションが存在しており、詳しくは後で分析する。「国政与野党の相乗りが含まれる」は、「自民党・日本維新の会・新党大地」の組合せで1人該当したのみである。「地域政党のみ」は、最多が「新政みえ・三重民主連合」の2.93%(10人)であった。

共産党を交えた野党共闘は限定的

 では、無所属候補者に対する「国政野党が含まれる」組合せにおいて、共産党を加えた共闘はどれほど機能したのか。

 共産党を交えた組合せは7通り(「社民党・共産党」、「社民党・共産党・沖縄社会大衆党」、「社民党・共産党・自由党」、「立憲民主党・社民党・共産党・東京生活者ネットワーク・緑の党グリーンズジャパン」、「立憲民主党・国民民主党・社民党・共産党」、「立憲民主党・国民民主党・社民党・共産党・沖縄社会大衆党」)あるが、合計3.81%(13人)にすぎない。

 注目したいのは、「立憲民主党・共産党」の組合せが存在しない点である。共産党から推薦・支持がある立憲民主党候補者はいないし、立憲民主党から共産党へも同様だった。なお、何らかの形で両党が含まれる組合せ(4人・1.17%)には、社民党が必ず含まれている。社民党はこの点で一定の役割を果たしていると言える。

 都道府県議選レベルで、立憲民主党と共産党が直接手を結ぶ野党共闘は成立していない。野党共闘のあり方を考えるうえで重要なのは、公明党の太田前代表の認識にある「地方、地域レベルでの理解が進んできた」点があろう。党員・支持者レベルの交流や相互理解が成功の鍵なのである。

 実際、日本共産党内でも、野党共闘の経験を経て様々な「化学反応」が生じた。共産党除名になった松竹伸幸氏もその一例であり、野党共闘が議論の土台にあった(松竹伸幸「私、共産党の党首選に出ます!~『自衛隊活用論』を唱えてきたヒラ党員の覚悟」))。

 しかし、共産党を交えた野党共闘の場合、第16回「『野党共闘』の実態と課題 政権交代には何が必要か~日本共産党の見方は」で詳細に考察したとおり、日米安全保障条約に対する態度が最大の核心である。さらに、より現場に近い地方政治レベルにおいては、労使関係をめぐる態度の差(労使協調か労使対決か)も身近に関係する。

 共産党と他党との間で考え方の隔たりがあまりに大きいと、地方政治レベルで協力関係を構築することが本質的に困難となる。

選挙ポスターの掲示場=2023年3月20日、筆者撮影

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候補者の組合せは……

 各選挙区において、どのように競合が展開されたのか。リンク先の表3は、1~3人区別で、個別選挙区ごとの候補者の組合せ(各党派の立候補者数情報も込み)を数値でまとめたものである。候補者数次第で有権者の投票行動も変わるため、各選挙区定数内において、候補者数でも制御(選挙区定数M(magnitude)+X人別)している。なお、候補者の組合せは理論的に多様なバリエーションが考えられるため、割合が3%以上となったものだけを抽出した。

 候補者数について言えば、有力な候補者数がM(選挙区定数)+1人に収束するといわれている。ただし、都道府県議選の場合、無投票選挙区が存在するため、「有力な」候補者数の算出(候補者の得票数を計算で用いたりする)が問題となる。そのため本稿では、単純に候補者の数で分類している。

 表3を選挙区定数別で比較すると、たしかに2人区と3人区はM+1となっているが、1人区ではM+0(無投票)の割合が最も高い。一方、2人区と3人区でもM+0(無投票)の割合が高い。無投票選挙区の割合が高いのは、候補者数の収斂のしすぎが問題なのだ。

 具体的な候補者の組合せは、1人区で「自民1」42.09%、「無所属1」9.73%、2人区で「自民1・国民民主1」4.27%、「自民1・無所属1」11.68%、「自民1・立憲民主1」3.99%、「自民2」12.82%、3人区で「自民2・無所属1」7.64%、「自民3」3.47%と、何らかの形で自民党が含まれる。

 選挙になったM+1の選挙区についてはどうか。こちらも自民党と無所属の候補者競合が中心に変わりない。野党が含まれるのは、1人区が「自民1・維新1」4.14%、2人区が「自民1・共産1・無所属1」3.13%、「自民1・立憲民主1・無所属1」3.70%、3人区が「自民1・公明1・共産1・国民民主1」3.47%、「自民2・立憲民主1・無所属1」3.47%である。

 なお、M+2の選挙区については、割合が3%以上となった組合せはなかった。

 要するに1~3人区での候補者・政党間の競合構造は、自民党同士、又は自民党と無所属との競合が中心であり、野党はおまけ程度でなのである。

日本維新の会の独特な候補者リクルート

 野党が自民党と競合できるようになるために、今後のどのように候補者をリクルートすればいいのだろうか。筆者が注目したいのは、1人区で自民党と競合実績がある維新についてだ。

 図5は、第20回統一地方選挙に向け、2022年11月~12月を中心に、検索サイトのYahoo!に表示された日本維新の会のネット広告である。

 これを見ると地方議員を「転職先」として位置づけており、これまでの政党になかった民間企業感覚が特徴的だ。維新の候補者擁立の試みは、クローズド型である組織政党(公明党、共産党)にはできないし、オープン型である議員政党の自民党も現職が多くて難しい。

 インターネットを介した就職活動に馴染みがあるのは、新卒採用の就職活動で「リクナビ」や「マイナビ」等を中心に活用していた世代、今の20代、30代が中心である。実際、若者の意識は、転職に寛容的だ。

 図6は内閣府「子供・若者の現状と意識に関する調査(平成29年度)」(平成30年3月)において、「転職については、様々な考え方があります。あなたの考えに最も近いものを選んでください。」という設問への回答結果である。

 図6を見ると、転職に容認的な「③自分の能力や適性に合わない職場ならば、転職することもやむをえない」、「④自分の能力や適性に合わない職場ならば、転職する方がよい」、「⑤自分の能力や適性に合う職場を求めて、積極的に転職するべきである」の回答の合計は、全体で72.1%も占めている。男女とも年齢が上昇するほど(「25歳~29歳」の層が最大)、男性よりも女性の方が転職に容認的だ。

政党別の候補者の年齢層

 実際、政党別に候補者の年齢層を比較すると、維新の特徴が浮き彫りとなる。リンク先の表4は、選挙区定数別・党派別の候補者の年齢層(19ターム)である。

 前回紹介した「50歳以上70歳未満」のコア層(候補者全体の57.24%が該当)を基準に各党内の割合を計算すると、社民党81.08%、公明党80.88%、日本共産党66.12%、国民民主党58.74%、無所属56.79%、自民党55.87%、立憲民主党47.03%、都民ファーストの会42.55%、その他の党派41.24%、維新40.82%となった。社民党と公明党がコア層を中心に構成されているのに対し、都民ファーストの会と維新がそうでない。

 実際、最頻値は、候補者全体(3709人)が「60歳以上65歳未満」(16.53%)であるのに対し、維新(98人)は「45歳以上50歳未満」(18.37%)である。また、「30歳未満」(6.12%)、「30歳以上35歳未満」(7.14%)、「35歳以上40歳未満」(12.24%)の層だけで四分の一(25.51%)を占める。

 ちなみに、他党の最頻値は、自民党(「60歳以上65歳未満」15.06%)、立憲民主党(「45歳以上50歳未満」19.63%)、国民民主党(「50歳以上55歳未満」18.18%)、公明党(「60歳以上65歳未満」28.43%)、日本共産党(「65歳以上70歳未満」24.67%)、社民党(「60歳以上65歳未満」と「65歳以上70歳未満」が29.73%)、都民ファーストの会(「50歳以上55歳未満」25.53%)、無所属(「60歳以上65歳未満」16.33%)、その他の党派(「45歳以上50歳未満」16.49%)である。共産党と社民党の候補者年齢層が高い。

 維新の候補者リクルートは、明らかに経営戦略的に行われている。筆者が藤田文武・幹事長と話をして肌で感じたことは、維新の場合、政治学というよりも、経営や組織行動学の分野の考え方から理解する方が適切ではないか、という点だ。党内では民間の経営手法に理解がある環境であり、馬場伸幸代表はコック経験者、藤田幹事長も会社経営者といった経歴がある。党内の年齢構成でも第11回「若手の活用、オンライン文化、地方との協働……日本維新の会の四つの特徴」で紹介したように、若手活用の党内文化が醸成されることになる。

 少なくとも維新は、都道府県議選全体から見て、年齢面の多様化(若い年齢の候補者を増やす)で貢献している。

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議会多様化のための若干の提案

 候補者・当選者の年齢の多様化について考えると、各党の候補者擁立に特色がある以上、やはり選挙区定数が門番としての役割を果たしている。選挙区数が多い1~3人区(自民党の候補者も多くなる)では、「60歳以上65歳未満」の層が最頻値であった。他方、6人区、大選挙区La(7~11人区)では、「45歳以上50歳未満」が最頻値となった。

 1~3人区の選挙区数が多い構造のもとでは自民党候補者数が多いが、彼らの多くは市区町村議出身者だった。これは、自民党の都道府県議選の強さの源泉でもあるが、同時に都道府県議選全体の候補者の年齢層が高くなりやすいという弊害も招く。

 本連載では国政・地方政治を連結した視点から分析しているが、判官びいき的な観点から、野党各党に次の「地方選挙3か条」をアドバイスしたい。

(1)国政での政権交代と政権運営を本気で目指すならば、まずは市区町村議会において、年齢の若い、生え抜きの地方議員を増やすこと。

(2)政党組織の中央・地方関係にも影響するが、候補者予備群の教育はもとより、選挙資金、選挙ノウハウで手厚く支援すること。

(3)連立政権樹立を念頭に国政・地方を問わず野党共闘する場合、国政での連立政権運営も視野に入れ、少なくとも憲法、外交・安全保障政策の基本的考え方についてある程度方向性を一致させること。もし可能であれば、各党の支持団体同士で対立しそうな事項についても、あらかじめ考え方を調整しておくこと。

政党ラベルを機能させるために

 最後に考えなければならないのは、政党ラベルの問題である。複数人区で同じ政党から候補者を複数人擁立すると、同士討ちが生じ、政党ラベルが機能しにくくなる。要は、政党間の政策競争というよりも、中選挙区制時代の衆院選のような自民党候補者同士の争いをイメージすれば良い。同じ選挙区・党派の候補者同士で、チーム意識、仲間意識といったものが欠如していた。

 この点で参考となるのは組織政党の工夫で、例えば公明党は、既述のとおり、「50歳以上70歳未満」のコア層が80.88%も占める。もともと党員として活動し、社会経験も長く積み重ねた者を候補者擁立する長期選考型だ。

 もう一つの特徴は、候補者の学歴についてである。公明党候補者204人(19ターム)のうち79人(38.73%)の最終学歴は、創価大学、創価大学大学院(法科大学院も)や創価女子短大である。一般的な話として、同じ出身大学の卒業生同士は、何かしらのつながりがある。公明党の場合、こうしたインフォーマルな人的ネットワークが幾重にも積み重なっている。

 とはいえ、これらは公明党だからこそできることであって、他党には参考にならない。そこで筆者は、議員政党が参考にできるものとして、政党機関紙が果たす党内文化醸成の役割に注目した。次回は政党機関紙が果たす現代的な機能や役割について、吉本正史・公明党機関紙委員長に聞く。(続く)

◇連載「『政党』としての公明党~一学究の徒の政治学研究」はこちらからお読みいただけます。