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ノーベル物理学賞の益川敏英さん特別インタビュー 15日にネット生中継

WEBRONZA「科学・環境」オープン記念  編集委員・尾関章

拡大益川敏英さん(右)と語り合う尾関章編集委員=2010年1月23日、大阪市内で
 おもしろキャラの科学者、10代女子語ふうに言えば「カワイイー」物理学者。こんなイメージで全国津々浦々の素粒子論に縁遠い人々の心まで射止めたのが、2008年にノーベル物理学賞を受けた益川敏英さんである。

 益川さんのことを形容するのにもう一つつけ加えるとしたら、草の根目線のノーベル賞学者だということだ。受賞決定の翌日、「僕は、小商人(こあきんど)のせがれ」と決然と言い放った一言が、今も耳の奥に残る。父は家具職人だったが、戦後、砂糖商を営んだ。重い麻袋を担いで回る仕事である。敏英少年は本代を、店で要らなくなった砂糖の麻袋を売って得たという。京都大学では、受賞に結びついた理論づくりに挑むかたわら、職員組合の活動を続けた。「小商人のせがれ」には、ノーベル賞学者になっても権威の高みに立ってものを見ないぞ、という決意が込められていたように思う。 

 もちろん、益川さんは超インテリである。日々の楽しみは、音楽喫茶でクラシックを聴くこと、お気に入りのコーヒーを味わいながら沈思黙考すること、そして時間をつくっては本を読むことらしい。「英語が苦手」が有名になったが、本屋の店先で原書1冊を読破したなどという話を聞くと、「僕たちとはレベルが違うな」と思うのだ。 

 だが、それでも、益川さんはコモナー(庶民)である。このことは、科学であれ、教育であれ、平和であれ、さまざまな話題を語っているときに言葉の端々から匂ってくる。「いま日本の社会には新しい階層ができつつあると思う。学歴に対応した階層ね。親が偏差値で上位にあるような大学を出た家庭は子もそうなるというように。これは、あまりいいことじゃない」(2009年3月31日付朝日新聞大阪本社発行科学面)といった発言に、それは映しだされている。

 科学者でない私たちが、科学者との対話を始めたいという思いを募らせている今、草の根の立ち位置にいる科学者は、なによりも貴重な存在ではないだろうか――。

 WEBRONZAは12月1日から、新しく「科学・環境」のセクションをつくり、科学、技術とその周辺にいる論客、そして私たち科学記者が論考を発信していくことになった。生命倫理、IT(情報技術)、地球温暖化、生物多様性、食の安全……といったテーマと向き合うことなしに未来社会を展望、設計できない時代に入った、と考えるからである。

 とりわけ重みを増しているのが、科学はなんのためにあるのか、という問いである。1年前、なんで世界2位ではダメなのか、と詰問された科学やその基盤技術は、今や「世界一をめざす」と意気込んでみたり「夢とロマン」をうたい上げてみたりするだけでは、説得力をもって存在理由を示せなくなった。科学が私たちにとってどんな意味をもつのかを語り合うことが今ほど大切な時代はない。

 WEBRONZA「科学・環境」のキックオフに先だって15日の月曜日午後、ニコニコ生放送と連携して益川敏英さんのインタビューをライブ中継する。益川さんにはその草の根目線から、科学を専門とする人もそうでない人も、科学のことをもっと語れ、と檄を飛ばしていただこうと思う。

 12月にスタートする「科学・環境」の筆者は以下の24人です。ご期待ください。(敬称略)

■内田麻理香(うちだ・まりか)

サイエンスコミュニケーター。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。同大学工学部広報室特任教員を経て独立。いろいろな媒体を通じて、科学を伝える活動を行っている。著作・監修書に『科学との正しい付き合い方』や『まりか先生のおいしい実験キッチン』など。オフィシャルブログ「カソウケンの科学どき技術どき」を開設中。

■大林ミカ(おおばやし・みか)

国際自然エネルギー機関(IRENA)のシナリオ&政策・地域マネージャー。日本の環境NPO「環境エネルギー政策研究所」副所長、駐日英国大使館の気候変動政策アドバイザーなどを務めたあと2010年5月から現職。アラブ首長国連邦アブダビ在住。IRENAは2009年に設立された自然エネルギー普及のための国際機関(www.irena.org)。本部はアブダビ。

■鎌田 富久(かまだ・とみひさ)

株式会社ACCESS代表取締役社長兼CEO。東京大学理学部情報科学科在学中の1984年にアクセス(現・ACCESS)の設立に参画。「すべての機器をネットにつなぐ」というビジョンのもと、世界で初となる携帯電話向けブラウザ開発を牽引し、現在では、世界で年間1億台を超える機器にソフトウェアを提供する企業をリードする。理学博士。

■北野宏明(きたの・ひろあき)

ソニーコンピュータサイエンス研究所取締役所長。1984年国際基督教大学教養学部理学科卒業後、日本電気に入社。88年米カーネギー・メロン大学客員研究員。91年、京都大学で博士号(工学)を取得。1993年ソニーコンピュータサイエンス研究所入社、犬型ロボットAIBOの開発などにかかわった。2008年に現職。NPO法人システム・バイオロジー研究機構会長。Computers and Thought Award (1993)、ネイチャーメンター賞中堅キャリア賞(2009)などを受賞している。

■木元俊宏(きもと・としひろ)

サイエンスライター。東京生まれ。元朝日新聞記者・編集者(岐阜、横浜両支局を経て、科学部、科学朝日編集部、文化部、科学医療グループなど)。共訳書に『コンピュータの英雄たち』。

■小林傳司(こばやし・ただし)

大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授。専門は科学哲学、科学技術社会論。市民参加型のテクノロジーアセスメント(技術評価)である「コンセンサス会議」を日本に紹介して実施した。2001年、科学技術社会論学会の設立に加わった。09年、地球温暖化をめぐる世界市民会議World Wide Viewsの日本代表を務める。

■下條信輔(しもじょう・しんすけ)

カリフォルニア工科大学生物学部教授。認知心理学者として日米をまたにかけて活躍する。1978年東京大学文学部心理学科卒、マサチューセッツ工科大学でPh.D.を取得。東大教養学部助教授などを経て98年から現職。著書に『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)『〈意識〉とは何だろうか』(講談社現代新書)など。

■須藤靖(すとう・やすし)

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。1958年高知県安芸市生まれ。第20期、第21期の日本学術会議連携会員。2009年よりプリンストン大学宇宙科学教室客員教授を兼任。主な研究分野は観測的宇宙論と太陽系外惑星。著書に『ものの大きさ』、『解析力学・量子論』、『人生一般二相対論』(いずれも東京大学出版会)、『一般相対論入門』(日本評論社)などがある。

■武村政春(たけむら・まさはる)

東京理科大学大学院科学教育研究科准教授。1969年三重県生まれ。98年名古屋大学大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)。名古屋大、三重大の助手などを経て現職。専門は分子生物学、生物教育、複製論。著書に「遊ぶ生物学」を謳った『ろくろ首の首はなぜ伸びるのか』(新潮新書)など。

■寺岡伸章(てらおか・のぶあき)

科学技術振興機構(JST)の原子力業務室長。熊本県生まれ。東京工業大学修士課程修了。文部科学省基礎研究推進室長、タイ国家科学技術開発庁長官顧問、国立極地研究所事業部長などを経たあと、2006年6月~10年9月まで理化学研究所中国事務所準備室長(北京)を務めた。中国の科学技術事情に詳しい。小説、エッセーの執筆も。

■中西準子(なかにし・じゅんこ)

産業技術総合研究所安全科学研究部門長。東京大学工学系大学院博士課程修了。工学博士。東京大学教授、横浜国立大学大学院教授などを経て現職。専門は環境リスク論。水問題からナノテクノロジーまで、幅広いテーマに目を向けてきた。『環境リスク学』(日本評論社)で毎日出版文化賞。2010年、文化功労者に選ばれた。

■中村多美子(なかむら・たみこ)

弁護士(大分県弁護士会)。1989年京都大学農学部入学、翌年法学部に転入学。95年司法試験合格。関心領域は、家族法や子どもの権利、そして「科学と法」。2009年度から始まった科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センターの「不確実な科学的状況での法的意思決定」プロジェクト代表。日弁連家事法制委員会事務局次長。

■広井良典(ひろい・よしのり)

千葉大学法経学部教授。1961年生まれ。84年東京大学教養学部卒業(科学史・科学哲学専攻)。厚生省勤務を経て現職。この間、マサチューセッツ工科大学客員研究員。社会保障、医療、環境などをめぐる政策研究からケア、死生観などについての哲学的考察まで幅広く発信。『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書)で第9回大佛次郎論壇賞を受賞した。

■山極寿一(やまぎわ・じゅいち)

京都大学大学院理学研究科教授、国際霊長類学会会長。アフリカの各地でゴリラの野外研究に従事し、その行動や生態から人類に特有な社会特徴の由来を探っている。霊長類学者の目で社会事件などについても発言してきた。著書に『ゴリラ』(東京大学出版会)、『暴力はどこからきたか』(NHKブックス)など。

■湯之上隆(ゆのがみ・たかし)

日本のハイテク産業のあり方を厳しく見つめる半導体技術者。1987年京都大学大学院修士課程修了、工学博士。大手メーカーで16年働いたのち、同志社大学で半導体産業の社会科学研究を推進。現在は技術者として仕事をしながら講演活動と各種雑誌への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)。趣味はSCUBA DIVING(インストラクター)。

■米本昌平(よねもと・しょうへい)

東京大学先端科学技術研究センター特任教授。1946年、愛知県生まれ。京都大学理学部卒業後、三菱化成生命科学研究所室長、科学技術文明研究所長などを経て現職。専門は科学史・科学論。臓器移植からDNA技術、気候変動まで幅広く発言。著書に『地球環境問題とは何か』(岩波新書)、『バイオポリティクス』(中公新書)など。

■内村直之(うちむら・なおゆき)

医学専門誌「メディカル朝日」編集長。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程満期退学。1981年、朝日新聞入社。福井、浦和両支局を経て科学部、西部社会部、「科学朝日」「朝日パソコン」などで科学記者、編集者として働く。興味は、基礎科学全般、とくに進化生物学、人類進化、分子生物学、素粒子物理、物性物理、数学などの最先端と科学研究発展の歴史に興味を持つ。著書に『われら以外の人類』(朝日選書)など。

■尾関章(おぜき・あきら)

朝日新聞編集委員。1983年から科学記者。ヨーロッパ総局員、科学医療部長、論説副主幹などを務めた。宇宙論や生命倫理など基礎科学とその周辺に関心を寄せてきた。現在、アスパラクラブで書評ブログを担当。著書に『量子論の宿題は解けるか』(講談社ブルーバックス)、共著に『量子の新時代』(朝日新書)。

■高橋真理子(たかはし・まりこ)

科学医療グループ記者。1979年朝日新聞入社、「科学朝日」編集部員や論説委員(科学技術、医療担当)、科学部次長、科学エディターなどを務め、2010年から現職。共著書に『独創技術たちの苦闘』『「震度6強」が原発を襲った』など、訳書に『ノーベル賞を獲った男』(共訳)『量子力学の基本原理 なぜ常識と相容れないのか』。

■久保田裕(くぼた・ひろし)

科学医療グループ・DO科学編集長。1983年、朝日新聞入社。「メディカル朝日」次長、「朝日パソコン」次長、「ドアーズ」編集長、「朝日ジュニア百科年鑑」編集長などを経て、2009年から現職。物理や宇宙などハードサイエンスを主に取材。趣味で、人はなぜ正統科学よりも疑似科学のほうに引かれていくのかを調査研究。その方面の著書も多数。

■竹内敬二(たけうち・けいじ)

朝日新聞・編集委員兼論説委員。主に環境、原子力、エネルギー政策を担当している。科学部、ロンドン特派員などを経て現職。温暖化の国際交渉、チェルノブイリ原発事故の現地取材。最近は環境連載「エコウオーズ」、日本の自然エネルギー政策の課題などを取材している。著書に『地球温暖化の政治学』(朝日選書)

■辻篤子(つじ・あつこ)

朝日新聞論説委員(科学、医療など担当)。1979年朝日新聞入社、科学部、「科学朝日」編集部、「AERA(アエラ)」発行室、アメリカ総局員などを経て2004年9月から現職。1989~90年、マサチューセッツ工科大学ナイト科学ジャーナリズムフェロー。

■村山知博(むらやま・ともひろ)

朝日新聞GLOBE副編集長・論説委員。1989年、朝日新聞入社。科学部、「AERA(アエラ)」編集部、アメリカ総局、科学部次長などを経て、2008年から論説委員(環境・原子力担当)。著書に『やさしい免疫の話』(ハヤカワ文庫)。

■米山正寛(よねやま・まさひろ)

朝日新聞東京本社報道局科学医療グループ(科学)記者。1984年入社。これまでに自然災害、原子力、地球環境、医学生物学などの分野を広く取材し、現在は自然史、博物学と農林水産技術へ関心を寄せる。