内村直之
2011年01月29日
人類の祖先がチンパンジーの祖先と別れ、今のわれらにつながる萌芽がアフリカで生まれたのは今から700万年前ごろとされている。その時から、20種を越える人類が地球に現れたのだが、現生人類であるホモ・サピエンスただ1種を除いてすべてが絶滅したとされる。しかし、最近のヒトゲノム科学の発展で、絶滅した「われら以外の人類」はわれらホモ・サピエンスと共存し、密接に関係を持ち、彼らの遺伝子をわれらにしっかりと残していたことが分かってきた。かなり見かけは違っても「同じ人類」として認識しあい、共存する知恵が両者にあったようだ。互いに否定しあい、紛争が絶え間ないわれら現生人類に学ぶことはないだろうか。
ネアンデルタール人がわれらホモ・サピエンスと「婚姻」していたことが明らかになったのは昨年5月のこと。ドイツ・マックスプランク進化人類学研究所の進化遺伝学部門を率いるスバンテ・ペーボ氏らが、クロアチアのヴィンジャ洞窟から発見されたネアンデルタール人女性の全遺伝子を解読、複数の現生ホモ・サピエンス集団のゲノムと詳細に比較した結果、アフリカ人を除くホモ・サピエンス集団(具体的には、オセアニア、東アジア、欧州の各集団)の遺伝子の1〜4%はネアンデルタール由来であると結論づけた(http://www.eva.mpg.de/neandertal/press/press_kit.html)。これまでの部分的な遺伝子研究では、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの間に「遺伝子交流はない(つまり婚姻はない)」というのが常識とされていたから、これは世界を驚愕させた。
古代人の化石や遺跡の年代、分布から推測すると、
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