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「第三の極」チベットに科学の目を

米本昌平

米本昌平 東京大学教養学部客員教授(科学史・科学論)

日本が誇る「地球シミュレータ」という、地球温暖化のシミュレーション計算機がある。その2100年を予想したシミュレーション結果が、文部科学省のホームページに掲載されている。これを見ると、100年後に最も気温が上昇するのは、北極圏とチベット高原である。そして近年、地球温暖化の観点から、チベット高原を南極、北極に次ぐ「第三の極 The third pole」と名づけ、問題として見直そうという立場が登場している。
ヒマラヤ一帯は「アジアの給水塔」ともいわれる。手前は高峰ガウリサンカール、後方にチベットの山々=2007年11月、ネパール上空で本社機「あすか」から武田剛撮影

 ヒマラヤ氷河が解けだす問題は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次報告書(2007年)のなかで誤った記述がされたことで一時、注目を集めたが、この「第三の極」論は、それより大きな観点から、チベット高原=ヒマラヤ地域の積雪や氷河に関して、包括的な科学研究が不可欠であることを力説する研究者たちが掲げる標語である。旗振り役の一つは、中国科学アカデミー傘下のチベット高原研究所(在・北京)であり、近年、精力的にこの問題でシンポジウムを開いている。

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