山極寿一
2011年02月15日
人間はサルや類人猿の仲間である。しかし、彼らは学ぶことは上手だが教えることはしない。近年日本各地で起きているニホンザルによる畑荒らしは、サルが新しいことを学んですぐさまそれに対処する能力があることを示している。自然にはない作物の味を覚え、人々が張り巡らすあらゆる防衛策を乗りこえて畑に侵入してくる。爆音器や花火などの脅しはすぐに馴れるし、電柵は飛び越えるし、犬に追われると木を伝って逃げる。新しい事態にサルたちはすかさず反応して、群れの全員が対処法を身につけるように見える。しかし、誰か優れたサルがそれを教えているわけではない。サルたちは教えられずに学ぶのだ。
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