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「教える」はヒトのあかし――教育とは学びを育む業である

山極寿一

山極寿一 京都大学総長、ゴリラ研究者

人類の進化史で教育が果たした役割は計り知れないほど大きい。動物界を広く見渡してみても、人間ほど教育に熱心な動物は、ほかに見当たらないからだ。
拡大おとなの食べるところをじっと見て学習する子どものマウンテンゴリラ=1982年、ルワンダの火山公園で筆者撮影

 人間はサルや類人猿の仲間である。しかし、彼らは学ぶことは上手だが教えることはしない。近年日本各地で起きているニホンザルによる畑荒らしは、サルが新しいことを学んですぐさまそれに対処する能力があることを示している。自然にはない作物の味を覚え、人々が張り巡らすあらゆる防衛策を乗りこえて畑に侵入してくる。爆音器や花火などの脅しはすぐに馴れるし、電柵は飛び越えるし、犬に追われると木を伝って逃げる。新しい事態にサルたちはすかさず反応して、群れの全員が対処法を身につけるように見える。しかし、誰か優れたサルがそれを教えているわけではない。サルたちは教えられずに学ぶのだ。

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筆者

山極寿一

山極寿一(やまぎわ・じゅいち) 京都大学総長、ゴリラ研究者

京都大学総長。アフリカの各地でゴリラの野外研究に従事し、その行動や生態から人類に特有な社会特徴の由来を探り、霊長類学者の目で社会事件などについても発言してきた。著書に『家族進化論』(東京大学出版会)、『暴力はどこからきたか』(NHKブック ス)、『ゴリラは語る』(講談社)、『野生のゴリラに再会する』(くもん出版)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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