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地の時間と人の時間――地震の島に地震を知らない人々が築いた町の悲劇

尾関章

尾関章 科学ジャーナリスト

 地震のことをよく知らない英国人たちが築いた町が、150年余りたってその怖さを思い知らされることになった。

 その街並みの美しさから「英国外で最も英国らしい」ともいわれてきたニュージーランド第二の都市クライストチャーチが無残な姿に一変した。2月22日の昼すぎ、町のほぼ直下、わずか5kmの深さで起こったマグニチュード(M)6.3の活断層型地震は多くの建物を壊し、市街のそこここにがれきの山をつくった。

拡大地震で壁が大きく壊れた教会。周りにはレンガが散乱している=2月23日、ニュージーランド・クライストチャーチで西畑志朗撮影

 犠牲者は100人を超え、行方不明者は数百人。安否のわからない人のなかには語学を学びに来ていた学生ら日本人も多く含まれる。去年9月に近くで起こったM7.0の地震の余震ともいわれるが、「浅い直下」が災いしてか、被害規模は本震より格段に大きい。

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筆者

尾関章

尾関章(おぜき・あきら) 科学ジャーナリスト

1977年、朝日新聞社に入り、ヨーロッパ総局員、科学医療部長、論説副主幹などを務めた。2013年に退職、16年3月まで2年間、北海道大学客員教授。関心領域は基礎科学とその周辺。著書に『科学をいまどう語るか――啓蒙から批評へ』(岩波現代全書)、『量子論の宿題は解けるか』(講談社ブルーバックス)、共著に『量子の新時代』(朝日新書)。週1回の読書ブログ「めぐりあう書物たち」を開設中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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