メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

 福島第1原子力発電所3号機で14日午前11時過ぎ、水素爆発が起きた。12日に起きた1号機の水素爆発より、爆発の威力は大きいように見えた。

 周辺住民にとって一番怖いのは放射能汚染だろう。福島県は、県内の全避難所の避難者のうち希望者全員に被ばく検査を実施している。放射線は目に見えないから怖いといわれる。その通りだ。だが、放射線は測定できる。微量でも測定できる。そこは私たちにとって安心材料で、だからこそ一人ひとりの被ばく検査ができるともいえる。

 被ばくの影響を見積もるときに大事なのは、放射能の強さとそれを浴びた時間のかけ算で考えることだ。放射能の強さは、1時間あたりの量で示されることが多い。それに浴びた時間をかけた数値が、浴びた量ということになる。

 今のところ、被ばく検査でわかった人が浴びた放射能の量はごくわずかで、健康に影響があるレベルではない。ただ、わずかであっても体内に取り込んでしまうと悪影響が出る可能性があるので、体の表面についた放射能(放射性物質)を洗い流す必要がある。

 放射能の量は、まずは発生元で測るべきであることはいうまでもない。原発ではどこでも敷地の近くで放射能の量を常に測っている。福島第1原発のデータを見ると、1号機と3号機で蒸気を出したときは放射能量がはねあがったが、数時間程度で下がった。

 空気中に出た放射性物質は、放射線を出して「ふつうの物質」に変わっていく。放射線には3種類あるが、アルファ線は紙1枚で止めることができ、空気中では数ミリも進めない。電子線(ベータ線)が空気中で進めるのは3メートル程度。ガンマ線はこれらより透過力が強いが、500メートル離れると50分の1に強度が下がる。従って、これらが遠くにいる人に悪影響を及ぼすことはない。恐いのは、近くに行ったときだ。

拡大環境防災Nネットにある表の一部

 放射性物質が「ふつうの物質」に変わっていくのにかかる時間は、物質ごとに違う。分単位で変わっていくものもあれば、何十年もかけてゆっくり変わるものもある。どの程度の強さの放射線がどのくらいの時間続くのかは、出てきた放射性物質の種類と量によって変わる。チェルノブイリは、大量の放射性物質が大気中にばらまかれ、大地の汚染が何年も続いている。

 現在、福島第1原発の周囲の放射能の量は、報道発表を通じてしか知ることができない。しかし、地震でシステムがダウンした福島県、宮城県以外の県にある原子力施設の周囲の放射能量は、文部科学省の「環境防災Nネット」というウェブサイトで知ることができる。青森県、茨城県という隣接県のデータもある。もし、福島第1原発から大量の放射能が大気中に出てくれば、隣県の装置が必ずキャッチする。放射線は目に見えないけれど、測定できるのだ。

 このサイトで示されているのは、空間放射線量率だ。これは1時間あたりの空間のガンマ線の量で、環境中の放射線の量を知るのにもっとも一般的に使われているものだ。自然環境には、宇宙から降ってくる宇宙線と大地から出てくる放射線があふれている。上空の宇宙線量は地上より多いので、飛行機に乗るとその分、多くの放射線を浴びる。宇宙線の量そのものも太陽活動の変化などで変わる。一方で、花崗岩が多い地域は大地からの放射線が多いなど、地質も影響を与える。

拡大「日本の環境放射能と放射線」サイトから

 左のは、各都道府県の測定結果の年間平均を示したものだ。地域によって25程度から150程度までと差がある(単位はナノグレイ/時と呼ばれるもの)のがわかる。

 茨城県や青森県は比較的低い地域だ。現在の値は、青森県は20程度、茨城県は30から50程度だ。これを監視していれば、放射能汚染の様子はわかる。隠すことはできない。

 もちろん、一番知りたいのは、福島県と宮城県の値だ。両県のシステムの復旧を急いでほしいと思う。文部科学省は観測車を出して計測を始めている。せめて、そのデータをウェブサイトで即時公開してほしい。

 

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

高橋真理子

高橋真理子(たかはし・まりこ) 朝日新聞 科学コーディネーター

朝日新聞 科学コーディネーター。1979年朝日新聞入社、「科学朝日」編集部員や論説委員(科学技術、医療担当)、科学部次長、科学エディター(部長)などを務める。著書に『重力波 発見!』『最新 子宮頸がん予防――ワクチンと検診の正しい受け方』、共著書に『村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?』『独創技術たちの苦闘』『生かされなかった教訓-巨大地震が原発を襲った』など、訳書に『ノーベル賞を獲った男』(共訳)、『量子力学の基本原理 なぜ常識と相容れないのか』。

 

高橋真理子の記事

もっと見る