2011年03月17日
福島第1原子力発電所では17日、陸上自衛隊のヘリコプターによる上空からの放水作戦が実行された。16日は上空の放射線量が高くて断念したが、17日午前11時半ごろ記者会見した北沢俊美防衛相は「今日は限度だという判断で決断した」と説明した。
防衛省によると、作戦実行時の上空の放射線量は、高度1000フィート(約300メートル)で毎時4.13ミリシーベルト、300フィート(約90メートル)で毎時87.7ミリシーベルト。国際放射線防護委員会(ICRP)は、放射線業務や防災業務にあたる人の年間被ばく線量の限度を50ミリシーベルトと勧告し、緊急でやむをえない作業をする場合は年間100ミリシーベルトまでとしている。日本政府は、15日に「やむをえない緊急の対応」の場合に限って上限を250ミリシーベルトに引き上げるように関係省令を改めた。
ヘリは4機編成で、まず1機が放射線量を調査した。「1機あたり計40分間までの作業が可能」と判断が下され、1機が投下の指示を担当し、2機が実行部隊として2回ずつ海水7.5トンをくみ上げて投下した。1回目は「300フィートより低い高さ」から投下したといい、どのときも放水するとすぐに原発から離れた。
作業は午前9時48分から午前10時まで、12分で終わった。乗員19人の被ばく量は100ミリシーベルトよりずっと少なかったのは間違いない。(→その後の発表によると、1ミリシーベルトだった。)
16日に測った高さ100フィートでの放射線量は毎時250ミリシーベルトと相当高かった。そのため、この日は断念している。高い線量は使用済み燃料から放射線が大気中に直接出てきているためと考えられるが、これは遠くに行けば行くほど少なくなるし、鉛や厚い鉄板で遮蔽が可能だ。17日の数値は300フィートで毎時87.7ミリシーベルトだったのだから、これなら短時間任務に危険はない。北沢防衛相には「放射線量が限度を超えない範囲で作業可能と判断した」という説明もしてほしかった。やみくもな突入が称賛されるわけではない。指導者には科学的、合理的な判断をしてほしいし、それを常に説明してほしいと思う。
原発敷地内の放射線量はどうなっているのだろうか。15日午前10時22分に3号機の山側で毎時400ミリシーベルトというきわめて高い放射量を観測した。同じ時刻に4号機のそばでは毎時100ミリシーベルト、2号機と3号機の間では毎時30ミリシーベルトだった。この日は早朝に2号機の圧力抑制室が壊れ、9時半ごろから4号機で火事が起きた。
その後、これほど高い数値は敷地内で観測されていない。正門前の観測値は毎時10ミリシーベルト程度に急上昇してまもなく数ミリシーベルト以下に落ちてくる、という動きを繰り返している。
17日未明から朝にかけては敷地西門とそこからほど近い体育館脇で毎時0.3ミリシーベルト台が続いた。午前9時半以降、より東側の事務本館北では毎時3.7ミリシーベルトと一桁高い数値が続いた。
放射性物質は、当然、敷地外にも出ているが、距離が遠くなれば量はぐんと減る。周辺自治体の中では原発から北西の内陸部にある福島市の数値の高さが目立つ。風向の関係か、原発に近い海辺の南相馬市よりはるかに多くなっている。15日午後7時に毎時23.88マイクロシーベルトを記録したのち20マイクロシーベルト程度が続き、18.4(16日午後2時)→15.5(同日午後4時)→13.4(17日午前6時)→12.9(同日午前11時)と徐々に下がってきた。
1マイクロは1ミリの1000分の1なので、仮に毎時20マイクロシーベルト(0.02ミリシーベルト)の放射線量がある戸外に夜も昼も30週間居続けると100ミリシーベルトに達してしまう。
ただし、年間100ミリシーベルトというのは、これ以下であれば健康に影響はないという数値で、これを超えたからすぐに何らかの悪影響が出るわけではない。世界の中には、自然放射線量が年間数十ミリシーベルトと高い地域もあるが、そこの住民のがん発症率はとくには高くない。じわじわと出てくる影響について見極めるのは難しいが、日本政府が緊急対応として上限値を250ミリシーベルトにあげたのは、250ミリシーベルト以下なら急性症状は出ないと専門家の間で認められているからだという。
その数値を頭に置きつつ、浴びる放射線はなるべく少なくするように最善の手を打っていかなければならない。最重要課題は、これ以上の放射能の大放出が起こらないようにすること。関係者の奮闘を祈るような気持ちで見守っている。
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