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危機に手をつなぐ姿は「世界の模範」――頼もしい人々の和と輪を思う

山極寿一

山極寿一 京都大学総長、ゴリラ研究者

震災から10日余りがたった。大地震、大津波、原子力発電所の崩壊と次々に未曾有の危機を迎えて、被災地の人々はかつて人間が体験したことのないような苦難を強いられている。遠い地にいる私たちも毎日テレビの前にくぎ付けになり、何かできることはないかとうろうろしながら天を仰ぐ。気持ちは暗くなり、なかなか寝付けない夜が続いた。
避難所の炊き出しに並ぶ人たち。輪になって会話する姿も。その整然とした様子も「世界の模範」か=3月14日、岩手県陸前高田市で西畑志朗撮影

 しかし、私は被災地をめぐる人々の動きを見て、つくづく日本人というのはすごい文化を築いたものだと思う。この危機にあって人々の信頼関係は揺らぐどころか、固く手をつなぎ合い、命を削りながら助け合っている。わずかな食料を子どもたちやお年寄りを優先して分け合い、燃料の乏しい中で寒さに耐えながら狭い避難所で弱者をいたわっている。被災地の外では、寸断された道路やがれきの山を踏破して水や食料を届けようと必死に格闘している人々がいる。ありったけのガソリンを提供し、使える限りの車を動員して、治療や介護の必要な人々を救いだして搬送しようとする人々がいる。この姿は世界の模範となるだろうと私は信じて疑わない。

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