山極寿一(やまぎわ・じゅいち) 京都大学総長、ゴリラ研究者
京都大学総長。アフリカの各地でゴリラの野外研究に従事し、その行動や生態から人類に特有な社会特徴の由来を探り、霊長類学者の目で社会事件などについても発言してきた。著書に『家族進化論』(東京大学出版会)、『暴力はどこからきたか』(NHKブック ス)、『ゴリラは語る』(講談社)、『野生のゴリラに再会する』(くもん出版)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
山極寿一
しかし、私は被災地をめぐる人々の動きを見て、つくづく日本人というのはすごい文化を築いたものだと思う。この危機にあって人々の信頼関係は揺らぐどころか、固く手をつなぎ合い、命を削りながら助け合っている。わずかな食料を子どもたちやお年寄りを優先して分け合い、燃料の乏しい中で寒さに耐えながら狭い避難所で弱者をいたわっている。被災地の外では、寸断された道路やがれきの山を踏破して水や食料を届けようと必死に格闘している人々がいる。ありったけのガソリンを提供し、使える限りの車を動員して、治療や介護の必要な人々を救いだして搬送しようとする人々がいる。この姿は世界の模範となるだろうと私は信じて疑わない。
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