尾関章(おぜき・あきら) 科学ジャーナリスト
1977年、朝日新聞社に入り、ヨーロッパ総局員、科学医療部長、論説副主幹などを務めた。2013年に退職、16年3月まで2年間、北海道大学客員教授。関心領域は基礎科学とその周辺。著書に『科学をいまどう語るか――啓蒙から批評へ』(岩波現代全書)、『量子論の宿題は解けるか』(講談社ブルーバックス)、共著に『量子の新時代』(朝日新書)。週1回の読書ブログ「めぐりあう書物たち」を開設中。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
尾関章
反原発のうねりを世界で巻き起っている。もちろん、大津波に見舞われた東京電力福島第一原子力発電所の機能不全とそれに続く放射能飛散がきっかけである。その動きが最も盛んなのは欧州であり、なかでもドイツでは、その民意がかたちになり始めている。
3月下旬にあったドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州の州議会選挙では、緑の党の得票率が5年前の前回選挙よりほぼ倍増し、社会民主党(SPD)と合わせると、連邦のメルケル政権を支えるキリスト教民主同盟(CDU)と自由民主党(FDP)の連立与党勢力を上回った。
メルケル首相は去年秋の総選挙後、右派連立政権をつくって「脱原発」政策を方針転換したばかり。それに冷や水を浴びせる地方選挙の結果である。