メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

無料

【科学朝日】系外惑星の発見とシミュレーション天文学(collaborate with 朝日ニュースター、5月26日放送)

朝日ニュースター

==============================================

 朝日グループのジャーナリズムTV「朝日ニュースター」は、通信衛星などを利用して24時間放送しているテレビチャンネルで、ケーブルテレビ局やスカパー!などを通じて有料視聴することができます。4月から始まった新番組「科学朝日」は、高橋真理子・朝日新聞編集委員がレギュラー出演する科学トーク番組です。WEBRONZAでは、番組内容をスペシャル記事としてテキスト化してお届けします。

====================================================================

高橋:こんばんは。科学の最先端にひたる「科学朝日」。今回のテーマは、「系外惑星の発見とシミュレーション天文学」です。 「系外惑星」とは、太陽系の外に存在する惑星のことです。惑星は自分では光っていませんから、観測して見つけるのは至難の業だといわれてきましたが、最近になって発見の報告が相次いでいます。系外惑星は地球外生命体の存在可能性にも大きくかかわることもあり、今や天文学の中心トピックス、と言ってもいいほどの注目を集めています。

 そして「シミュレーション天文学」もまた、近年、注目の的になっています。天文学は、望遠鏡で天体を観測する「観測天文学」、そして、理論を考える「理論天文学」が車の両輪となって発展してきました。そこに、20世紀後半から第3の天文学として登場したのが、「シミュレーション天文学」です。スーパーコンピューターや専門計算機を使って宇宙を再現し、その再現した宇宙の中で実験を行いつつ研究を進めていく。その新しい手法が、新しい知の世界を開いてきています。

拡大

 本日は系外惑星の最新の研究成果とシミュレーション天文学をテーマに、宇宙の最先端にどっぷり浸りたいと思います。ゲストは、国立天文台准教授の小久保英一郎さんです。こんばんは。

小久保:こんばんは、よろしくお願いします。

高橋:よろしくお願いします。小久保さんは主にシミュレーション天文学がご専門ということですが、今、どんなご研究をなさってるんですか?

小久保:自分の興味は基本的には惑星系の起源で、具体的に言うと、たとえば太陽系でしたら地球であるとか、そのほかの惑星たちがどうやってできたのかと。太陽系だけに限らず、いまだったら太陽系以外にも惑星がありますから、そういう惑星も含めて、いったいどうやってできてきたかということを知りたい。それが私の研究です。

高橋:あくまで理論的に知りたいというのが、ご関心の的なんですね?

小久保:そうですね。自分がやりたいのは、物理を積み上げることによって、惑星ができていくその過程一つ一つ読み解いていって、全体としてどうやってできるのか。ちりから惑星ができてくるわけなんですけど、そのちりの段階から、たとえば生き物が住めるような惑星であるとか、そういうものがどうやって形作られていくのか。それをこう全体的に描き出したいという。それが自分の動機ですね。

高橋:最近、急に、系外惑星があれこれ見つかってきたというニュースを聞くんですけれども、太陽系しか分からなかった時代と、今、あれこれ見つかっている時代で、理論研究っていうのは変わってきたんでしょうか。

小久保:そうですね。やっぱり、すごく大きく変わりました。

 これまでは太陽系しか知らなかったので、この分野では基本的には、太陽系をつくり出す。それがいちばんの目標でやってきていて。でも1995年に最初の太陽系外惑星、つまり系外惑星が見つかって、それが実は、太陽系とはずいぶん違うものだったんですね。

  最初に見つかったものは、星に対してすごく近いところにありました。太陽系ではそんなとこに惑星がないような、そういう近いところに木星のような大きな惑星があると。そこで我々、何が分かったかっていうと、惑星系っていうのは太陽系のようなものばかりではなくて、実に様々なものがあると。この多様な惑星を、僕らはつくらないといけなくなったわけですよ。なので太陽系だけじゃなくて、実はいろんな、豊穣(ほうじょう)な惑星の世界があって、今度はそれ全体に向かって取り組んでいくという。一気に広がったっていうんですかね。そういうことになってますね。

高橋:なるほどね。それではコマーシャルを挟んで、詳しいお話を伺いたいと思います。いったんコマーシャルです。

(CM)

高橋:「科学朝日」。本日のゲストは、国立天文台准教授の小久保英一郎さんです。あらためましてよろしくお願いします。

小久保:よろしくお願いします。

高橋:系外惑星についてのニュース、本当にこのところたくさん出てきてるんですけれども、最近、私が特に注目したというのか、はーと思ったのは、フランスの国立科学技術センターが発表した研究成果です。20光年先に地球型の惑星がありそうだというんですね。惑星っていってもいろいろありますけれども、いわゆる「ハビタブル・プラネット(Habitable planet)」、居住可能な惑星ですね。生命が生きていけるような環境にある惑星が、本当にあるのか、どの辺にあるのかっていうのが関心の的だと思うんですね。

小久保:はい。

高橋:これが、そんな20光年先っていったら、天文学の世界でいったらすぐお隣ですよね。ご近所ですよね(笑い)。

小久保:そうですね、ええ。

高橋:そんな近くに地球型があるのかって思ったのですが、この研究成果は、先生からご覧になるとどうなんでしょうか。

小久保:我々の大きな目的のひとつは、第2の地球を探すということです。それは一般の方もすごい興味を持ってもらえます。惑星いろいろありますけど、やっぱり生き物を宿せるようなものを見つけたいと。でも、どういう条件で生命を宿せるかというと、この場合は海が存在するかどうかが鍵になっていて、ハビタブルっていう場合は、惑星の表面に水が存在できることを、実は条件にしているんですね。

高橋:そうなんですか。

小久保:ええ。で、海が存在するためには実はいろいろな条件があって、いちばん大事で今回の研究にも関係しているのが、星からの距離ですね。それによって太陽というか、星から来るエネルギーが変わるので、表面の温度が変わってくると。

 それだけじゃなくて、惑星の周りにある大気も重要です。地球だったら大気があって、その中の水蒸気とか二酸化炭素があるおかげで、温室効果によってこの温度に保たれているわけです。なので、惑星にどんな大気がどのくらいあるかっていうことが鍵なんですね。実はこれは、現在の観測ではまだよく分からないんですね。

高橋:はい。

小久保:なので、このフランスの研究であれば、ある仮定をして、たとえば、地球と同じだと思うとかそういう場合に、もしかしたら、条件によっては海がある…

高橋:かもしれない。

小久保:ことが許されるかもしれないという。そういう希望的なっていうか、そういうとらえ方をしたほうがいいと思います。なので、確実にそうだっていうことがいえるというのと、これはちょっとまだ、ほど遠いんですけど。

高橋:まだなんですね。

小久保:可能性はゼロではないという。

高橋:惑星自体はだいぶ前に見つかってたんですね。2007年ですか?

小久保:はい。

高橋:だけども、遠すぎるから寒くて寒くて、とてもハビタブルではないっていわれてたんですよね。それが、温室効果によって、あったかいかもしれない。

小久保:ええ。

高橋:その可能性が分かったっていうことなんですね?

小久保:そうですね、はい。

高橋:そうすると、距離が遠いものでも、そういう条件がうまく合えばハビタブルになりうるっていうことであれば、ハビタブルな惑星はひょっとしたら、けっこうあるのかなっていうことになりますね。

小久保:そうですね。ただ重要なのは、やっぱ、ある程度ちょうどいい距離っていうのはあって。星があったら、やっぱりあんまり遠すぎたら、いくら温室効果ガスがあってもだめなんですね。近すぎてもやっぱりだめで、ある幅があって、その幅の中で大気の温室効果がどのくらい効くかとかいうことによって、それがちょっと広がったりとかいうことはあったりするんですね。

 これは「ハビタブル・ゾーン」っていうふうに呼んだりします。それは、太陽からどのぐらいの距離にあれば、地球みたくなれるかっていうもの。ここにどのくらい惑星ができるかっていうことを、僕らもやっぱり知りたいと思っていて、自分はそれを理論的に。惑星ができていく過程でちょうどいい距離にどのくらい惑星ができるのかっていうのは、惑星の形成のシナリオが明らかになったときには、全部計算できるようになるわけです。

高橋:ふんふん。

小久保:これぐらいの距離。この間に、だいたい1つ。もしかしたら、いつでも1個はできるよとか、ほとんどできないんだとかね。そういうことが分かってくると期待していて、現段階のこれまでの成果でいえば、けっこうできると。

高橋:そうなんですか。

小久保:はい。僕は非常に楽観的というか、希望的でもあるんですけど、海を宿せるような惑星っていうのはそんなにまれなものではなくて、けっこう宇宙に普遍的に存在できるんではないかというふうに、今は思っています。

高橋:そうなんですか。

小久保:はい、ええ。

高橋:今、系外惑星っていうのはいくつ見つかってるんですか?

小久保:いろんな見つけ方があって、だいたい確実だと思われてるもので、もう500個を超えています。これが先ほどもお話しした、1995年に最初の1個が見つかったっていうのと同じ方法でやっていて、地上の望遠鏡を使って、「ドップラー法」っていうんですけど。簡単に言えば、星があって、その周りを惑星が回ってるとすると、正確に言えばこの星も、惑星との「重心」って言いますけど、ちょうどやじろべえが釣り合うような場所ですね。惑星があると星もそこを中心として回るわけです。

高橋:はい。

小久保:この星の光を見ていると、その光が星が動いているためにドップラー効果って、色がちょっと変わると思っていただければいいんですけど、そのために変わるんですね。

高橋:ええ。

小久保:その変わり具合と変わる周期。それらを使って惑星の重さ、正確には質量、と惑星の公転周期がわかる。周期が分かれば「ケプラーの法則」によって、どのくらい遠くを回っているかってのが分かるんです。こうやって見つけると。これがもう500個を超えて、今、見つかってきてるわけです。

高橋:でも惑星というとすぐ太陽系のイメージをしてしまいますけども、もし惑星がたくさんあると動き方がかなり複雑になるじゃないですか。それで、ドップラー効果で見つかるんですか?

小久保:そうです。もしたくさんあると、その分、けっこう複雑な動きをするわけですね。

高橋:そうですよねえ。

小久保:でも今は、それを全部、分解して解析できるような、そういうプログラムが開発されていて、分かるんですね。

高橋:分かるんですか。

小久保:はい。計算することで。望遠鏡で見てるのは本当に光の波長のずれ、色のちょっとのずれみたいなものですけど。それを見ているだけなんですけど、それを解析することによって、複数惑星があっても、どんな重さでどこにあるかっていうのが、今、分かるんです。

高橋:その、最初に見つけた95年のは、惑星は1つだったんですか?

小久保:はい、最初は1つでしたね。

高橋:で、あそこの恒星には惑星がありそうだ、みたいな当たりをつけて見るんですか?

小久保:今やってるのはそうじゃなくて、基本的に何でも見る、近くの星は見ていくという。

高橋:じゃ、順番に見てって。

小久保:ええ。見られるものをどんどん見ていくということで、今、探してますね。

高橋:で500個、今、見つかったということなんですね。

小久保:はい。

高橋:でも、その500っていう数字はどうなのかな。まだまだ少ないんですかね(笑い)。

小久保:そうですね。けっこうこの観測は大変で、やっぱり遠くなっていくと、星はいっぱい、どんどんあるんですが、暗くなってってしまうので、そうすると精度が悪くなってしまう。光の波長、色がちょっとずれて見えるのをちゃんと見ないといけないんで、あまり遠いと見つけにくいっていうのがあって、近いところだけで、今、やってるんですね。

高橋:なるほど。じゃ、地上から見られるのは、近いところに限られるっていう感じでね。

小久保:基本的には、はい。やっぱり遠くは、宇宙に行ったとしてもなかなか難しい。限られますね、やっぱり、分かる範囲っていうのは。

高橋:じゃあ、順番に調べていって、全天の何割ぐらい調べたんですか? 何割ぐらい調べて500になったんですか?

小久保:全天、というかですね。たとえば、絶対ないだろう、あんまりないだろう、と考えられる星、たとえば連星になっている星だとか、星としてもう最終段階にあるとか、そんなところはあまり見ないで、けっこう太陽のように、「主系列星(しゅけいれつせい)」っていうんですけど、いちばん、何て言うんですかね、壮年期の、普通の状態にある星というのを見ていくわけです。

高橋:はい。

小久保:それで、明るい方からどんどん見ていって。

高橋:なるほどなるほど。

小久保:それで、望遠鏡が大きくなればより暗いところを見ていくという、そういう感じで、今、どんどん増やしていっているところで。いまだと、非常に大きいものでは、たとえばハワイにある「すばる望遠鏡」みたいな8メータークラスの望遠鏡とかも使って、そういう惑星探しっていうのをやってるわけですね。

高橋:そうなんですね。すばる望遠鏡をつくるとき、系外惑星発見が目標であるという説明を聞いた覚えがあるんですけれども、なんか、あっという間に次々、ほかのところから見つかって…(笑い)。

小久保:そうですね。すばる望遠鏡がめざしているのは、惑星の光を直接受けることなんですけど、最初に系外惑星が見つかった方法は直接ではなくて、間接的に惑星があるために星が動くのを見つけるというものでした。この方法は、実はけっこう小さい望遠鏡でも。

高橋:できるんですか。

小久保:できるんですね。

高橋:そういうことなんですね。

小久保:はい。すばる望遠鏡まで大きくなくても。で、今、世界に何チームか、その系外惑星を見つけるチームがあるんですけど、それはもっと小さい望遠鏡でやったりしてますね。

高橋:それで、その宇宙から見つけるというプロジェクトもあるんですよね。

小久保:そうですね。やっぱり地上にいると、大気があるので、それで光が吸収されてしまったり、大気が揺らぐことによって光がぼやけちゃうとか、なかなか難しい問題があるので、もういっそ、大気から脱出して宇宙に行くと。

 今、すごい僕らも驚きをもってというか、期待をもって見守っているのは、「ケプラー」という探査計画で、これは今、宇宙にもう上がっていて、そこで、皆さんご存知の、はくちょう座の方なんですけど、そっちを見て、もう10万個以上の星をずっと見ていて。

高橋:ええ。

小久保:で、そこで何を探すかっていうと、さっきの話は、地上から見ているのは、惑星があると星がちょっと動くから、その動きによって星の色みたいのが変わるというのを見張ってるんですけど、今度はずっと星を見ていて、運が良ければ星の周りを惑星が過ぎていくと。そこをこっちから見ていると、惑星がちょうど目の前に来ると暗くなりますよね。惑星があると星の光が届かなくなるので。それをずーっと見張るというのをやっているのが、ケプラーです。この方法は「トランジット法」っていうふうに呼ばれるんですけど、目の前を惑星がトランジットしていくという。

高橋:通過していく。

拡大太陽を周る軌道を回りながら惑星を探す宇宙望遠鏡ケプラーの想像図(NASA提供)

小久保:ええ。これをやっている。

高橋:ケプラー望遠鏡は、あ、これですね?

小久保:はい、そうですね。

高橋:ハッブル望遠鏡みたいなものなんですね?宇宙望遠鏡……。

小久保:それ、宇宙望遠鏡です。

高橋:で、ハッブル宇宙望遠鏡と、いる場所はどうなんですか? 似たようなとこにいるんですか? それとも、どんどん遠くまで飛んでっているんですか?

小久保:いや、地球の近くですが、太陽を回る軌道にいます。

高橋:で、そのはくちょう座の方向をずっと見ている。

小久保:はい。

高橋:NASAが作ったビデオがあるので、ちょっとそれを見ながら解説していただきましょう。

小久保:はい。これが望遠鏡ですね。

高橋:あそこ、地球がいるわけですね。

小久保:ええ。

高橋:これ、はくちょう座のほうなんでしょうかね。

小久保:はい。やっぱり、ずっといろんな星をたくさん見るために、限られたところしか見てないんですね。ある決められた領域があって、そこをずっと見ていると。こんなふうに惑星が前を通っていくと星が暗くなるので、その暗くなり方を見ると。

高橋:で、なんかあるはずだっていうのが分かる、だけですね? そういう意味では。

小久保:はい、ええ。まあ、影を見るっていうことですかね。これはケプラーが見つけた、「ケプラー10b」っていう惑星で、想像図ですけど、こう見て分かるように、岩石でできている「地球型」の惑星だと考えられる。

高橋:地球型っていうのは岩石でできているもので、であとは「木星型」っていうんですかね。

拡大ケプラー望遠鏡が見つけた系外惑星の想像図(NASA提供)

小久保:はい。

高橋:ガスでできているのと、大ざっぱに2つに分かれるんですね。

小久保:それプラス、最近は氷でできているのもあるので、「氷惑星」というものも。

高橋:じゃ、3種類。

小久保:はい。大きく分けるとそうですね。

高橋:これ、地球型という割には、なんかすごいドロドロしてて熱そうですね(笑い)。

小久保:そうですね、まだ非常に。ここだと星に近くて高温なので、表面が溶けていて、溶岩の海みたいなそういうのが広がっているという想像図ですね。

高橋:想像。

小久保:はい。

高橋:これだとハビタブルなんですか?

小久保:これだとちょっとまだ厳しいですね。

高橋:厳しい。

小久保:はい(笑い)。

高橋:熱すぎますね。

小久保:はい。

高橋:でもこれを、ケプラー宇宙望遠鏡が見つけたと。こういうものが存在していると。

小久保:はい。どんどん今、見つけているところで。ケプラー望遠鏡のいちばんの、何て言うんですかね、狙いは、やっぱりハビタブルな惑星を見つけるということで、しかも自分たちの太陽のような星の周りに、地球のような惑星がないかという。いちばんあれですよね、分かりやすい。

高橋:そうですね。

小久保:それがいちばんの目的であるのが、このケプラー計画なんですね。

高橋:これはいつ打ち上げたんですか?

小久保:2009年3月です。

高橋:打ち上がってすぐに観測を始めて?

小久保:すぐには、いろいろ調整とかやってたですね。

高橋:ああ。で、10年の夏頃に成果が出始めたということですか?

小久保:そうですね。やっぱりこういう観測では、1回だけ目の前を通る、トランジットするっていうだけじゃなくて、2回目がないと周期とかも分からないわけですね。

高橋:そうですね。たまたま別のものが通り過ぎただけかもしれませんね。

小久保:なんで、やっぱ、ある程度、時間がかかるわけです。

高橋:ええ、ええ。

小久保:しかも、星から遠いところを回っているとその周期が長いので、2回目のトランジットが起きるまでに、より時間がかかるわけですね。なので、ある程度、長い観測が必要になります。

高橋:その長い間、ずっと同じ星を見ているんですか?

小久保:はい。もう10万個を超える星をずっと見ているわけです。

高橋:それで、いままでに1000を超える惑星を見つけた…。

小久保:惑星の候補ですね。

高橋:候補ですか。

小久保:はい。

高橋:そのトランジット法で見つけたという。

小久保:はい。

高橋:さっきおっしゃった500というのは、地上から見つけた数なんですね?

小久保:そうです。はい、ええ。

高橋:それと重なって、プラス500ってことですか? これが見つけたのは、

小久保:いや、さらに独立にというか、これでどんどん見つけているっていうことですね。

高橋:別に1000以上見つけていると。

小久保:ええ、ええ。

高橋:と、相当やっぱり、系外惑星っていうのはたくさんあるなーっていう(笑い)。

小久保:そうですねえ。やっぱり、我々の理論からもそうなんですけど、惑星をつくらないって、なかなか難しいんじゃないかなっていうか、逆に。

高橋:うーん。

小久保:星が生まれて、星の周りに、その星になりきれなかった物質が円盤のように取り巻く。これはけっこう普通に起きることで、そういう円盤ができると、 やっぱり、放っておくと惑星ができる。どんな惑星ができるかっていうのは、いろいろ条件によると思うんですけど、基本的に惑星はできると。なので、これは個人的な意見でもありますけど、惑星系っていうのは普遍的に銀河系の星にはあるんではないかと。観測はどんどんそれを、何て言うんですかね、確かめるようなことになっていると、いうふうに思いますね。

高橋:でも理論的に考えれば、そっちのほうが自然だっていうことですよね。

小久保:そうですね。

高橋:いままで見えてなかったから、なんとなくないんだと。

小久保:はい。

高橋:太陽系だけ特別だっていうふうに、思い込んでいたところはありますよね。

小久保:はい。

高橋:惑星というのは滅多にないもんなんだって、なんとなく思わされていましたけれども、よくよく考えたらそっちのほうが変ですよね。

小久保:そうですね。でも、たとえば地球はハビタブルなわけですよね、我々いるから。それはやっぱり、奇跡だっていうふうに思う人もいるわけですね。

高橋:ええ。

小久保:そこがやっぱり、その人の、何て言うんですかね、思想というか、たぶん哲学的なことも関係してると思うんですけど。やっぱり、先ほどおっしゃられたように、自分は、太陽系があって、地球があって、自分たちがいるんだから、だったら、ほかにもそういう世界があって当たり前だろうと。自分たちが特別だと考えるのは、なんかおこがましいって思います。それは、科学とかそういうのと別に、基本的にそういう気持ちというか考え方なので、惑星というのは普遍的にあるものであると思う。で、ハビタブルな惑星、第2の地球っていうのも絶対あると。

 そこは、研究者の中でも意見が分かれるところです。やっぱりいまでも、欧米の科学者には、惑星はたくさんあってもいいけれど、この地球のような惑星は、奇跡のたまものじゃないかっていう。そういうふうに考える方もいますね。

高橋:なるほど。

小久保:ええ。それはでも、近い将来、科学的にちゃんと、どちらかっていうことが分かってくる。

高橋:それは、観測で分かるんですか?

小久保:第1歩はこれですね。ケプラーによって。少なくともケプラーが教えてくれることは、星からちょうどいい距離、ハビタブル・ゾーンに、どのくらいの大きさの惑星があるか、っていうこと。

高橋:距離も分かるんですか? ケプラーって。

小久保:距離が分かります。

高橋:どうして? 暗くなるのを見ているだけで。

小久保:見て、で、1回暗くなって、次に暗くなるまで1周してきます。

高橋:ああ、はい。

小久保:で、その1周にかかる時間から、ケプラーの法則で。遠くにあればあるほどゆっくり回っているっていう法則を使って、距離を出すんですね。

高橋:あ~。

小久保:なのでケプラーは、この距離と大きさ。大きさは、星の光の暗くなり方で、どのくらい惑星が星を隠すかで分かるので、それを教えてくれるんです。

高橋:ふーん。

小久保:これでたくさん、いろんな候補を見つける。たとえば、次のような場合、第2の地球の候補になります。ケプラーは、太陽と同じような星をいっぱい見ています。そこで、ちょうど1回トランジットがあって暗くなり、さらに1年後にまたあったとなったら、地球と同じ距離。

高橋:そうですね。

小久保:のところにあることになるわけですよ。ちょうど大きさも、地球があったと思ったら暗くなるのと同じくらい暗くなったっていったら、そこに地球の大きさの。

高橋:ああ、ああ、そうですねえ。

小久保:惑星がちゃんと、いい距離にあるっていうことが分かるわけです。

高橋:分かりますねえ。

小久保:これは、まず候補ですね。

高橋:ええ、ええ。

小久保:第2の地球の候補になると。でもケプラーは、残念ながらそこまでしかできない。ケプラーだけでは、ハビタブルかどうかっていうのは、実は分からないんですね。ハビタブルかどうかっていうのは、さっきも言ったように海があるかどうか。それを考えるには、惑星がどんなものでできているか。特に大気がどんなものでできているかっていうことが、情報として必要になって来るんです。それももちろんやりたいっていうか、知りたいわけですよね。

高橋:ええ。

小久保:なので、この計画の次の世代の計画として、「TPF」というふうに通称されているんですけど、「T」は「Terrestrial(テレストリアル)」、地球型って意味で、「P」は「Planet(プラネット)」、「F」は「Finder(ファインダー)」、「Terrestrial Planet Finder」で「TPF計画」っていうのがあって、それはこうやってケプラーとかで、あそこに惑星があると。で、けっこういー感じであると。

高橋:ええ(笑い)。

小久保:いうのが分かってきたときに、今度はこの惑星の光を受ける。ケプラーは影を見つけるわけですけど、これはより大変で。なんでかっていうと、地球を考えて分かるように、太陽がすごくまぶしいわけですね。

高橋:そうですね。

小久保:そこに、自分で光ってない、太陽の光を反射してるだけの小さい石の塊があるだけですよ。

高橋:ええ、ええ。

小久保:そんなの遠くから見てたら、もう、すごい近くにあるわけで、それ、全然見えないです。それはうまく、次の計画では星の光を消して、惑星の光だけを取りだして見るっていうことを考えていて。なぜ光を見たいかっていうと、光には惑星の情報が入っている。光を七色に分ける、分光するっていいますけど、虹は太陽の光を七色に分けますよね。

高橋:はい。

小久保:あれと同じ原理で光を分けると。そうするといろんなところが、ちょっと光が減ってる場所とかがあるんですね、光の色に応じて。その、どの色のところ、波長のところがへっこんだりしてるかっていうことを調べると、そこに何が、どういう物質があるかっていうの分かる。つまり物質は、ある特有の波長の光を吸収したりするという特徴があるので、どこがなくなっているかっていうことで、何があるか。で、どのくらいへこんでるかで、どのぐらい量があるかとかいうのが分かってくると、その惑星にある大気に何が入ってるかが分かってきます。

高橋:そこまで分かる。すばる望遠鏡も、惑星を直接観察するときは、そうやって恒星は隠して見るんだっていう説明、聞きましたけれども。

小久保:はい、そうですね。

高橋:そうすると、すばるでも同じような分析はできるわけですか?

小久保:できますね。ただ、いまのすばるの性能では、地球型惑星は厳しいですね。

高橋:ああ~。

小久保:今、すばる望遠鏡で見つけている系外惑星っていうのはもっと大きな、ガス惑星と考えられる大きな重い惑星なんですね。なんで実は、すばる望遠鏡にも次の計画があって、それは、「30メーター望遠鏡計画」と。

高橋:すばるは8メーターですね。

小久保:ええ。それは「TMT」って通称されていて。「Thirty Meter Telescope」で「TMT」っていうんですけど、それも国際協力でやろうとしています。ハワイに30メーター望遠鏡を作って、それで光をいっぱい集められますから、地球型惑星の暗い光を受けて、いま言ったような分析をして、そこに何があるかっていうのを調べる。これも次世代なんですけど、そういうことまで、一応、計画としては今あって、我々はそれの準備をいろいろしているっていう段階ですね。

高橋:小久保さんご自身はその観測ではなくて理論研究と、もうひとつ、第3の天文学といわれているシミュレーション天文学をやられているんですね。

小久保:ええ。

高橋:そのシミュレーション天文学って、まだ普通の方はあまりピンと来ないと思うので、ちょっとこれがどういうものか、説明していただけませんか。

小久保:普通、皆さんも理科とかを学校でやったりしたときに、だいたい、いつも実験ってやっていたと思うんですけど、実験はすごいためになりますよね。

高橋:はい。

小久保:そこから法則性を見いだしたりとかするわけで。我々も実験できたらいいんですけど、やっぱり、天文学で扱っているエネルギー範囲だとか質量だとか、時間とかっていうのはばく大で、実験室で再現できるようなものではないですね。

高橋:そうですね。

小久保:だから、あきらめていたっていうか、できないでいて、これまでは望遠鏡で見て、そしてあとは頭で考えてっていうんでやっていたんですけど、だんだん、コンピューターが速くなることによって、コンピューターの中に宇宙をつくり出すことができるようになった。

 それは具体的にはどういう意味かというと、コンピューターにプログラムするわけですけど、プログラムで宇宙の物理法則を教えてあげるんですね。そうすると、最初にこういう状況を設定すると、そのあと何が起きるかは全部、その計算機が物理法則にのっとって調べてくれる。やってくれるわけですね。シミュレーションって「模擬実験」という意味ですから、ほんと文字通り実験なんですね。いままで天文学ではできなかった実験を、実際のものを動かしたりとかそういうんじゃないんですけど、コンピューターの中で仮想的な宇宙をつくりだして、そこで、たとえば僕だったら、ちりから惑星ができるのを実際にやってみると。こういうことをしながら実験的に天文学をするっていうのが、そのシミュレーション天文学といわれる手法ですね。

高橋:具体的に、太陽系の惑星形成のシミュレーション天文学は、どういうふうにやるんですか?

小久保:いまからだいたい46億年ぐらい前に太陽が生まれて、それから惑星が生まれてきたと思っているわけですけど、おそらく太陽の周りに、当時は、惑星のもとになった円盤ですね、「原始太陽系円盤」っていうのがありました。これは、太陽に集まりきれなかった余った物質が、ちょうど円盤のように取り巻いて回っていたっていうふうに考えられていて。

高橋:それは、どこか別の星を見たら、そういう円盤が見つかったんですか?

小久保:はい、もう見つかっています。ただこれは最初は、理論的にそういうものがあればいいっていう、理論が最初に言ったんですね。理論で、こういうものがあれば、太陽系はできると。

高橋:いまの太陽系ができるためには、もとにはそういうのがあったはずだと。

小久保:ええ。これが最初に言われてから、そのあとに観測で、実際にそういうものがあるということが見えてきたっていう、理論的には大変かっこいい研究なわけです。

高橋:ああ、はい(笑い)。

小久保:そういう円盤があったとき、その円盤は太陽になり損なったものですから、太陽と同じものが入っている。それはつまりガスとちりですね。それが入ってるわけです。そのちりが、たとえば地球だったら、集まっていって、地球にまとまっていくというように考えられているんですね。でも、どういうふうにまとまっていくかっていうのは、実はいろんな段階があって、複雑な物理が関係していて難しいわけですが、これを今だったら、スーパーコンピューターを使ってその実験ができる。太陽の周りに昔の太陽系の円盤を用意して、その中で何が起きるかを再現できるんですね。

高橋:実験となると、やっぱりその円盤にどのくらいの量の物質があったかとか、その辺を自由に変えてやってみるわけですか?

小久保:はい。で、何が起きるかっていうのを見ていく。そうやって実験しながら、その中で法則性を見いだしていったりとか、それで理論化していくというようなことをするわけですね。

高橋:それで実際に、太陽系ができる過程っていうのをおつくりになったんですよね?

小久保:そうですね。シミュレーションの結果を基に、コンピューターグラフィックスでそれを映像化してまとめたものがあるので。

高橋:じゃあ、ちょっと見てみましょう。

小久保:はい。これがそうなんですけど。

高橋:真ん中が太陽ですね?

小久保:はい。46億年ぐらい前の太陽系だと思っていただきたいんですが、いまたくさん、小さい粒々がここに回ってるのが。

高橋:これ、ちりですね。

小久保:ええ。これは、ちりがある程度大きくなって、「微惑星」っていうんですけど、だいたい地球のところだと、1キロから数キロメートルぐらいの大きさになっている天体です。これ、実際の大きさで描くと見えないので(笑い)、大きく膨らまして描いています。

高橋:ああ。

小久保:これ、最初の状態から10万年ぐらいたっているんですけど、ところどころ大きいものが出来上がってきているのがある。こういうのを「原始惑星」と呼ぶんですが、微惑星が重力で集まって大きくなっていくところです。で、見て分かるように、ところどころに大きいのがあって、小さいのもいっぱい残ってるわけですね。

高橋:ええ。これ、みんな丸なんですけど、ほんとに丸なんですか?

小久保:だいたい丸だと思ってます。なぜかというと、ある程度大きくなると重力が強くなるので、重力が強い場合にいちばん安定な形は球なので、そうだと考えていますね。

高橋:ふーん。

小久保:で、こうやってこれ、最初の状態からだいたい100万年ぐらいたった段階なんですけど、こういう、原始惑星と呼ばれる大きめの天体がいくつか出来上がっていて、ちょうど地球のところだと、地球の10分の1の質量ぐらいのものが、実は10個ぐらい出来上がっています。

高橋:ふーん。

小久保:で、しばらくこの状態で安定なんですね。だいたい1000万年ぐらいこの状況で、何も変わらないですね。

高橋:あ、そうなんですか。

小久保:はい。で、だから、いきなり地球がすぐできるんではなくて、ここでまずひと休みというか。

高橋:へーー。

小久保:で、実はここには描いてはいないんですけど、周りにガスがまだあるんですね。でも、ガスは1000万年ぐらいでなくなるというふうに考えられていて、そのガスがなくなると、最終的に地球が出来上がってきます。

高橋:そのガスはどこへ行っちゃうんですか?

小久保:ガスは、太陽系から外に吹き飛ばされるのと、あと太陽に向かって落ちちゃう。

高橋:ふーん。

小久保:これはガスがなくなったときの、計算をしているものなんですけど、この赤っぽい色が着いた天体に注目してほしいんですが、これはもうすぐ衝突をします。

高橋:あれが地球のもとになるってことですか?

小久保:まあそうですね。まとまっていくひとつのもとになるんですけど。

高橋:なんか衝突したっぽいですね。

小久保:まだですね。

高橋:まだですか。

小久保:ええ。いまかすったっていうか。

高橋:あ、今、今(笑い)。

小久保:ええ、すれ違って。ギリギリすれ違っていて、それで次、ここですね。ここで……。もう少しですね(笑い)。

高橋:もう少し(笑い)。なかなか、ぶつからないもんなんですね(笑い)。

小久保:はい。この段階は、数百万年に1回しかぶつかんないんですよ。

高橋:へー。

小久保:これは、そのときを取りだしてるんですけど、こうやって。まだだ、おかしいですね(笑い)。

高橋:(笑い) 数百万年に1回。

小久保:はい。

高橋:さっき、1000万年、ずっと安定して回り続けると。

小久保:ええ。で、ガスがなくなると数百万年に1回、ああ、ですね、こういう感じで。

高橋:ああ、ぶつかった。

小久保:ええ、ここでぶつかりましたね。

高橋:ああ、はい。

小久保:で、このぶつかったときに、条件によってはこうやって合体しますし、そうじゃない場合はそのまままた離れていくというかはね返っていく場合もあるんですけど、この場合は合体したと。で、これはだから、今、言ったように、数百万年に1回しかぶつからないので。これ、1周すると1年ですから。地球、そうですよねえ。

高橋:それはおんなじなんですね?

小久保:ええ。

高橋:いまと変わんない。

小久保:なので、それずっと見ているの大変なんで(笑い)、早回しをします。で、時間を早回しにすると、こうワーッとなって線になります。

高橋:はい。

小久保:これ、実は軌道ですね。それぞれの天体の軌道。で、これ、1秒間にもう数百万年たってると。

高橋:へーー。

小久保:こうやってよく見ていくと丸が減っていきます。それは、天体がぶつかって大きくなって、数が減ってってるということですね。

高橋:でも全部、これ地球のもとになったものなんですね?

小久保:はい。地球型惑星のもとになったもの。で、どんどん計算が進んでいくと、数千万年から1億年とかいう時間をかけて、この計算だったら最終的に4つの惑星が出来上がっていて、これ以上はもう衝突は起きません。もう安定になりました。

高橋:4つっていうのは、水・金・地・火。

小久保:に相当するような。ちょうどそんなぐらいの惑星が出来上がってくると。

高橋:へ~~~。

小久保:これが今、考えられている地球型惑星の一応、標準的な形成のシナリオです。ちりがあって、それが最初、微惑星っていう小さい天体になって、それが、見たように、集まって原始惑星になる。それはしばらくそのまんまでいますけど、ガスがなくなったときに原始惑星はもう一度ぶつかり合って、最終的に地球にまとまっていくというふうに考えられてるわけですね。

高橋:こうやって映像で見ると、おもしろいですね、やっぱり(笑い)。

小久保:そうですね。なんかこう、まさに見てきたような感じなんですけど(笑い)。

高橋:じゃ、ちょっとここでコマーシャル入れます。

小久保:はい。

高橋:いったんコマーシャルです。

(CM)

高橋:「科学朝日」。本日は国立天文台准教授の小久保英一郎さんをお迎えして、宇宙のお話を伺っています。今、地球ができてくるまでの素晴らしい映像を見たんですけれども、シミュレーション天文学っていうのは、テーマはいろいろできるわけですよね。

小久保:はい。

高橋:今のは太陽系のできるまでをシミュレーションで解き明かしたということですけれども、ほかにはどんなご研究をされているんですか?

小久保:現在いろいろやっているんですが、ひとつはやっぱり、その地球型惑星の形成の最後の段階とか、それは月の形成も含めてですね。

高橋:ああ、そうですね。

小久保:そういうこともやっていますし、あと木星とか土星ですね。これが実は、太陽系ではとても重要な天体で、木星と土星の質量と軌道、位置ですね。それが太陽系の形を決めたっていっていいぐらい重要なんですね。この2つの惑星がどうやってできたかっていうことは、太陽系の構造の起源を知ることになるんです。

高橋:それ、地球とどっちが先にできたんですか?

小久保:これも実は分からないんですよ。

高橋:分からないんですか。

小久保:ええ。最初は、地球のほうが先にできるんだろうっていうふうに考えてたりしたんですけど、木星が最初にできるっていう可能性も実はあって。そういうことも含めて、今、研究が自分も含めていろいろ行われているところです。

高橋:そうなんですね。

小久保:ほかにもいろいろあるんですけど、最近おもしろいのは土星で。なぜかというと、土星に「カッシーニ」っていうNASA/ESAが上げた探査機が、今、行っていまして、土星の周りを周回していて、土星のリング、環ですね、そのすごい詳細な観測が行われています。それでいろんなおもしろいことが分かってきていて。で、それをシミュレーションをして、いったいなんで土星の環がああいう形しているのかとか、そういうことを調べようっていう研究もやっています。

高橋:あの環っていうのも、ちりなんでしたっけ。

小久保:環は、ちりというか、氷の粒。だいたい大きさが、典型的には1センチから1メートルぐらい。それがたーくさんあって、で、ある規則にのっとって並んでいるので、ああいうきれいなしま模様が見えていると。

高橋:全部、氷なんですか? あれ。

小久保:基本的に氷の粒だと思っていますね、今。

高橋:へー。

小久保:ただ、まだ見たことはないんですよ、直接。だけど、観測的にはそうされてますね。

高橋:氷ってなんかありふれていて、もうちょっと不思議なものが(笑い)、あるようなイメージがありましたけどね、土星の環ってね。

小久保:ええ。

高橋:それでシミュレーションで、何が分かるんですか?

小久保:実はそのカッシーニの観測で、この図を見ていただきたいんですけど、「プロペラ」と呼ばれる構造が見えてきていて。これは、皆さん、土星の環っていうとしましま模様、頭に思い浮かべますけど、その中、ずーっと近寄っていって、非常に小さい範囲を見ています。たとえばこれ、数キロメートルぐらいの幅なんです、ここが。

高橋:はーん、ええ。

小久保:で、ここに1個、白い。

高橋:はい、ありますねえ。

小久保:で、こっち側にも白の。

高橋:はい、ありますねえ。

小久保:これがカッシーニが撮った写真なんですけど、これが実はどういう解釈かっていうと、次の図を見てほしいんですけど、こういうふうに、さっき見た白いのがこことここですね。

高橋:ああ、真ん中に。

小久保:小さな小衛星、「ムーンレット(moonlet)」っていうんですけど、があって、この小衛星が、周りにあるリングの粒々、いっばいここにあるわけですけど。

高橋:それは氷なんですね?

小久保:氷の粒々が。

高橋:はい。

小久保:それを、自分の重力で引っぱって軌道を変えることによって、こういう形ができるんではないかというふうに考えられているんですね。

高橋:それは穴なんですか?

小久保:穴ですね、これは。

高橋:氷がいない部分っていうことですね。

小久保:はい。粒々がなくなっている部分ですね。

 実際それを計算してみたのがあって、ちょっとそれを出していただきたいんですけど、はい、これがそうなんですね。これがシミュレーション結果を絵にしたものです。これは、共同研究者の道越(みちこし)さんがやってくれた計算で、ここに衛星がありますね。

高橋:はい。

小久保:で、こことここに穴が開いているのが分かりますね。

高橋:おお~。

小久保:これ、おもしろいのは、穴も開いてますけど、それ以外にも、なんか波波の構造も見えますよね、小さい。

高橋:はいはい。

小久保:こういうふうに、実は、こういう小さい波波の中、しましまの中に、こういうプロペラができていると。どういう条件でこういうプロペラができるかっていうことを、初めてこういう実験をすることによって明らかにしたという、そういう研究です、これは。

高橋:この真ん中の微惑星は見えて……あ、微衛星か、は……

小久保:見えないんです。

高橋:見えないんですか?

小久保:見えないんですよ。

高橋:このプロペラだけ見えて。

小久保:はい。で、おもしろいのは、だから、プロペラからこれの大きさとかを推測しようとしてるわけです。

高橋:なるほど。で、プロペラはいくつかあるんですか?

小久保:はい。もうたくさん見つかって。何十個ともう見つかっています。

高橋:あ、そうなんですか。

小久保:ええ。

高橋さん:へーー。

小久保:形がなかなかこう、かわいらしいっていうかおもしろいですよね。

高橋:ええ、ええ。

小久保:で、すごい興味を持って(笑い)、これなら自分たちでできるんじゃないかと思ってシミュレーションをしてみた。もうちょっと大きい図があるんで、ちょっと見ていただいて。もうこんな感じで、これ、百万個とか石の粒が。あ、すいません、氷の粒があって。

高橋:ええ、ええ。

小久保:そこに衛星を置いて。これ、全体としては土星の周りを回ってるわけですけど。で、どういうことが起きるかっていう実験ですから、この衛星の、小衛星ですね、の質量を変えてみたり、周りにある粒子の量を変えてみたりとかして、どういう条件だったらこういうプロペラができるかっていうことを明らかにしたんです。

高橋:なるほど。

小久保:この結果を使うと、プロペラの大きさから、小衛星の重さもそうですし、この周りにどのくらい粒子があるかっていうことも分かるわけです。我々のこういう成果を使って、カッシーニの探査の結果とかを使うと、土星の環がどうなっているのかっていうのが、より分かるんじゃないかと期待しています。

 これは、もうちょっと違う見方をして、斜め上から見るときっとこんな感じになるだろうというふうに。

高橋:これはほんとに見てきたみたいで(笑い)。

小久保:ええ。僕、実際、「太陽系で何、見たいですか」って聞かれると、土星の環に行きたいですね。

高橋:ええー。

小久保:やっぱり、1個の粒が1メーター。この計算だと1メーターぐらいの大きさで、そういうのが、こんなふうにいっぱい並んでるのをこうやって見たら、とっても楽しいんじゃないかと(笑い)、思っているんですけど。これはここに衛星がいて。

高橋:その衛星の形がちょっとゆがんでますけど、こんな形なんですか?

小久保:そうですね。

高橋:え、丸じゃないの?

小久保:理論的にはそう考えられていて。ちょうど、こっちだと、こっち側に土星があるんですけど、土星側のほうと土星の逆側に、このリングの粒子が集まってきて、こっち側の膨らんだ、何て言うんですか、レモン型みたいな感じになっていて、これは理論的にこうなるというふうに、実はけっこう前から予測されている。

 実際に、この衛星でじゃなくて、土星の衛星でカッシーニが写真を撮っていて、こういうレモンの形をしてるのが、もう見つかっています。確かめられていますね。だからこういう衛星は、実は球じゃなくて、レモンっぽい。

高橋:レモン型。

小久保:ええ。

高橋:衛星は岩石でできているんですか? やっぱり氷でできているんですか?

小久保:たぶん、基本的には氷成分が多いと思っていますね。それ、まだよく分からないとこですね。

高橋:これ、だんだん成長したりするんですか?

小久保:実はしなくて。なぜかというと、惑星の環っていうのは、惑星に対して非常に近いところにあって。で、衛星って遠くにあるんですね。

高橋:はあ。

小久保:で、なんでかっていうと、惑星に近いと、惑星の重力のほうが強すぎてしまって、簡単に言うとですね。自分たちの粒々同士の重力でくっつこうとするんですけど、土星の重力が強くて、くっついていられなくて、すぐにまたバラバラにされちゃうんですね。

高橋:ふんふん。

小久保:なので、土星の環がある理由はそれで、いくら待っても、この土星の環からは衛星は集まってこないんですよ。

高橋:へー。

小久保:衛星が集まるためには、土星から離れないといけない。で、ちゃんと離れたところには衛星があるんですね。

高橋:じゃこれは、この大きさのまんま、永遠に周っている。

小久保:基本的には大きさはあんまり変わらないと思いますね。

高橋:おもしろいですね、やっぱり。

小久保:そうですね。

高橋:こういうことがコンピューターの中で分かってしまう。

小久保:っていうかやっぱり、実際やっていると、ほんとにおもしろくて、たとえば、予期せぬ結果とか出たりするときがあるんですよ。そういうときはもう、ワクワクしておもしろいですね。

高橋:この場合も、プロペラ構造があるって分かったときに、このシミュレーションをやってみようって思われたわけですか?

小久保:最初の動機は実はもっと変わっています。最初に小衛星の観測があったんです。それはどうやって見たかっていうと、これは特殊な見方なんですが、太陽がリングに対して真横から差したときがあって、そのときに、この衛星の影が惑星のリングに落ちているっていう観測があって、その衛星が見つかったんです。で、その衛星は、これまでの理論だったらプロペラができていいぐらい大きな衛星なのにプロペラがないっていう、驚きの観測があったんですね。

高橋:ええ。

小久保:それを僕が、イギリスに滞在してるときにその成果を聞いて、おかしいと。プロペラができない。なんでかなって考えたですね。そのときに、でももしかしたらプロペラって、この周りのリングの粒子がたくさんありすぎると、壊されてしまうんじゃないかと。

高橋:ああ~~。

小久保:だから、実はプロペラができる条件っていうのは、周りにどのぐらいのものがあるかとかで決まるんじゃないかと。それは明らかにできるだろうということで、プロペラができる・できないの条件をはっきりさせた。

高橋:シミュレーションでやってみようと。

小久保:ええ。それが始まりだったですね。

高橋:分かりました。まだまだ、お話をたくさん伺いたいですけれども、そろそろ時間が来たようです。

小久保:はい。

高橋:今後も、どんどん新しいことを研究なさって、素晴らしい成果を出していただきたいと思います。

小久保:はい、頑張りたいと思います。

高橋:今日はどうもありがとうございます。

小久保:はい、ありがとうございます。

高橋:「科学朝日」、本日はこの辺で失礼致します。来週もどうぞよろしくお願いします。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。