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「影響は認められない」をどう考えるか――放射線のリスク論

長瀧重信

長瀧重信 長崎大学名誉教授(放射線の健康影響)

 放射線の人体に対する影響の研究のために、人体を対象にした実験は不可能である。だからと言って、動物実験や試験管内の実験から人体への影響を予測しようにも、そこには大きなギャップがある。したがって、この研究では、過去の経験や情報をもとにした放射線の影響の分析が中心となる。

 放射線の影響には、「急性」と「晩発」がある。急性は、被曝後数週間以内に現れる影響であり、晩発は、急性影響の後、長期にわたって発生する影響である。原爆被爆者が、今でも晩発影響に悩んでいるのはその典型である。原発事故では、原発内部の人に対しては急性影響が心配されるが、周辺住民に対しては晩発影響について考えることが多い。

 晩発影響が、科学的にどこまでわかっているかを議論するとき、まず前提とすべきは、個人をいくら調べても放射線の影響かどうかわからない、ということである。たとえば、目の前の一人の肺がんの患者さんをいくら調べても、その原因が放射線かどうかはわからない。

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筆者

長瀧重信

長瀧重信(ながたき・しげのぶ) 長崎大学名誉教授(放射線の健康影響)

長崎大学名誉教授。1932年生まれ。東京大学医学部卒業。東大大学院、米ハーバード大学などで学んだ後、東大医学部付属病院外来医長などを経て、長崎大学医学部教授(内科学第一教室)、放射線影響研究所理事長を務めた。長崎大学時代に被爆者の治療、調査にあたった経験を踏まえて、旧ソ連チェルノブイリ原発事故がもたらした健康被害の調査活動や東海村JCO臨界事故周辺住民の健康管理にかかわった。 【2016年11月12日、逝去】

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