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【科学朝日】今年の夏の電力不足を乗り越えるための緊急節電とは(collaborate with 朝日ニュースター、6月9日放送)

朝日ニュースター

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 朝日グループのジャーナリズムTV「朝日ニュースター」は、通信衛星などを利用して24時間放送しているテレビチャンネルで、ケーブルテレビ局やスカパー!などを通じて有料視聴することができます。4月から始まった新番組「科学朝日」は、高橋真理子・朝日新聞編集委員がレギュラー出演する科学トーク番組です。WEBRONZAでは、番組内容をスペシャル記事としてテキスト化してお届けします。

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ゲスト 東京大学生産技術研究所エネルギー工学連携研究センター准教授 岩船由美子

拡大岩船由美子さん

高橋:科学の最先端にひたる「科学朝日」。今回は、これから夏に向けてぜひ知っていただきたいエネルギーの話です。今回のテーマは「今年の夏の電力不足を乗り越えるための緊急節電とは」。

東日本大震災の影響で電力の供給不足が起こり、3月には計画停電も実施されました。この計画停電で改めて電気の大切さとエネルギーについて考えた方も多いと思います。これから夏に向け、電力消費のピークになりますが、私たちの消費に耐えうる供給力はあるとは思えません。

本日は、生活基盤であるエネルギーをもう一度見直すとともに、夏に向けてすべき節電について取り上げていきたいと思います。そして、番組後半では、エコエネルギー、自然エネルギーについても取り上げてまいりたいと思います。

本日のゲストは、東京大学生産技術研究所エネルギー工学連携研究センター准教授の岩船由美子さんです。よろしくお願いいたします。

岩船:よろしくお願いいたします。

高橋:この難しい名前の連携研究センターですが、どんな研究をする所なんでしょうか。

岩船:はい。このエネルギー工学連携研究センターは、東大の中の工学系のエネルギー関連の研究をするような研究者が集まって、幅広く長期にわたって、この国のエネルギーをどう考えていけばいいかとか、エネルギー教育をどうしていくだとか、そういったことを考えるための組織です。

高橋:その中で、岩船さんご自身はどういうことをご研究なさっているのですか。

岩船:私はどちらかというと、エネルギーの需要側の仕組みといいますか、例えば家庭や業務用の建物でどういうふうにエネルギーが使われているか、そして、そこで省エネはどこまでできるのかとか、さらに、供給側と連携してうまく需要をコントロールすることで、もっと、何て言いますか、低炭素で、資源も節約できるようなエネルギー供給ができないかと、そういったことを研究しています。

高橋:はい。それでは、CMを挟んで岩船さんに伺います。いったんCMです。

(CM)

高橋:「科学朝日」。本日のゲストはこの方、東京大学生産技術研究所エネルギー工学連携研究センター准教授の岩船由美子さんです。岩船さん、改めてよろしくお願いいたします。

岩船:よろしくお願いいたします。

高橋:この夏、電力不足になって大変だっていうことはもう皆さんよくご承知だと思うんですけれども、つい先日、5月13日に政府が夏の節電目標を15%ということを改めて打ちだました。岩船さん、この15%というのはどう受け止めていらっしゃいますか。

岩船:当初の目標はもっと高かったと思いますので、それに比べれば多少緩和されたかなとは思うんですけれども、それでもやはり、考えられるピークの、例えば東京電力で6000万kWに対してまだまだ、5,400万弱というふうに、まだ足りないんですね、全然。そこで一律15%というような目標が決められたわけですけれども、産業だけじゃなくて、小口需要家、業務用の需要家さんですとか、一般家庭にも求められたということで、非常に厳しい目標だと私は受け止めています。

高橋:厳しいということは、もしかしたらうまくいかないかもしれない?

岩船:そうですね。大口需要家はある程度法律で規制できるんですけれども、小口需要家ですとか家庭の取り組みに関しては、規制のしようがないですから、そこでどこまで本当に実施してもらえるのか。節電を実施してもらえるのかによっては、例えば、嫌な話ですけれども、また計画停電とか、されないとも限らない状況ではないかというふうに思います。

高橋:計画停電はやっぱり、本当に皆さん迷惑を被りましたよね。

岩船:はい。

高橋:特に、信号が動かなくなって死亡事故が起きたりとか、本当に被害と言っていいようなものがでたと思うんですけれども、あれはやむを得なかったんでしょうか。

岩船:そうですね、あの状況では。かなり厳しい状況でしたから、もし計画停電をしなければ、本当の大規模停電が起こる可能性があったわけですから、あれはあれで仕方なかった措置だとは思うんですけれども。

高橋:そうですか。

岩船:ただやはり、あの被害を考えると、生活にも産業部門にも大きな、大変な被害を与えましたから、なるべくあれは避けたいということで、今から前もってなるべく準備していって、この夏は計画停電無しで乗り切りたいというのが、政府もそう思っていますし、我々も思っていることだと思います。

高橋:事前の準備が非常に大事であると。

岩船:はい。

高橋:要するに節電するしかないということですね、計画停電を防ぐには。

岩船:そうですね、はい。

高橋:じゃあ、具体的に「夏の電力使用量っていうのはどんなふうになっているのか」というのをちょっとご解説いただけるといいと思うんですが。

岩船:はい。

拡大

高橋:これは、ちょっと見にくいんですけれども、えーと……

岩船:これは去年の4月から今年の3月までのピーク需要の推移を示した画です。

高橋:はい。

岩船:これは東京電力管内ですけれども、去年はものすごく暑かったですから、去年の夏は6,000万kWを超えた需要が発生していたと。そして、夏が過ぎて中間期は下がってきて、また冬は暖房需要などがあるのでまた上がると。

高橋:はい。

岩船:ここでちょうど震災が起こってガクンと需要が下がったと、こういうようにピーク需要というのは推移しているということです。

高橋:すると、やっぱり暑い時に電力はたくさん使われると?

岩船:そうですね。

高橋:そういうことなんですね。で、気温と電力の関係をお調べになったんですか。

拡大

岩船:そうですね。これは東京の最高気温が横軸で、縦軸は東京電力の最大電力です。

高橋:はい。

岩船:その関係をプロットしますとこういうような画になります。この辺りは中間期で春ですとか秋、あまり空調の需要がない時期です。

高橋:今ですね、今。

岩船:はい、今ですね。ちょうど今、この辺だと大体4,000万ぐらい。それが冬になると、気温が下がるごとにだんだん需要が上がる。また同様に、夏は傾きがもっと大きくて、気温が1℃上がると、最高気温が1℃上がると、200万kWぐらいですか、需要が上がると、最大需要が上がるというような推計がされます。ちょうどこう、線形に増加していることがわかるかと思います。

高橋:ちょうど直線になるんですね。

岩船:はい。

高橋:こんなにきれいに気温と消費電力っていうのは比例する関係にあるんですね。

岩船:そうですね、はい。ですので、今年の夏も暑くなれば非常にここに近づいてしまうということで、非常に危険だということです。

高橋:そうすると、でも暑い時はエアコンを使わないと辛いんですけれども、どうしたらいいんでしょうかね。

岩船:もちろんこれで、暑いのを我慢して、空調を使わないで熱中症とかいう話も去年も結構ありましたし、それだけはどうしても避けなければいけないので、いろんな知恵を出し合って工夫していくことが重要なんではないかなと思います。

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高橋:ええ、えぇ。で、節電すべき量の目安を知るためのグラフがあるんでしょうか。次のグラフは、これは?

岩船:これもさっきのグラフとかなり似ているものなんですけれども、これはこの青い線が去年の最大電力の推移を示した画です。

高橋:はい。

岩船:赤が今年です。これ3月~9月の終わりまでとっています。このブルーが去年の最大気温の推移で、東京の。こちらのオレンジが今年の気温の推移と。今、ちょうど5月の、ちょっと前ですけれども、10日ぐらいまでをとっている。

高橋:そこまでのデータがここに入っているということですね。

岩船:はい。で、震災後、ずいぶんこの節電意識は進んだと思うんですよね。

高橋:そうですね。

岩船:いろんな所も明かりを落とされているということで、去年に比べてこれだけのギャップで今のところ推移してきていると。ところが、ここから暑くなった時に皆さんどこまで我慢できるかっていうのは未知数のところもありまして、一番近々のところではかなり去年に近づいているっていうような話もありますので、ここをどう、この差を、大体700万ぐらいあるんですけれども、ここを保ったままどうこの夏を迎えられるかというのも一つ、重要かなと思います。

高橋:すると、今、私たちもずいぶん節電の意識をしていますもんですから、政府の目標15%って言われた時に「今からさらに15%減らさなきゃいけないのかなぁ」っていうふうに、そんなの難しいと思ったんですけれども、そこは?

岩船:もちろん15%というのはあくまでこの6,000万を基準にしたときの15%ということなんで、大体そこから900万ぐらいですか。今、この緑は夏季の供給力の見込み。4月半ばぐらいに発表されたものなんで、もう少し上がってきていますから、ここから15%ということは5,100万kWぐらいまで、そこまで下げれば供給力を下回る需要になるでしょうと、そういうことです。

高橋:今、去年と比べると、けっこう節電しているので……

岩船:そうですね。

高橋:このペースでいけばいいということですか。

岩船:このペースでいければ大丈夫じゃないかと思うんですけれども、やはり、夏のエアコンというのはどうしても欠かせないので、そこが難しいところではあります。

高橋:そうなんですね。で、どれだけ実際に電力が使われているかっていうのを政府のほうも発表しているんですね。

拡大

岩船:はい。

高橋:5月13日に資源エネルギー庁が「電力需要構造推計」。これまた難しい名前ですけれども、こういうグラフは何を示しているんですか。

岩船:これは、夏季の一番暑い日、さっき言いました、最大6,000万kWのときの東京電力の需要の内訳を示しています。この大口・小口というのは、契約の形態によるんですけれども、すごくたくさん電力を使っている産業がこの大口産業。

高橋:はい。

岩船:産業っていいますのは、例えば工場なんかです。そして、小口はもう少し小さい工場だとか、この濃い青だと。プラス、この大口業務というのは、たくさん電力を使う、工場じゃない、例えばサービス業ですとか、大きい会社ですね。そういった所が入る。小口はもっと小さい、店舗ですとか、パチンコ屋さんですとか。パチンコ屋さんはこっちのほうにもちょっと入ってくるんですけれども……

高橋:大口のほうに?

岩船:コンビニエンスストアですとか大きい居酒屋さんですとか、そういった所がこの小口に入ってくると。

高橋:小口に、はい。

岩船:そして、最後がこの家庭部門ということになります。で、1日のうちで一番ピークを迎えるのが14時ぐらいといわれていますから、そこの内訳がこのように示されていると。大体、家庭が1,800万kW、業務用が2,500万、産業が1,700万ということで、私はもう少し家庭は小さいかなという気もしてたんですけれども、大体こんな比率ですということです。

高橋:こういうデータはいままで出てなかったんですか。

岩船:そうですね、いろんなシンクタンクが推計はしたりはしているんですけれども、公式な数字としては初めてここで公開されたものだと思います。家庭の形というのは、いくつか実測した事例などはあるんですけれども、電力会社さんでも実際に、時間ごとのプロファイルは把握していないんですね。なので、全体はわかりますし、大口の形はわかるんですけれども、それ以外の所の内訳となると、実は推計するのがとても難しいと、いうものなんです。

高橋:そうすると、いままで推計していたのは、「ある家庭を選んで、そこでちゃんと測って」みたいな形でやっていたんですか。

岩船:2002~2003年ごろに400軒ぐらい、関東圏と阪神圏を実測したりしている事例もありますので、そういったものの形を見ると大体、家庭は昼間に比べて夕方の需要が大きくなります。そういうようなデータは得られていますので、そういったものを積み重ねてこのような推計がされたんだと思います。

高橋:家庭の電力消費量が岩船さんが試算されたものよりも多かったっておっしゃいましたが、その要因は何か思い当たる所があるんですか。

岩船:いや、それはもう推計の全体がちょっと違ったとかだとは思うんですけれども、例えば、家に居ない世帯の比率を何%とみるかとか、昼間ですね。

高橋:ほう。

岩船:昼間家に居る世帯の割合、私は大体4割とみているんですけれども、そこが違うとか、そういったことの積み重ねで若干数字が違ってきた可能性はあるかなと。

高橋:居るほうを多くみているわけですね、こっちのほうが?

岩船:いや、そこはそうとも言えないんですけれども。

高橋:そうとも言えない?

岩船:そういう想定も。いろんな想定の違いが重なって違ったのかなと思います。

高橋:はい。さて、推計はどうあれ、夏、暑い時間帯に電気を使いすぎないようにしなければいけないと、それはもう間違いのないことなんですね。

岩船:はい、そうですね。

高橋:で、「どのような節電をすべきか」そういうことも、具体的な提言をいろいろされているんですよね。

岩船:ホームページなどを通じて、いろいろ推計しまして、データを公開したりしております。

高橋:一番効果があるのは何なんでしょうか。

岩船:効果があるのはやはり、実際に使用されているものが何かといいますと、やはり大きいのはエアコンですね、空調。あとは業務用の照明ですとか、そういったものになります。家庭は実際、働きに行っている人が多いですから、全部の家がここ、居るわけじゃないですよね。

高橋:はい。

岩船:なので、居る家が、どのぐらい空調を少し控えめにしてもらうかとか、そういったところがやっぱり鍵になるかなと思います。

高橋:そういえば、居る家と不在の家との電力消費の様子も資源エネルギー庁は発表したんですよね。

拡大

岩船:はい。

高橋:そのグラフはありますか。

岩船:こちらですか。

高橋:これは在宅の場合ですね。

岩船:はい。これは、昼間家に居る世帯の電力使用量を推計したもので、やはりこのエアコンが……

高橋:青いのがエアコンですね。

岩船:はい。半分以上ですね。この赤が冷蔵庫。で、居る家はテレビも観ますし、灯りもつけている家もあるでしょうと。あとは待機とかその他なんで、そんな感じです。

高橋:はい。

岩船:やっぱりエアコンが一番大きいですね。

高橋:そうですねぇ、そうですね。会社や学校に行って誰も居ないという家庭だと、もうずっと消費電力は少ないですね。

拡大

岩船:少ないですね。この赤が冷蔵庫で、あとはそれ以外なんですけれども。

高橋:はい。

岩船:実はこの青い需要がちょっと変わっているところなんですけど、ここは、私はなかなか推計しきれなかった所なんですけれど、つまり、家に居なくてもエアコンをつけているお宅が結構あるということです。

高橋:つけっぱなしで家を留守にしている。

岩船:そうです。単身世帯でもペットを飼ったりしているお宅とかもありますから、そういった場合にはやっぱり、ペットのためのエアコンが、例年、どうしても必要だということで、この青が発生していると。

高橋:なるほど。

岩船:実はこれも結構、一つの対策ポイントかもしれないなというふうに私も思っております。

高橋:ああ。そこは、消してくれとはなかなか言えないですね。

岩船:言えないですけれど、例えば窓の隙間を少し開けてロックするようなものとか、防犯のものとかも売ってますし、あとは、タイルを敷き詰めておくと結構冷たいのでペットがそこで涼むとか、ペットボトルを凍らせて周りに置いておくとか、いろんな工夫の仕方があるらしくて、そういう情報がネット上でもいろいろやり取りされているのを私、見たことがあります。

ですので、そういう知恵を使ってなるべくこの青を、いままで例えば25~26℃でやっていた人が、28℃にしてもらうとかでもずいぶん違うと思いますので、少しでも減らしてもらえるように、そういう工夫もぜひしていただきたいなぁというふうに思います。

高橋:それはペット愛好家の間では広まっているんでしょうか、そういう工夫の仕方。

岩船:どのくらい広まっているかわからないですけれど、やはり皆さん罪悪感はありますよね、きっと。なので、工夫の方法をもう少し皆さんで知恵を出し合うのも一つ、いいんではないかなぁと思います。

高橋:これで見ると、留守の時、冷蔵庫もかなりの率を占めますね。

岩船:はい。夏はどうしても周りの温度が高くなると冷蔵庫の消費電力も大きくなるんですね。冬に比べて倍ぐらいになる場合もあるんです。なので、夏の設定温度を少し控えめするっていうのは非常に効果が高くて、それでもやっぱり、10%ぐらいとかは減らせるので、ぜひ、夏はキンキンに冷やしたのがきっと皆さんお好きだと思うんですけれども、今年の夏は「強」ではなくて「中」でちょっと我慢してもらう。というのがぜひお願いしたいところかなと思います。

高橋:そうですねぇ。

岩船:そうすると、これはすべての家でできることなので、居ない家でも節電できるポイントなんで、冷蔵庫の設定変更っていうのは非常に大きいかと思います。

高橋:それはもうすぐにでもできることですね。

岩船:そうですね。

高橋:一番簡単ですね。それで別に、たぶん困ることはないですよね。

岩船:そうです…、ただ、ちょっとビールが温いとか不満を持つ人は、家に帰ったらすぐ少し冷凍庫に入れておくとか、そういうので。

高橋:飲む直前に冷凍庫に。

岩船:少し入れてもらうとか、そういうので。私も実はそうやっているんですけれど、そんな工夫もあるかなと思います。

高橋:はい。なるほどね。すると、家庭内でできることがいろいろありますけれども、昨今、ちょっと話題になったのは自動販売機です。

岩船:はい。

高橋:自販機がものすごくエネルギーをくっているからけしからんというようなことも聞こえてきましたけれども、ただ一方で、あれはあれでライフラインになっていると、今や日本では。役に立っているんだからっていう意見も出ていました。その辺は、岩船さんはどうお考えで?

岩船:難しいですよね。それで生計を立てている人もいるんだって言われると何も言えなくなってしまうんですけれども、でもやっぱり台数は、東京都内とかは多すぎるなっていうのは実感ですよね。

高橋:えぇ。

岩船:半分にしてもいいかなぁっていうのは正直言ったら思いますけれども、ただ自販機業界さんも、この騒ぎが起こる前から、すごく夏の昼間のピークカットというのは気をつけてらして、ほとんど去年まででも使ってなかったらしいんですよ、1~4時ぐらいまでの間っていうのは。

高橋:ああ、そうなんですか。

岩船:その前にすごくキンキンに冷やしておいて、その間は冷やすのをやめるとか、そういう工夫はすごくされているらしいんです。なので、そんなに悪玉にすることもなかったような気もするんですけれども、この夏はちょっと、非常事態ということで仕方ないかなと。

高橋:仕方ない?

岩船:はい。

高橋:仕方ないっていうのは半分ぐらいやめてもらう?

岩船:半分といいますか、そうです。照明もどんどん落としたりしていますし、自販機業界さんも、いままでは1~4時ぐらいまでだったのを、もっと、朝から夜まで。節電時間を長くするような宣言をされましたし、そこはもう少し頑張っていただかないとこの夏はいけないかなと思います。

高橋:それでもキンキンに冷やしておけば冷たい状態で出てくるんですね、買うときには?

岩船:そう、去年まではそうでした。ただ今回は、もうちょっと節電の時間が長くなるので、もう少しいろんな工夫をされてくるとは思うんですけれども。台数自体を減らすとかいうことにもきっと取り組まれるんではないかなと思います。

高橋:あとは具体的にどんな変化がありそうですか? 家庭以外で、そうやって目に見える形で節電のために変わってくるっていうようなもの……

岩船:家庭以外で?

高橋:えぇ。

岩船:いろんな店舗でも今はもう照明もずいぶん落としていますよね。そして、空調もたぶん控えめになってくるでしょう。あとは、公的な機関ですか、市役所ですとかそういった所でも、平日ではなくて、土・日にオープンするっていうような動きも最近でてきていました。

高橋:でてきましたね。

岩船:あれはとても、やっぱり土・日は、平日6,000万に対して5,000万ぐらいで、ピークずいぶん低いんです。やはり工場が動いてないとか、いろんなオフィスが休みですから。

高橋:はい。

岩船:ですから、土・日にシフトするっていうのはかなり有効なわけです。庁舎がそれをやれば、そこについてくる業者さんもあるということで、なかなか働き方の面で難しいことはあるんですけれども、やはりそういう公的な所が率先してやるのは重要かなと思います。ただ、それで全部閉めてしまうとかではなくて、例えば昼間、暑い昼間に何かわざわざイベントをやってもっと人を集めて、家の空調を止めさせるような工夫も公的な立場ならぜひやってほしいなと。

高橋:なるほど。

岩船:もちろんそこをクローズすればその市役所自体の消費電力は下がるんですけれど、それよりも、もっと街全体とか区全体を考えて、むしろ、人をどうやったら集められるかとか、実はそっちのほうで頑張ってくれないかなっていうのは少し期待しています。

高橋:それは普通の人はあまり思いつかないですね。むしろ、公会堂みたいな所に集めて、そこの電力はくうけれども、各家庭でエアコンを使うよりはトータルとしてみたら電力が少なくて済むと?

岩船:そうですね、はい。例えば、区の施設じゃなくても、デパートに行くとかでもいいと思うんです。結構、奥さん方で工夫されている方がいらっしゃるんですね。昼間、小さいお子さんと2人でいるなら、自分の家で空調をつけるより、デパートへ行って涼んだほうがいいとか、そういうのも一つだと思うんですよね、どうせ空調している所なんで。なので、なにも狭い範囲で考えないで、もっと全体でどうやったら人を集められるとか、むしろそっちのほうに工夫してもらうってのもありなんじゃないかなぁと思います。

高橋:そもそも、昔は家に空調は無かったんですよ。エアコンが無くて夏は図書館に行くっていうのが普通の暮らしだったのに……

岩船先生:そうです。

高橋:いつの間にかそうじゃなくなっちゃって。

岩船:あとは、比較的元気なお年寄りだったら、そうやって集めてみんなで楽しいことをやりながら涼んでもらうほうが、熱中症の心配もないですし、いいんじゃないかなぁと、ちょっと思ったりするんです。

高橋:そうですね。単に節約、節約っていうことばかり考えるんじゃなくて、楽しいことをやって人を集めて、それによって結果的に節約になると。そういう、なんていうんですかね、大きな考え方を、お役所とか区役所とかがしてくれるのかっていうのがちょっと心配ですけど、どうなんでしょうね。

岩船:でも、結構いろんな所で言ったりはしているんで。ただ、デパートとかでも、そういう発想があまりなかったというようなことも聞きましたから、ぜひそういう方向で、いかに自分の所で節電するかばっかりではなくって、もっと夏にバンバンイベントをやって、平日にやって、人を集めようっていうような発想の転換をぜひしていただきたいなぁと思います。

高橋:なるほど、それが緊急節電という。

岩船:そうですね。あまり辛いことばっかりでは続かないかなぁとも思いますので楽しく節電できる方法も、いろんな工夫ができるんじゃないかなと思います。

高橋:それは本当に大事なことですよね。今、節電、節電と言うと、縮む方向にばっかり皆さん発想がいっちゃうし、「これ以上どうすんの?」っていうような。もちろんおっしゃったように罪悪感もあって「何とかしなくっちゃ」「何とか協力できることがあればしよう」っていう想いはどなたもお持ちだと思うんですけれども、といって、我慢する方向ばっかりになるのもちょっと辛いなぁというところがありますからね。

岩船:そうですね。本当にそうだと思います。

高橋:「緊急節電」っていうホームページ、この3月31日の後にお作りになったのですね。

岩船:そうです、はい。

高橋:その反響とかはどうなんでしょうか。

岩船:えぇ、いろんな所からいろんなお問い合わせはきますし、いろんな質問もいただいて、その都度お答えしたりはしています。あとは、動画サイトなどもあって、あまり数は集まってないんですけれども、節電の工夫みたいなものを流す。そういうものを撮った動画を集めて、☆を付けてあげるとか、そういうふうなこともちょっとやったりしています。

高橋:それはほかの方たちが作った動画なんですね。

岩船:のもありますし、自分たちの所が作ったようなのもありますし。

高橋:そうですか。

岩船:まぁ、「YouTube」にアップして皆さんに見てもらえるように、そんな工夫はしたりしています。ただやっぱり、ホームページを見る人っていうのはすごく限定された人っていうふうに言えなくもないんで、なかなか、一般の方向けにどうやってアピールしていくかってのは、また一つ、考えなくてはいけないなということで、なるべくこういったテレビですとか、そういった機会にお話しさせていただければなぁとは思っております。

高橋:動画、ちょっと興味がありますけれども、どんなものをお作りになっているんですか。

岩船:なかなかいい動画もあって、結構、「セットトップボックス」っていって、今、地デジ化するじゃないですか。それのためには、普通のテレビで観るためにはチューナーが必要ですと。それはケーブルテレビのチューナーだったんですけれど、結構待機電力が大きくて、電源切っても温かいんですよ。そうすると、そこに猫が乗ってて、なかなか猫が降りないみたいな。それはそれだけ電気を消費していますという証拠なわけですよね。だから、動画で撮るとすごくわかりやすい画になっていて、「これはすばらしい出来だなぁ」というふうに思っていたんです。

高橋:そうすると、そこが電気を使っているということはわかりますけれども、それをどうしたらいいのかっていう……

岩船:それはもちろん、タップを抜けば完全にそれは無くなるんで、猫も降りますと、そういうことです。

高橋:なるほど! テレビを観ない時はそこのコンセントを抜きましょうっていうことですね。

岩船:今、スイッチ付きのタップも売っていますから、そういったものを使えばいいわけですけれど。

高橋:なるほど。

岩船:テレビとかはかなり節電進んでいるんですね。待機電力も大幅に減っていますけれども、地デジ用のチューナーなどは、あまり高価じゃないのもあって、待機電力の対策があまり十分にとられてないようなんです。そういったところが一つ、注意点かなと思います。

高橋:確かに我々は気がつかない所ですよね。テレビのほうはメインスイッチ切りましょうなんて言うところまで意識するようになってきましたけれどもねぇ、上に乗っかっている小さな箱、そのことまでは気がまわらない。

岩船:はい。

高橋:ほかにいいなぁと思った動画は何かあるんでしょうか。

岩船:あとはあまり、正直言って動画はあまり集まってないかもしれないんで。ぜひ大募集したいなぁと思う。例えば、動画じゃなくても、静止画でも、一目見てわかりやすい節電対策とかが集められれば。それは私たちがやらなくても、政府がやってもいいと思うんですけれども、みんなのアイディアを出し合うっていうのはすごく重要なんじゃないかと思います。

高橋:そうですね。質問が寄せられているっていうお話しでしたけれども、どんなものがあるんですか。

岩船:例えば契約のアンペアを下げることは本当に節電になるのかとか、まぁ、いろいろです。あとは、ハードディスクレコーダーでテレビを録って、その時間は観ないと、で、夜中に観ると。しかも、それは観たくない所を飛ばすんで、1時間の番組が45分で観られます。そうしたら節電じゃないですかとか、そういうような質問がきたりしました、最近では。

高橋:なるほど。それで、それぞれ答えはどうなんですか。先ほど契約電力を下げるのは?

岩船:それは、私、50世帯ぐらい今、実測をしていて、データをずっととっていてわかるんですけれども、実際、60アンペア契約のお宅でも、そんなに使っている時間ってほんとないんですね。そういうお宅でも30アンペアを超えているっていうのは、1日のうち5分もないくらい。

高橋:へぇー。

岩船:ほんの一瞬なんですね。エアコンがついて、電子レンジがついて、炊飯器がついてっていうのが揃った時しか30アンペアを超えたりしないので、ですから、契約アンペアを下げるっていうのは、意識はあまり、そういうのを気にするようになるっていう効果はあるんですけれど、実はそんなには効かないっていうのが結論です。

高橋:電力を節約することにはならない?

岩船:実際に使ってる姿を見れば、ピークを抑える効果っていうのはたぶんほとんどないだろうと、いうふうに思います。

高橋:なるほど。

岩船:ただ、気にして一緒に使わなくなるぐらいの効果はあると思うんで、全然ないとは言わないですけれども、実際の家庭の使用状況から判断すると、それ自体の効果はあまりないと思います。

高橋:アンペアが違うと基本料金は違うんですよね。

岩船:基本料金は違うのでかなりお得ですけれども、ただ、契約アンペアを下げる工事をしてしまうと1年間はまた工事ができないそうで、あまり簡単にはお勧めできない。それでブレーカーが落ちるって私に苦情言われても困るんで。1年もその後工事ができないっていう話もありますから、そこは用心してやらなくてはいけないと思います。

高橋:なるほど。で、次の質問、テレビを録画してというのは。

岩船:そうですね、それは実はテレビによるんですね。

高橋:ほぉ。

岩船:うちの液晶テレビとレコーダーの消費電力を考えると、あまり節電にはならないんですけれど、あっ、節電にはなるんです、もちろん。昼間のピークカットにはなる。ピークシフトにはなる。

高橋:ピークシフトになりますよね。夜中に観るんならいいですよね。

岩船:省エネにはならない。結構テレビの消費電力がそんなに大きくないとハードディスクレコーダーの消費電力分が乗るわけですから節電にはならないんですけど、例えばこれが大きなプラズマテレビで300W・400W使うようなタイプであれば、1時間のものを45分にする効果はものすごく大きいんで、だからテレビによるっていうのが答えなんですけど。

高橋:なるほど。でも、そうしたらそもそも、そういうテレビじゃなくて、液晶テレビに買え替えたほうがいいですねっていう(笑)。

岩船:それもあるんですけれど、一度もう立派なテレビをお買いになった方が後悔されても、なかなかテレビを買い替えてくださいとは言いづらいところはありますよね。

高橋:ええ。

岩船:なので我々としてもなるべく、買い替えじゃなくて、その状況でできることというようなアドバイスを差し上げるようにしております。

高橋:なるほどね。わかりました。いろいろ節電についてお話しを伺っていますけれども、いったんここでコマーシャルを入れたいと思います。CMです。

(CM)

高橋:「科学朝日」。本日は、東京大学生産技術研究所エネルギー工学連携研究センター准教授の岩船由美子さんにおいでいただいています。

 いままで節電のやり方についていろいろお話しを伺ってきましたけれども、実際にどのくらいの量を節電できるのかっていうのを、岩船さんが試算なさったデータがあると伺いましたので、ちょっと教えていただけますか。

拡大

岩船:はい。これは昼間の在宅世帯です。だいたいそれが全体の4割として800万世帯あったと、東電管内で。そのうちの半分がやったとした場合の節電効果になります。例えばエアコンの冷房を1℃上げた場合に、大体1世帯当たり40~60Wぐらいと推定すると、全体で20万kWぐらいですか、の節電になると。

高橋:はい。

岩船:テレビの明るさを調整すると大体8万kWぐらい。

高橋:はい。

岩船:もっと頑張ってもらってエアコンの冷房を半分の家が消したとすれば、大体それが最大で240万kWぐらいの効果があると、テレビで40万kWぐらいの効果があると。この数字っていいますのは、例えば今回目標とされている15%、家庭部門の15%が大体、250万とか、そのぐらいだと思いますので、それに相当するぐらいの効果になるということです。

高橋:消してくれればですね?

岩船:消してくれれば。

高橋:半分が?

岩船:ただ、消すっていうのはかなり……

高橋:きついですよね。

岩船:きついですからこれはなかなか期待できませんので、こういったことの積み重ねですね。まぁ、テレビは許してもらえるかもしれないので。

高橋:そうですね。

岩船:こういったことの積み重ねで、250万kWなら、それにどこまで迫れるかということかと思います。

高橋:1℃上げるだけだとその1割しかいけないんですね、24万kWぐらいですから。

岩船:そうですね。全部の家がやってくれればこの倍にはなるんですけれども。

高橋:なかなか道は遠いような。

岩船:はい。

高橋:ほかに、エアコンとテレビ以外にはどんな可能性があるんでしょうか。

拡大

岩船:こちらは、全部の家でできることという意味で、居ない家も含めてそのうちの半分が実施した場合というような見積もりをしています。

高橋:はい。

岩船:例えば温水洗浄便座も、夏でも4割ぐらい使用されているというようなアンケート結果がありまして、それを基に試算すると、半分の家で消した場合、大体最大30万kWぐらい。

高橋:これはいけるんじゃないですか。

岩船:これは、私はお願いしてもいいと思うんです。

高橋:皆さんこの夏ぐらいは、暖房便座はちょっとねぇ。

岩船:そうですね。

高橋:切っていただいて。

岩船:はい。あっ、ただ、すいません。夏季の使用率が40%とすると、こっちですね、12万ぐらい。

高橋:その程度ですか?

岩船:このぐらいになるということです。

高橋:そもそも使ってない方がいますよね、夏ですから。

岩船:使ってない方がいるのでっていうことで。

高橋:えぇ。

岩船:炊飯器の保温に関しても、実際の使用率を考えると、大体最大で9万kWぐらい節電できる余地があるのではないか、ということです。

高橋:はい。

岩船:電気ポットの保温も、これかなり消費電力大きいので、それをやめてもらうと大体5万kWぐらい。

高橋:はい。

岩船:冷蔵庫の設定温度に関しては、すべての家の半分でやってもらうと15万kWぐらいの効果があるのではないかと。

高橋:はい、はい。これもぜひお薦めですね。

岩船:そうですね、これはお薦めしたいなと思います。あとは、それ以外にいろんなもの、そのお宅によるんですけれども、例えばモデムが居ない間もずっとONになっているおうちとか、これはインターネット用のモデムとかですね、ルーターみたいなもの。

高橋:はい。

岩船:ただ、電話が繋がっている場合はこれ、OFFにしないでほしいんですけれども。

高橋:そうですか。

岩船:そういう場合もありますので、そこはチェックしてほしいんで。かなりそれはそのお宅によるものなんですけれども、冷蔵庫以外のベース部分というのも結構ありますので、その家で切れるものをトライして、大体こういったものを積み上げてもらえればいいのかなぁと、そう思います。

高橋:これなんか、「お宅ならこれとこれは切れますよ」みたいなことを診断してもらう無料サービスとかないんですかね。

岩船:なかなかないんですよね。家庭用の診断っていうのは、アイディアとしてはずっとあるんですけれども、やはり世帯数も多いですから、費用対効果という意味で、例えば商業ベースにはなかなか乗らないです。

高橋:まあねえ。

岩船:工場とか店舗などはそういったサービスもある程度あるんです。例えば節電した分の、省エネできた分の費用からお金を戻してもらえばいいみたいな、そういう事業はあるんですけれども……

高橋:省エネ診断士みたいな?

岩船:そうです。

高橋:はい。

岩船:家庭はなかなかそこまでは、1世帯といっても減らせる量って限られていますので、難しいと。

高橋:緊急事態ですからね、今。

岩船:そうですね。でも、2,000万世帯あるんで、それを全部まわるわけにはいかないですよね。

高橋:いかないですか。

岩船:はい。なので、なるべくできそうなことを、少しずつ皆さんに意識していただいて、考えてもらうしかないと思います。

高橋:この夏、短期的にはそうやって乗り切るしかないわけですけれども、中長期的なことを考えれば、「これからエネルギーどうしていくんだ」って、そういう部分も今回、誰もが考えたと思うんですよね。

岩船:はい。

高橋:で、「中長期的にとるべき対策としては何が大事なのか」というところはどうですか、岩船さんからは?

岩船:もちろん、供給力をこれから増強していってこの夏は乗り切ったとしても、また冬にピンチがくるわけですから、そこに向けて対策をとっていかなくてはいけないと。ただ、原子力政策が不明ですから、供給もこの先どうなるかわからないところもありますよね。そういう意味で今は自然エネルギーにも期待が寄せられていると。

高橋:はい。

岩船:もちろんそういう技術開発を併せて進めていくことは非常に重要だと思うんですけれども、なかなかやっぱり、コストの問題とかがあって、そして、あとは安定性ですね、発電としての。そういう意味ではまだまだ課題が多いので主流にはなり得ないんですけれども、基本的にやっぱり、節電といいますか、やはり使う側を少し抑えていくような工夫は必要かなと思います。

高橋:はい。

岩船:そういう意味では今、話題になっていますスマートグリッドの中で「スマートメーター」を、例えば各家なり、小さい小口の需要家にも付けていくことによって需要をもっと調整して、それによって、供給がピンチの時はある程度需要側をコントロールするというような考え方も進んでいますので、そういったスマートメーターの導入などは中長期的に非常に重要な施策になってくると思います。

高橋:スマートメーターも、コストがかかるから無理だっていう議論がいままでは主流だったんじゃないんですか。

岩船:そうですね。ただ、やるだけの価値があるかって考えると、いままで、すべて需要に合わせて供給できてた場合には、そこにメリットが無かったわけですよね。

高橋:えぇ。

岩船:ところが、このような状況になると、やはり需要側にも供給側に協力してもらわなくちゃならないと、そのためにはどうしてもスマートメーターが必要なんです。今、どの家庭でも、自分たちが何に電気を使っているのかわからない状況ですよね。

高橋:そうですね、はい。

岩船:それをわかるためには、スマートメーターなり、「ヘムス」というような、エネルギーマネージメントシステムみたいなものが重要になってくるわけです。それで「見える化」することによって、自分の家で何を減らせるかとか、そういった考えるきっかけにもなりますし、もっと言うと、中央からコントロールする。

高橋:えぇ。

岩船:それは、もちろん需要家さんの合意があって、料金体系などがそういうふうに工夫されていて、そういう供給側に協力した人は安くしますよとか、そういった仕組みをうまく作っていく必要があるのではないかと思います。単に技術だけで解決できるものでもなくなってきているのではないかなと思っています。

高橋:そうですよね。その場合、メーターを今の普通のメーターからスマートメーターに替えましょうって言うのは、電力会社から言われるんですか。それとも、個々のご家庭が……

岩船:いや、電力メーターは電力会社のものですから、今は。電力会社がそこはやっていくしかないんです。

高橋:そうなんですか。

岩船:はい。

高橋:じゃあ、こちらがお金を払って替えてもらうとか、そういうことはないんですね。

岩船:そうじゃないです。そうではないです。

高橋:ただ、向こうが替えたときに協力するかどうかを訊かれるっていうことですか。

岩船:そうですね。いろんな料金メニューが示されてどれを選択しますかと、一番厳しい時に例えばエアコンを調整するような契約とか、それに合意すれば料金的にちょっと優遇されるとか、それともジャブジャブ使いたい人はすごく電気代が高くなるとか、そういう差をつけてくるようにこの先ならざるを得ないのではないかなぁ、というふうに思います。

高橋:使うほうの工夫でそういうふうになっていくと。

岩船:はい。

高橋:一方で、作るほうですね。電気を作るほうは、自然エネルギー、いい、いいってずっと言われていてなかなか本当にモノにならないっていうこの状況、何なんだろうなって思うんですよね。

で、それこそ、石油ショックのころから次は自然エネルギーだって言っていろんな政策も、税金を投じて研究開発するっていうこともずぅーっとやられてきて、また同じようなことを言っているんですよね、「今こそ自然エネルギーだ」って、「ここで税金を投入して研究しよう」みたいな。ちょっと、20年前とどこが違うんだろう。30年前とどこが違うんだろうって思ってしまうんですが、その辺は岩船さんからみてどうなんですか。

岩船:やっぱりコストの面でまだ問題があるというのは一つ大きいかなぁと、まだまだ高いですよね。

高橋:えぇ。

岩船:それでも太陽光などはずいぶん価格も下がってきて普及はかなり進んできているとは思うんですけれども、今回のことを機にもっとその普及が拡大するかなと。ただ、ああいったものっていいますのは、例えば原子力のようにいつでも好きなだけ電力を供給できるものではないですよね、お天気任せであったり。

高橋:そうですよね。

岩船:風力に関しても風任せであると、そういう意味では電池がどうしても必要なんですよね。

高橋:そうですね。

岩船:本当にきちんと安定的に使っていくためには。

高橋:はい。

岩船:ただ、電池の値段がまだ高いと。そういうのもありますから、そういったものと併せて技術開発を進めていく必要があるのかなぁと思います。

高橋:その技術開発をする時に、日本は外国で流行っているのをすぐ真似してやろうとするじゃないですか。日本の国土を考えたときには、地熱はたぶん非常に有望ですし、それに海ですよね。これだけ海に囲まれているんですから、波力発電なのか潮汐発電なのかよくわかりませんけれども、海を利用した発電も日本だったら有効なんではないかと思うんです。それなのに、わりとそういうのはなおざりにされていて、バイオエタノールが流行っているといえば、みんながバーといったりね。

岩船:うん。

高橋:でも、バイオエタノール、作物を作ってそれをアルコールに変えるっていうのは、日本には全く合ってないと感じるんですけれど……

岩船:そうですね。おっしゃるとおりだと思います。本当におっしゃるとおりだと、もっと適した所はありますし。

高橋:ねえ。

岩船:そういう意味で、例えばブラジルなどでそういうものが普及してきたというのは当然かなぁとも思います。

高橋:ええ。

岩船:でも、例えば地熱などでも、特に日本のメーカーは技術的に強いといわれているんですけれども、例えば土地利用の問題で、国立公園の中に適地があるとか、あとは、温泉業界の方たちが嫌がるとか、そういった問題を一つずつクリアしていかなくてはいけない、国土が狭いだけあって。そういう問題があるのかなぁと思います。

高橋:ふーむ。

岩船:波力に関してもかなり、最近またいろんな技術開発は進んでいるんですけれども、やはりエネルギー密度的にはどうしても小さいので、そこをどううまく集めるかっていうような工夫は、一生懸命やっている人はやっているんですけれど、あまり目立っていないのかなぁ。

高橋:目立っていないし、政府はあまり資金を投じてないですよね、波力には。

岩船:そうなんですかねぇ。

高橋:ええ。

岩船:うーん。

高橋:ここ10年ぐらいはバイオマスで……

岩船:そうなんですか。

高橋:えぇ。バイオマスに非常に税金が投じられたんですけれども、ついこの間、総務省が2月15日に政策評価の結果を発表して、それを見ると本当に惨憺たるもので、せっかく創った施設がちゃんと稼働してないとか、それから、CO₂を減らすつもりで始めた事業なのに、CO₂がどれだけ減ったのか計算すらしてないとか。

そういうものがほとんどで、ちょっとびっくりしたんですけれども、効果が発現しているものが214事業中35事業、16.4%。それから、CO₂、その収支をちゃんと把握しているっていうのが、132施設中3施設、たった2.3%。効果が何とかでているねっていうのが、77施設中わずか8施設、10%です。

そんな程度の成果しかでていないっていうんで、まあ、自然エネルギーに対して、再生可能エネルギーに対して関心は高まっているけれども、いままで30年やってきた結果がこの状態なんだと思うと、すごく先行きにあまり期待できないような気がしちゃうんですけれど?

岩船:それはやっぱり、レビューする態勢がきちんと整ってなかったのかなぁというのはありますよね、貴重な税金を投じたものに対して。

高橋:そう、そうなんですよ、えぇ。

岩船:それはおそらく、バイオマスだけではなくて、いろんなほかの自然エネルギー政策であったり省エネ政策に関しても、やはりそういうレビューがいままで不十分であったというような反省はずいぶんされてはきていると思うんです。なので、やはりそういった所についてもっと我々も関心をもっていかなくてはいけないんではないかなと思います。

高橋:そうですよね。政策が変なほうに行かないようにするために、研究者の役割ってすごく大きいですよね。

岩船:はい。我々もお金をもらって研究する立場なんで、いかに自分たちが、良い結果をだすのもそうですけれども、それを一般の皆さんにもわかってもらえるような工夫をどんどんしていかなくてはいけないんではないかなと思います。

高橋:ええ、えぇ。この大震災を機に研究者の方たちもいろんなことを感じて、行動に移されている方もたくさんでてきていますけれども、そういう意味では電力の研究ってまさに直結していますね。直結していない人たちからも、大震災で研究者のあり方みたいなものを考えたっていう声をずいぶん聞くんですよね。その辺、岩船さんご自身は、3.11前と後で変わられたこととかございますか。

岩船:私だけじゃなくて、例えば家庭用エネルギーとか研究している人間は多いんで、みんな何かしたいと思ったと思うんですね、今回のこの節電のことに関しても。

高橋:ええ、はい。

岩船:ただ、なかなか時間がないとかいろんなことで、とりあえずは自分の業務をきっちりやっていこうっていう人が多いと思うんですけれども、皆さんが問題意識感じられていらっしゃるのはひしひしと感じていますし、いろんな協力いただいていますね、実際。私はたまたま運良くいろんな方のご協力得られたのでこういったことができていますけれども、やはりこの分野に関しては本当にみんなに訴えていくしかないんで、もう研究している暇ない、って言うのも変な言い方ですけれども、それでなるべく皆さんに理解していただく努力を一生懸命しようとは思っています。

ただ、もちろんこういった分野以外のエネルギーの研究者の方たちとも、もちろん原子力関係の方もそうですし、例えば太陽光とか、そういった皆さんすごく意識高いですし、危機感感じて研究に邁進されていらっしゃるとは思います。

高橋:原子力のあり方は特に、皆さんで本当に国民的に議論を重ねて、私たちで方向を決めなければいけないですからね。

岩船:そうですね。

高橋:はい。本日はどうもありがとうございました。

岩船:ありがとうございました。

高橋:「科学朝日」本日はこの辺で失礼いたします。次回もどうぞお楽しみに。

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