尾関章(おぜき・あきら) 科学ジャーナリスト
1977年、朝日新聞社に入り、ヨーロッパ総局員、科学医療部長、論説副主幹などを務めた。2013年に退職、16年3月まで2年間、北海道大学客員教授。関心領域は基礎科学とその周辺。著書に『科学をいまどう語るか――啓蒙から批評へ』(岩波現代全書)、『量子論の宿題は解けるか』(講談社ブルーバックス)、共著に『量子の新時代』(朝日新書)。週1回の読書ブログ「めぐりあう書物たち」を開設中。
尾関章
「どうして世界2位ではダメなのか」。スーパーコンピューターの開発に向けて放たれた蓮舫民主党参院議員の一矢は、科学界を大きく揺さぶった。その仕分け日程が終わってまもなく、小紙には、取材記者の感想を載せた特集記事が載った(2009年12月1日付朝刊)。次世代スパコン問題の担当記者はこう書いた。
「『国民に夢を』『米国との競争に勝つ』ぐらいでは、100億円単位の税金投入を認める理屈にはならないことがはっきりしてきた」
この記者は、科学報道部門には属していない。だからこそ、生活者の感覚を正直に反映する一言といえよう。科学記者の私は、物質世界のしくみを知るためには納税者の納得を前提に数千億円の装置をつくってもよいと思うが、その納得を得ようにも納税者目線はそれほど温かくはない。
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