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東日本大震災や原発事故などをテーマにサイエンス映像学会【無料】

7月30日、31日に青山学院大学で WEBRONZAがメディアパートナー

 サイエンス映像学会(SVS)第4回大会が7月30日(土)、31日(日)の2日間、東京都渋谷区渋谷4丁目の青山学院大学・青山キャンパスで開催される。東京電力福島第一原発事故や東日本大震災の映像アーカイブなどをテーマにした、特別対談やシンポジウムを開く。タイムリーかつ、広く関心を集める深いテーマ設定になっている。一般の非会員の方々も聴講できる。当日の様子はインターネットのニコニコ動画で生放送される。朝日新聞WEBRONZAがメディア・パートナーとなっており、大会終了後にはWEBRONZAに基調講演やシンポジウムなど主要プログラムが採録される予定だ。

 同学会は、映像を通して自然や科学の世界を理解するとともに、優れた映像を制作し、さらにアーカイブ化された貴重な映像を教育にも役立てることを目指して2008年4月に設立された。映像分野の研究者、サイエンス映像に造詣や関心が深い医療などの科学分野の研究者、放送や映画など現場の制作者、小・中・高等学校の教員、大学院生、大学生らの会員で構成されている。

 会長は解剖学者で東京大学名誉教授の養老孟司氏で、副会長はNHKスペシャル「人体」元プロデューサーの林勝彦氏、評議会議長は脳低温療法を開発し世界的な評価を受けた日本大学大学院教授の林成之氏、評議会委員の一人にノーベル化学賞受賞者の白川英樹氏が名前を連ねる。

 年次大会は今年で4回目を迎える。当初は3月下旬に予定されていたが、東日本大震災によって福島原発事故が発生したため延期されていた。このため当初予定さていたシンポジウムや全体発表の内容を急きょ変更した。

 震災以外のシンポジウムとしては、電子書籍による読書をテーマに催す。iPadをはじめとする情報機器の登場により、多くの人が今まで以上に映像にアクセスできるようになっただけでなく、電子書籍の普及によって読書のあり方さえも変わりつつある。それらの映像や情報機器の持つ特性を効果的に活用することで、年代や言語の壁を越え、科学という人類の財産を共有するために、SVSではさまざまな取り組みを行っている。

 今学会の開催テーマは「サイエンス映像の定義と拡張」。設立4年目を迎え、サイエンス映像学会の軍司達男理事が改めてサイエンス映像を定義し、学会での研究範囲の拡張を目指す。また、学会設立以来、広告映像研究部会が取り組む、脳科学による広告映像の分析について研究成果を評議会議長で脳科学者の林成之氏らが発表する。今回は、電子書籍時代を見据え、静止画と動画の表現効果の相違点を科学的に分析し、電子端末での効果的な静止画、動画の使い方を提言する。2日目午後の分科会では、大学生会員による「学生サイエンス映像発表会」もある。

 2つのシンポジウム「大震災被災地の過去、現在、未来の記録と活用―311まるごとアーカイブスについて」「iPadが変える読書の近未来」と、特別対談「脱・原発は可能か?」の内容と登壇者は以下の通り。

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【シンポジウム】7月31日(日) 13:10~14:40

「大震災被災地の過去、現在、未来の記録と活用―311まるごとアーカイブスについて」

パネリスト:

長坂 俊成(独立行政法人防災科学技術研究所 主任研究員)

甲斐 賢治(せんだいメディアテーク 企画・活動支援室 室長)

養老 孟司(東京大学 名誉教授/サイエンス映像学会 会長)

モデレーター:

徳山 喜雄(サイエンス映像学会 理事/朝日新聞社ジャーナリスト学校 主任研究員)

 東日本大震災被災地の失われた「過去」の記憶をデジタルで再生し、被災した「現在」と復旧に向けた「未来」の映像や資料をデジタルで記録し、まるごとアーカイブすることを目的とした「東日本大震災・災害復興まるごとデジタルアーカイブス」(略称:311まるごとアーカイブス、事務局:独立行政法人防災科学技術研究所内)が発足した。このプロジェクトは現在、多くの機関の協働により運営されており、サイエンス映像学会も中心的なメンバーとして活動している。アーカイブされた映像や資料などのコンテンツは、肖像権や著作権などに配慮しながら原則としてインターネット上で公開されるとともに、公共施設などで閲覧され、必要に応じて提供される仕組みを目指している。これらのコンテンツは、被災地の復興時のまちづくりの資料や、防災学習や防災研究など、幅広い活用を期待できる。

 シンポジウムでは、プロジェクト「311まるごとアーカイブス」の内容と進捗状況を報告・説明するとともに、収集した映像や資料を今後どのように保存・活用していくべきかを討論する。

【特別対談】7月31日(日) 10:35~11:35

「脱・原発は可能か?」

スピーカー:

アイリーン・美緒子・スミス(環境ジャーナリスト/グリーン・アクション 代表)

林 勝彦(サイエンス映像学会 副会長/元NHK プロデューサー)

 今回の震災による福島第一原子力発電所の事故を契機に、「脱・原発」の声が市民の間でも高まっている。政界でも「再生可能エネルギー固定価格買い取り法案」の議論が始まり、35の地方自治体が「自然エネルギー協議会」を発足させるなど、自然エネルギーの普及促進への模索が始まっている。

 原発は本当にクリーンでコストの低いエネルギーなのか、原発が無ければ本当に電力不足になるのか。また、すでに「脱・原発」を掲げているドイツはどのように実現しようとしているのか、日本にはその工程表は存在するのか。さらに、収束のメドがついていない“フクシマ”の放射能汚染の実体と情報公開の遅れや隠蔽体質に触れ、原発問題に造詣の深い両氏をスピーカーに、「脱・原発」実現への条件や課題を明らかにするとともに、エネルギーの未来像を探る。

【シンポジウム】7月30日(土) 13:10~14:40

「iPadが変える読書の近未来」

パネリスト:

林 信行(ITジャーナリスト)

杉本 真樹(神戸大学大学院医学研究科 特命講師)

大湊 満(凸版印刷株式会社 常務取締役)

モデレーター:

畑 祥雄(サイエンス映像学会 事務局長/関西学院大学総合政策学部 教授)

 AmazonのKindleによる電子書籍の販売が開始されたのは1997年。欧米では爆発的に流行し、日本でも一部で流行したもののKindleが日本語に対応していなかったこともあり、それほどの国内市場の拡大には至らなかった。しかし2010年のiPadの発売により、それまでの電子書籍のみならず、多様な形式の電子メディアが国内でも急速に拡大し、メディアの仕組みや配信・販売のあり方に変化がもたらされ、読書のスタイルにも変化が及んでいる。

 電子書籍やソーシャルメディアの変革が加速する中、サイエンス映像は今後どのように関わり、またどのような可能性を持つだろうか。様々な分野の第一人者を迎え、サイエンス映像の近未来を見つめる。

 サイエンス映像学会第4回大会は7月30日(土)、31日(日)の2日間、青山学院大学青山キャンパス(東京・渋谷区)で開催。詳細内容の閲覧、聴講(無料)申し込みはウェブサイト(http://gm.svsnet.jp/)で確認のこと。なお、上記のシンポジウムなどは、ニコニコ動画(http://www.nicovideo.jp/)でも配信予定。