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「科学者の不一致」こそ論題に―リテラシーを考える

小林傳司

小林傳司 小林傳司(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授)

 今回の東日本大震災以後、原子力関係の世界はすっかり社会から信頼を失ったように見える。正確には、原子力にかかわる科学技術だけでなく、それに携わる科学技術者の信頼が失われたのである。文部科学省の科学技術政策研究所は2009年11月以来、科学技術に対する国民の意識の変化をはかるために、毎月インターネット調査を続けてきたが、今年の4月以降は、原子力発電所の事故に関する問いを加えて調査をしている。その結果が平成23年版の科学技術白書に紹介されている。

 それをみると、3月の震災直後には科学技術による原子力発電所問題の解決への期待は高まったが、4月、5月と急落している。他方、科学技術による資源・エネルギー問題の解決への期待は、3月以降高い状態のままである。原子力発電にかかわる科学技術への信頼は急落したが、科学技術全体の信頼は維持されているとみるべきであろう。

 しかし注目すべきなのは、「原発の事故に関し、科学者・学会等による意見表明が行われていると思うか」という質問に対する回答である。「積極的に行っていると思う」、及び「どちらかというと行っていると思う」という回答を合わせると、4月で19.6%、5月では18.4%という低さである。この結果は、「福島第一原子力発電所の事故に関して、日本の科学者・学会等が、それぞれの分野における専門家・専門家集団としての意見表明を行っているか」という意味での質問であることを伝えたうえでの回答である。

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