小林傳司(こばやし・ただし) 小林傳司(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授)
【退任】大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授。専門は科学哲学、科学技術社会論。市民参加型テクノロジーアセスメントである「コンセンサス会議」を日本に紹介して実施した。2001年、科学技術社会論学会の設立に参加した。09年、地球温暖化をめぐる世界市民会議World Wide Viewsの日本代表を務める。※2012年3月末退任
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
小林傳司
それをみると、3月の震災直後には科学技術による原子力発電所問題の解決への期待は高まったが、4月、5月と急落している。他方、科学技術による資源・エネルギー問題の解決への期待は、3月以降高い状態のままである。原子力発電にかかわる科学技術への信頼は急落したが、科学技術全体の信頼は維持されているとみるべきであろう。
しかし注目すべきなのは、「原発の事故に関し、科学者・学会等による意見表明が行われていると思うか」という質問に対する回答である。「積極的に行っていると思う」、及び「どちらかというと行っていると思う」という回答を合わせると、4月で19.6%、5月では18.4%という低さである。この結果は、「福島第一原子力発電所の事故に関して、日本の科学者・学会等が、それぞれの分野における専門家・専門家集団としての意見表明を行っているか」という意味での質問であることを伝えたうえでの回答である。