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【科学朝日】子どもとワクチン最前線(collaborate with 朝日ニュースター、7月28日放送)

朝日ニュースター

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 朝日グループのジャーナリズムTV「朝日ニュースター」は、通信衛星などを利用して24時間放送しているテレビチャンネルで、ケーブルテレビ局やスカパー!などを通じて有料視聴することができます。4月から始まった新番組「科学朝日」は、高橋真理子・朝日新聞編集委員がレギュラー出演する科学トーク番組です。WEBRONZAでは、番組内容をスペシャル記事としてテキスト化してお届けします。

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ゲスト 「VPDを知って子どもを守ろうの会」代表 薗部友良さん

高橋:「こんばんは。科学の最先端にひたる科学朝日。案内役の高橋真理子です。今回のテーマは子どもとワクチン最前線です。今年3月、公費負担が決まったばかりの子どものワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンとインフルエンザ菌b型ワクチン、これはHibワクチンと呼ばれていますが、そのワクチンを受けた後に、4人のお子さんが亡くなったということで、接種の一時見合わせが決まりました。4月に入って、接種は再開されましたが、やはりワクチンに対して怖いという思いを持たれたお母さん方も多いのではないでしょうか。一方で、日本ではワクチンを打っていれば防げる病気にかかる子どもたちが後を絶たちません。そうした病気で亡くなる子どももいると聞くと、やはり日本の子どもたちにもっとワクチンが行き渡るようにしなければ、という思いも強くなります。ワクチンについては、いろいろな意見が飛び交っています。本日は、子どもとワクチンについて、じっくりとお話を伺いたいと思います。ゲストは、日赤医療センター小児科顧問で『VPDを知って子どもを守ろうの会』代表の薗部友良さんです。こんばんは」

薗部:「こんばんは」

高橋:「よろしくお願いいたします」

薗部:「こちらこそよろしくお願いいたします」

高橋:「このVPDという言葉、あまり聞き慣れないんですけども、どういう意味なんでしょうか」

薗部:「はい。VはヴァクシーンのVですね。Pはプリヴェンタブル、防げる。それからDはディジージズ、病気ですよね。ヴァクシーンプリヴェンタブルディジージズ、という意味で、これはもう予防接種の世界では、世界の共通の言葉なんですけれども、日本ではほとんど知られてないわけですよね」

高橋:「そうですね。聞いたことがないですね。そうした、聞いたことがない言葉を、あえて会の名称にお使いになっているというのは、何かお考えがあるんでしょうか?」

薗部:「今申されたように、日本では、いろんな病気でお子さんが亡くなるんですけど、最善を尽くしてもどうしようもないことがほとんどですよね。それに対して、防げる病気っていうのが少数あるわけです。特にそのほとんどはワクチンで防げる病気なんですね。このことがほとんど知られていない。そしてそのために、実際問題、ワクチンで防げる病気にかかって健康を損ねたり、最悪死亡をなさったりっていうお子さんが多いので、こういう防げるということを強調したいために、VPDという言葉をわざと選んだわけです。本当に『防げるものを防がない』というのは、こんなにもったいないものはないですね。そういう方法があるのに、それを日本の患者さんとかワクチンで防げる病気で亡くなった保護者の方は、ご存じない。その方たちが悪いわけじゃありません。ということで、こういうことをしっかりと、日本中のお母様方に知ってもらって、それで、日本からワクチンで防げる病気の被害をゼロにしたい、という思いがあったわけです」

高橋:「その、例えば『ワクチンをもっと打ちましょう』みたいなね、そういう分かりやすい名称にしたほうが、もっと広く知られるようになるんじゃないかと思いますが、その辺はいかがでしょうか」

薗部:「はい。ワクチンということでやりますと、これは一部の方はお分かりいただけますが、ワクチンを打たないという方のね、話のほうに行ってしまう方も多いもので、世界中でワクチンを打たないという方もおられるんですけれども」

高橋:「まあ、一定程度の方はね、いらっしゃるみたいですね」

薗部:「一定というよりかは、極めて少ないんです。世界のほとんどの方はそうではないんですけど、そういう方は宣伝がお上手ですから、そっちのほうに行ってしまって、かえって、というようなこともありますけれども、我々とすればやっぱり子どもを守るっていうことを、正面突破しようということで、このVPDの会を、名前を使って、『なんですか?』って聞かれたら、『こうですよ』、『VPDはワクチンで防ぐべき病気ですよ』ということをやってきて、それで、おかげさまで私たちだけの活動のためではないですけども、今や日本の医学界では、VPDっていう言葉が市民権を得るぐらい知れ渡るようになったということで、これは大変素晴らしいことだと思っております」

高橋:「ワクチンという言葉を、会の名前にあえて使わない。そういうことによって、VPDという新しい言葉を広めたいという狙いがあったわけなんですね。わかりました。それではコマーシャルを挟んでもっと詳しく伺います。いったんコマーシャルです」

【CM】

高橋:「科学朝日、本日のゲストはこの方、日赤医療センター小児科顧問で『VPDを知って子どもを守ろうの会』代表の薗部友良さんです。改めましてよろしくお願いします」

薗部:「こちらこそ、よろしくお願いします」

高橋:「まず今年の3月の出来事のことなんですけれども。昨年の補正予算で公費負担の枠組みができて、今年に入ってから多くの市町村で接種が始まった小児用肺炎球菌とHibワクチン。始まった途端に小児の死亡が報告されて、厚労省が接種を一時見合わせるという決定をしました。このニュースを聞いたときは私自身もちょっとショックを受けたんですけれども、これはどういうことだったのでしょうか」

薗部:「そうですよね。そういう報道がありますと、当然のことながら、皆様方びっくりなさるのは当然で、これは残念ながら、今まで日本は予防接種制度が遅れてきましたから、こういうワクチン関係の正しい情報が出てませんから、そういう状況において中止というのが出ると、皆様方が強く受け止めるのは当然だと思います」

高橋:「それで、『VPDを知って子どもを守ろうの会』のホームページで、先生はいち早く意見表明されたんですね。ちょっと見てみますと、厚労省が見合わせを決めたのが3月の4日。5日の朝刊各紙にニュースが出ますね。7日には『Hibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンおよび同時接種の中止問題』というタイトルの文章が出ました。これをいち早くお出しになった思いというのはどういうことだったのでしょうか」

薗部:「はい。この中止問題というのは大変重いことで、中止をすれば当然患者さんは増えるわけですね」

高橋:「肺炎にかかる方が増える、ということですか」

薗部:「肺炎球菌感染症やHib感染症で、例えば髄膜炎だけでも年間800人いますから、もし一月遅れれば70人前後はかかってしまうと」

高橋:「800割る12っていうことですね。一月70人ぐらいの患者さんが出る」

薗部:「遅れれば遅れるほど患者さんの数が増えるというのは、もう間違いないことですから、こういうことでは、やはり良くないということで、早速に意見表明をしたわけです。これはですね、非常に単純で、世界では、このワクチンは、Hibワクチンも肺炎球菌ワクチンも、何億人にも打たれているんですね。それで、ワクチンほど、前から悪いことをするんじゃないかって疑われてきたものはないんで、逆に極めてよく調査されてるんですね。そうしますと、今の二つのワクチンでは、普通は死亡することはあり得ないと。強いてあるとすれば、これは理論的な可能性ですけども、いわゆる、ワクチンを受けてショックというやつですね。アレルギーの非常に強いタイプを受けた方が、いろいろ治療で、多少まだいろんなワクチンで少しはあるんですけども、ほとんどは問題なく行くんですけど、そういうことで亡くなるということは、理論的にはあり得るだろう。ですけど、他のメカニズムで、この二つのワクチンで亡くなる方はいないというのが世界の基本的見解ですし、同じく同時接種に関しては、もう長い、これまた経験がありますから、同時接種によって死亡するというようなことはないということも、これはいわゆる専門家の間では当たり前のことで。ですから、欧米ではもう早速、次の日に、アメリカの新聞に出ましたけどね」

高橋:「日本のことがですか?」

薗部:「日本のことが。何て書いてあるかというと、日本ではこういうことがあるけれども慌てることはない。ちゃんとアメリカで調べててそういうことはないと」

高橋:「それはアメリカの当局が発表したんですかね」

薗部:「そうです。専門家の意見もですね。こういうことで、世界で言えば20年前ぐらいからこういう問題は討議されてきてですね、もう解決済みのことであると。それを、こうやってやめるっていうのはね、非常に日本のやり方は間違っているというふうに指摘される有名な先生もおられるぐらいなんです。ですから、そういう意味で、ワクチンほど誤解されているものはありませんのでね、ワクチン打った後に何かが起こるとみんなワクチンのせいにされるんですけれども、ワクチンで何か悪いことが起こる可能性もあるし、それからワクチン以外のことがたまたま紛れ込む、っていうんですけども、偽の副作用としてそういうことが起こる可能性があるわけです。そういうことは世界中でこんなにですね、子どもの命に関係すること、多くの人に打つものですから、これほど研究されているものはないんですよね」

高橋:「先生、その、意見表明された時点で、実際亡くなった4人のお子さんの詳しい情報は得ておられたんですか?」

薗部:「いや、それは詳しいっていうか、それは厚労省が誰にでも知られる情報として出したものから見てるわけです」

高橋:「それ以上の詳しいカルテを見たりとかそういうことはされてないわけですね」

薗部:「全然。それは不可能です」

高橋:「でもその厚労省が出した情報だけを見ても、これはもう心配することはないと判断できたと、こういうことですか」

薗部:「ですから、これがアナフィラキシーショックという、先ほど申し上げたようなことで、4人とも同じ症状で亡くなっているっていうんだったらですね、それは少し考えなきゃいけない、ということはありますけど、実際問題、世界で問題にされた赤ちゃんの突然死であるとかですね、元々病気を持っている方であるとか、感染症の方であるということが分かっていますので。ですから、アメリカの当局自身がすぐに発表するぐらいです。だから、それはアメリカ当局もカルテを見ているわけではなくて、わたしと同じ情報を見て判断するんで、これはもうワクチンの専門家の間で言えば当たり前のことでございます」

高橋:「結局、厚労省は3月24日に、4月から再開するっていうことを決めたんですね。このときには7人の乳幼児の死亡例が報告されていまして、最初の報告より増えたんですね。厚労省として『直接的な明確な因果関係は認められない』と、こういう結論を出したわけですけれども。ただ、素人が聞くとですね、直接的な明確な因果関係が認められないにせよ、認められないだけであって、ひょっとしたらあるのかもしれないと思う。その中で、7人というのはかなり多い人数のようにも感じるんですが、どうなんでしょうか」

薗部:「そうですね。そこがもう皆様方不安に思われるとこですよね。まずね、日本のお母様方は、元気に生まれたお子さんは、亡くならないと思われているんですけれど、年間約2,600人の方が、0歳代で亡くなっているんですね」

高橋:「1歳になる前に、2,600人ですか」

薗部:「これは、生まれた数から言えば、比率は極めて少ないんです。世界の中ではトップクラスですね」

高橋:「日本の医療体制がキチッとしている表れですね」

薗部:「それはそうですけれども、これだけ亡くなった。まして、赤ちゃんの突然死というSIDSという病気があるんですけど、これは原因がよく分からないけれども、母乳を飲めば減らせる、うつぶせ寝をさせないようにすれば減らせる、パパや家族がタバコを吸わないようにすれば減らせるってわかっている。これが、だいたいどれぐらい毎年出ているかって言うと、厳密な意味で言うと160人ぐらいです。今回調査のときに対象にしたのは。それから、解剖をなさらない、けれども総合的な意味でそれにやっぱり近いっていう方まで合わせると、年間400名前後はおられるわけです。ということは、全く元気だった方が、朝起きたら亡くなっているとか、お昼寝の後に亡くなっているということがこれだけあるわけで、1日1人以上おられるわけです」

高橋:「そうか。400人と言えばそういうことですね」

薗部:「そうすると、当然のことながら、ワクチンを打った後にそういうことが起こるので、世界中で、ワクチンが悪いんではないかと、昔からそれは言われたわけです。昔からっていうか、昔言われたわけですね。それで、当然のことながら本当にそうであっては困るし、そうであればまた手を考えなきゃいけないっていうんで、世界中でものすごい調査が行われて、結論は、『ワクチンと赤ちゃんの突然死は一切関係ない』。これは世界のコンセンサスです。ですから、それで、以前にも、当然ワクチンを打った後に、日本でも赤ちゃんの突然死で亡くなる方がおられても、そういう方はいわばご不幸ですけど当たり前ですから、ワクチンの副作用としては報告されないわけです。ところが、今度の交付金を使ったワクチン接種においては、そういうこと、前からそんなのは違うと言われていることも含めて、打った後に悪いことが起きたら、そういうのを有害事象って言うんですけど、有害事象が起こったらそれは重いものは全部報告なさい、ということになっているんで、数が増えました。それから、赤ちゃんの突然死は6カ月未満が多いんですけれども、そういう低い年齢の方に打つ機会が増えたし、というようなことで、今まで知られてないのが出た。それから、7人は多いという見方も当然できますが、これは年間を通して見ればどうなるかっていうのはね、簡単に分かると思います。ある期間だけちょっと増えるということは偶然でもあり得るわけですね」

高橋:「その7人の方の大半は乳幼児突然死症候群であったということですか?」

薗部:「一応正式にはお2人です。それから、感染症を、いわゆるウイルスがついていた方がお2人」

高橋:「それはじゃあ、そっちが原因だとはっきり分かっているわけですね」

薗部:「そこのことはまたお話しいたしますけれども、そういう方がお2人。それからいわゆる重い病気を持っていた。3人ともたまたま心臓の病気ですけれども、心臓の病気プラスアルファの方もおられますけど、そういう方であって、ワクチンを打たなくても亡くなる可能性を秘めていた方であるということも分かるわけです。それで、一番問題になるのは、明確に否定できるかっていうことですね。これは、何でもそうですけど、絶対否定できますかと言われたら、できますか?って伺いたいですよね。例えばこれは、非常に特殊なことかもしれないんですけれども、ワクチンを打った後に確かに亡くなっている。だけどいろんな証拠があって、その方が亡くなる前に何かをしたことが原因だったんじゃないか、例えば『ある食べ物を食べたからなったんじゃないか』というようなことがね、言われたら、『いえいえ、今まで母乳しか与えていませんし、わたしも何も変な物も食べてないし、それから作った物はみんな火を通して出したし』っていうようなことを言ったって、じゃあ『絶対違いますか』って言われたら、それは否定できるでしょうか」

高橋:「絶対といわれるとねえ」

薗部:「ですから、日本人はそういうことが好きですけれども、やっぱりいわゆる可能性ということは全てあり得るわけです。確率ということを考えれば、こういうのはどっかで否定しないことには、いつまで経ったって否定できないんです。ですからこれは、世界中で非常に明確にこういうのは関係ないと断定しているわけですよ」

高橋:「ただ、ワクチンについてはね、本当にいろんな意見が飛び交っていてですね、不要論を唱えるお医者様もいらっしゃいましたね、少なくとも過去には。ワクチンには様々な種類がありますので、わたくしも十把一絡げな議論はできないと思いますけれども、不要論を唱える方は、自然にかかったほうがいいんだと。ワクチンを打つよりも自然にかかったほうがいいとおっしゃってですね、若いお母さんたちが、『ああ、そうかな』なんて思ったりするというのも実際にあったことですし、今もあるんだと思います。この『自然にかかったほうがいい』という意見については先生どのようにお答えになりますか?」

薗部:「くどいようですが、そういう方は世界中極めてまれです」

高橋:「そういうお医者様は」

薗部:「そうですね。自然にかかるっていうことに関して、インテリのお母様が時々出るんですけども、ワクチンを打っても、抗体価っていうのを見ると、免疫はね、自然にかかったより低い。ですから、ワクチンを打ってもかかってしまうこともある。それから2回も3回も打たなきゃいけない。それに比べれば、自然にかかったほうが高い抗体価が得られていいんではないですかっていう質問が出るんです。ですが、それは高い抗体価を得るためには、条件が必要ですね。それは例えばはしかで申せば、熱が7~10日続いて非常につらくて、30パーセントの方は合併症を起こすんですよね。それでその中には当然重い肺炎や脳炎もあります。そういう合併症にかかっても、それで亡くならないで生き残った方の抗体価は高いんです。それで、その上に、家族にもうつしますし他の人にもうつすし、医療費もたくさん無駄に使いますよね」

高橋:「先生ここに図が出てますけれども」

薗部:「そうですね。今のはしかのように、自然の感染症の場合は重症化の危険性が高いし、他の人にもうつります。確かに強い免疫はできます。ですが、これも今『二度なし病』とは言わなくなって、はしかも再感染があるということも言われますが、まれですけどね。ワクチンの場合は重症化する危険性はほとんどありません。それで他の人にもうつしませんし、免疫は、こういう免疫に比べれば少しだけ弱いんで、これが、自然にかかっても2度かかることがあるようにですね、こっちのほうがそれに比べれば当然弱いから2度も3度もっていうワクチンの接種が必要になるわけですね」

高橋:「弱い分は、繰り返し接種することで補えばいいと、こういうことになるわけですか」

薗部:「そうですね。アメリカではもう、成人に対しても繰り返し接種するようにっていうことが言われるぐらいです。日本ではね、ほとんど言われませんが」

高橋:「素人の感覚ではですね、重い病気は確かに自然にはかかりたくないと思いますけれども、それほど重くない病気なら別に自然にかかってもいいんじゃないかって、こう考えがちですよね。ただ問題は、今おっしゃったようにはしかっていうのは実に重い病気であるということが十分知られていないし、一つ一つの病気、何が重くて何が軽いのかっていうのは、わたしたちなかなか分からないですよね。そうすると、いろんな、ワクチンで防げる主な病気出てきましたけど、この重い軽いでいうと、先生どういうことになりますか」

薗部:「はっきり言えば、みんな重いんです」

高橋:「みんな重いですか」

薗部:「重いです。ただし、多くの人が重いものと、多くの人は軽くかかるけれども、無視できない数の人が亡くなってしまう病気っていうふうに大きく分ければ二つに分かれるんです。例えばですね、今一番日本で誤解が多いのは、例えば水ぼうそう、おたふくですね。こういうものに関しましても、例えば水ぼうそうは、アメリカでいうと、ワクチンができる前は年間100人亡くなっていたんですね、人口は多いんですけれどね。それが、今はワクチンを2回接種して、非常に少なくなっています。日本においては、水ぼうそうでだいたい40人ぐらい毎年亡くなっているし。」

高橋:「今もですか?」

薗部:「それはワクチンができる前の話ですね。それから、3,000人~5,000人が入院している、というのがいろんなデータから推測できるわけです。ところが今日本で水ぼうそうにかかって、亡くなる方が15~20人。半分ぐらいにしか減ってない。ワクチンの接種率が50パーセントいきませんから。それから、当然入院する方ももう、1,500人からね、見方によっては、もうそれ以上っていうふうに多くの方が入院なさっているんですけども、そういうことはほとんど知られません。おたふくだって一生治らない難聴が年間600人~700人出てますけれども、その他脳がやられてですね、本当に重い後遺症で悩んでる方もおられるんですよね。脳炎だけでも年間30人以上出ていますから」

高橋:「脳炎っていうのはいろんな原因でなるんですね」

薗部:「おたふく風邪ウイルスによる脳炎、はしかのウイルスによる脳炎。みんなこういう病気は、重い合併症があるからね、何とかワクチンを作ろうとしたし、ということで、ワクチンで防げる病気っていうのは、ワクチンで防ぐべき病気と言ってもいいぐらいです。これがワクチンの不幸な点ですけれども、いいワクチンができて、病気の流行を抑えると、昔のことみんな忘れられてしまうんですね。もうポリオは、例えば30年患者さんがワクチンのおかげでおりません。大変素晴らしいことですね。ですけど、そうなると、『え、ポリオってワクチン受けなきゃいけないの?聞いたこともないでしょう?』っていうふうになってしまうわけですね。そこが難しいとこで、こういうことを繰り返して、それこそ学校教育も含めて、伝えていかないと、いつまで経ってもワクチン後進国で被害が続くということになりかねないですよね」

高橋:「ポリオに関しては、今日本では、不活化ワクチンは使えない状態で、不活化ワクチンのほうが副作用が少ないということで、これを使えるようにしてほしいっていう運動をしておられるお母さん方がいらっしゃいますよね」

薗部:「我々もそうです」

高橋:「先生方もそうで。これがなかなか実現しない。何で実現しないんですか?」

薗部:「それはもう、これはお話し出したらですね、何時間もかかるぐらい複雑なことなんですけれども、いずれにしろ、今までは非常に端的に言えば、厚労省は一生懸命ワクチンを入れて、やっぱりこういう病気を防ぎたいっていうことで、日本はワクチンの先進国でもあったんです」

高橋:「かつては」

薗部:「かっては。で、ものすごいことをやってきて、いいワクチン。水ぼうそうのワクチンも日本製」

高橋:「そうですよね。日本の先生が開発されたワクチンですよね」

薗部:「その通りですね。そういうことがあるんですけれども、日本の予防接種後のいろいろないわゆる事故の裁判において、今回の死亡例と同じようなことで、我々から見ればワクチンが原因とは思われないことでも、それはみんなワクチンが悪いと、それを打ったお医者さんや厚労省が悪いという判決が出た。そういう方を救うっていいますか、いわゆる補償制度で補償する場合には、日本では、過失補償制度といって、誰かが悪いことをしたからこのようなことが起こった、としないと補償できない。そうなるとワクチンを打った先生や厚労省が悪いということで、判決が出ちゃったんです。で、科学的に見れば、我々から見れば極めて問題が多いんですけれど、いったんそういうのが出ますと、それは三権分立ですから、司法の決定は重いんで、行政は動かない。そうすると、いわゆる暗黒の20年と言われるような、それ以後は厚労省はワクチン政策を推進できなかった、というふうにわたくしは理解しています。間違っていたら教えていただきたいんですけどね。ですので、そういうことが全部あるので、新しいワクチン、このHibワクチンや何かはですね、20年、世界に比べて導入が遅れてますね。新しいポリオの不活化ワクチンに関しても、日本政府も努力はしたんですけれども、残念ながら今まで入ってこなかったということで、不活化ポリオに関しては、もう世界中で実績がありますのでね、それでもう30年も患者さんがいないっていう状態においては、やはり1日も早く入れていただくと。このままでいけば、単独ワクチンだと3年ぐらいかかるっていう見方もあるぐらい。でもそんなことを言わずに、日本においてはポリオが撲滅されたときに、昭和36年に、時の古井厚生大臣が、全くテスト、いわゆる治験というのを行わないで、ソ連やカナダから生ワクチンを輸入して、それでポリオの大流行が、そのワクチンを接種したおかげであっという間にゼロに近づいて今にきてるわけですね。そのようなことも、こういう状況においては、ぜひ特例的に早く入れていただかないと」

高橋:「状況はちょっと逆ですけどもね」

薗部:「お母さん方の不安が非常に強まって、それで今ポリオのワクチンの接種率も下がってきています。他のワクチンの接種率も、ポリオの影響を受けているんじゃないかということもあるぐらいですね。このようなことを放置することはやっぱり良くなくて、安全性その他に関しては世界中で実績があるわけですから、日本でも輸入している先生もおられますのでね、そういう意味ではここら辺は政治的決断が望まれるっていうのがVPDの会の基本的考え方です」

高橋:「今おっしゃった、生ワクチン、不活化ワクチンそれからもう1つ種類があるんですね。ちょっと説明していただけますか」

薗部:「そうですね。生ワクチンというのは、はしかなどがそうですけども、生きたウイルスや細菌の病原性っていうんですかね、いろんな悪いことを起こす部分を、最大限に弱めるんですね。それは努力して弱めて。だけど免疫ができるようにした。いわゆる弱毒化とも言うんですけど。毒があるわけじゃないんですけどね。そういう悪い働きをなくした、これが生ワクチンで、ポリオなどがそうですね。ここに書いてあるものです」

高橋:「生きたまんまのものを、口から飲んだり注射で入れたり」

薗部:「注射でウイルスを入れるわけですね。BCGもBCG菌っていうのを入れます。それに対しまして不活化ワクチンというのは、もうウイルスや細菌を完全に殺してあるわけですね。より安全にするために、いろんないらない成分を抜いて、免疫を作るのに必要な成分だけを製剤にしたもの。ですからこれは打っても絶対その病気にはなりません。それがHibや小児用肺炎球菌、それから百日ぜき、日本脳炎、インフルエンザ、B型肝炎というものですね」

高橋:「こういう説明を聞くと、不活化ワクチンのほうが安全だというふうにすぐ理解できるんですけど、それだったら生ワクチンも全部不活化にすればいいんじゃないかと思いますが、他の麻疹とかはできないんでしょうか?」

薗部:「そういうのも努力はいろいろされたんです。ただし、この不活化ワクチンは結局そういう成分だけ取り出してるんで、1回打ったらすぐに免疫ができるっていうようなものではないんですよね。できる免疫の量も少ないから、最初に、例えば三種混合だったら3回打って、1年後にまた1回打ってまた追加をして」

高橋:「そういう欠点があるわけですね」

薗部:「そういう欠点があります。その点これは、結核は1回ですけど、ポリオは2回飲むし、こちらも今は2回、風疹やはしかは2回接種しますよね。それからおたふく風邪、水ぼうそうも世界で言えば2回接種なんですけども、回数減らせるけれども、やっぱりこういう問題がありますので。特に問題になるのが、免疫が大変に弱いお子さん、重症免疫不全という方の場合には、こういうワクチンで重症化することはあり得るんです」

高橋:「あり得る?」

薗部:「あり得る。まれですけどもあり得る」

高橋:「そういうお子さんは、生ワクチンはちょっと気を付けたほうがいいっていうことですね」

薗部:「診断がつけばいいんですけどね。診断が分からないこともあるもんで。ですから、そういう意味から言えば、全て不活化になるかですね、今は皆さんご存じないことですけれども、ガスリー検査っていうのはご存じでしょうか。」

高橋:「いいや、知りません」

薗部:「お子さんは?」

高橋:「もう大人になりました」

薗部:「やってなかったかもしれないですが、生まれたときに、かかとの血を採って、先天代謝の病気と」

高橋:「やりました。なんか、何をやったのかがよく分かりませんでしたが」

薗部:「早期に見つけて早期に治療すれば重症にならずに済むっていう病気だけを、かかとの血液で調べるっていう検査法があるわけです」

高橋:「それはガスリー検査っていうものだったんですね」

薗部:「総論的に言えばそう言います。その血液を、もう1つ増やして、ちょっと血液を採って調べれば、重症の免疫不全の患者さんをかなり見つけられるっていうのが、科学の進歩で行われていまして、アメリカではもうとっくにというか去年からですけどね、ヨーロッパももう導入が決まっています。で、日本でも当然そういう技術はあるんですが、そういうことが導入されないですね」

高橋:「なんででしょうか」

薗部:「ねえ。そこら辺はぜひ皆様方のお力で変えてほしいですね。そうすれば、そういう免疫の弱い方にとっても、いい治療が早くから受けられるし、病気にかからずに済むし、それから知らずにワクチンを打つということも防げるわけで、誰にとってもいいことなんですけれども、ぜひこの問題を日本政府は真摯に受け止めて、これは日本の子ども、これもいわば早期発見、予防に次いで、予防できないけども早期発見できるのはいいことですから、こういうのをぜひやっていただきたい、ということがここから言えますよね」

高橋:「予防注射にはもう一つ、トキソイドっていうのもあるんですね」

薗部:「はい。これはですね、例えばジフテリア、破傷風の毒素っていうのがあるんですけれども、こういう、この二つの病気にかかっても、免疫がほとんどできないんです」

高橋:「できないんですか?」

薗部:「ええ。毒素っていうのは、免疫成分、免疫になるような成分が極めて少ないんですね。ですから、破傷風も2度でも3度でもかかるんです」

高橋:「あー。今回の震災でね、破傷風にかかる方がたくさん出て」

薗部:「ですので、それに対して、ある特殊な方法で毒素を無毒化した上に、免疫ができるようにタンパク質の形にして、という方法がこのトキソイド。トキシン(毒)に似てるっていうことですね。それを応用したものが、ジフテリアや破傷風で。ですからこれは、無毒化して免疫ができるようにした成分が入っていますので、これをやればかからない。ただし破傷風も、20年ぐらいすると抗体がなくなりますから、被災地で言えば、前に打った方もはぜひこれは接種していただきいし、それから、1度も接種してない方はもちろん、ぜひ接種していただくことをお勧めいたします。」

高橋:「被災地の方は、できる限り破傷風のワクチンを打たれたほうがいいわけですね」

薗部:「まあ被災地の中でも、特にがれきの撤去をされる方は、もう靴の底にね、がれきが付いて、ほんのちょっとした土が体内に入っても起こるし、それこそガーデニングでも、鳥にちょっとポンと突かれただけでもなったとか、やけどからもなるし、非常に怖い病気です。日本では、話が広がりますが、年間100名前後の方がまだかかっているんですね。それで亡くなる方も多いんです。かかれば極めて大変です。今でこそ亡くなる率は減りましたけどね。そういうこともあって、打ってない人にどんどん打ちましょうっていうのがアメリカのやり方。日本は、もう破傷風の問題は誰も触れないという、誠に残念な状況ですよね」

高橋:「その、日本とアメリカの患者さんの数の違いも先生まとめてくださったようなんですが」

薗部:「これですね、2007年。これは意味あってこの年をやっていますが、アメリカでは、はしかにかかる人が43名。これが全例報告となっていて、100パーセントかっていえばそうじゃないかもしれないけど、信頼に値できる数字である。日本は、報告は4,000人なんですけども、これはあくまでもサンプリング調査と言って、一部の施設にこれだけいましたっていうことで」

高橋:「決まった病院から報告があった数なんですね」

薗部:「そうですね。それを、これは感染研っていうところが調べているんですけど、そこの推定の仕方の計算法っていうのがありますと、約10万人ですね」

高橋:「それは日本全国でこれぐらいだろうと推定しているってことですね。そうすると43と10万を比べることになりますね」

薗部:「そうです。もう一目瞭然」

高橋:「いや、これちょっとショックですね」

薗部:「そうですね。はしかの他にもありますけれども、一番代表的なものがHibワクチンですね。髄膜炎を防ぐHibワクチンですけれども、アメリカではですね、22もしくは、もっと怪しい人を足せば200っていう数字もあるんですけど、せいぜいそういうもんです。日本は、このときは調査がよくされていませんけど、推定値から言えば、Hib感染症っていうのがね、これぐらいおられるだろうということで、これだけの差があるわけですね。でもHibワクチンが入る前のアメリカでは、この数が2万人だったんです」

高橋:「そんなに多かったんですか」

薗部:「そうなんです。それが1パーセント以下になった。これはHibワクチンをいわゆる定期接種にして、無料で受けられるようにして、ほとんどの人が打つと、あっという間に患者さんの数が1パーセント以下になります。日本でもそれをやれば、全員無料で定期接種を行えば、これは8になる可能性があるわけです。」

高橋:「じゃあ、アメリカで2万人いて、日本で800ってこれは逆にずいぶん少ないですね、日本は」

薗部:「これはアメリカのほうが特殊で、病気によっては髄膜炎菌っていうような病気に関しても、アメリカのほうが多い、日本のほうが少ない。これはたまたまですね」

高橋:「そうなんですか」

薗部:「はしかは今減っていますけれども、これはもう、かかるべき人がだいぶかかったのと、それから2007年以後、政府も一生懸命努力して、小学校入る前に2回打つとか、1回しか打ってない中学生や高校生に打つというような努力をしてますので、今は大幅に減っています」

高橋:「2007年っていうのは、大学ではしかが流行ったっていうニュースがたくさん出たあの時期なんですね」

薗部:「その通りですね。これがただの、ただのっていう言葉は悪いですけれど、防ぎようのない病気ならば致し方ないって、民族性もあるだろう。ところがこれは、世界中でワクチンさえ打てば防げる病気なわけですね。だからVPDですね、ワクチンプリヴェンタブルディジージズです。こんなことが許されていいはずがないですよね。ですからみんな、お医者さんたちも、それから政府も一生懸命、対策を考えてくれているわけで、その一環としてHibやなんかの交付金制度ができたわけですよね。当然最後の狙いは、さっき出ましたワクチンで防げる病気を防ぐワクチンは全て定期接種にしてもらえばですね、これはもう、医療費も大幅に減るどころか、なんと言っても日本の未来である子どもたちの命と健康が守られるわけですよね」

高橋:「そうですね。定期接種だと無料で受けられるわけですよね」

薗部:「いや、必ずしもそうではないんです」

高橋:「あ、そうではないんですか」

薗部:「そうではないんです。アメリカに行けばですね、これらのもの、結核はアメリカ少ないのでバツになっていますけど、それ以外のものは広い意味で定期接種になっているわけです。日本は、定期接種になっているのは赤丸のこの部分しかない。B型肝炎、Hib、小児用肺炎球菌、おたふく、水ぼうそう、子宮頸がん。こういうのは全部任意接種ですから、自分でお金を払わなきゃいけない。一部の地域では前から少し補助があったところもあります。今度の交付金制度では、この子宮頸がんとHibと小児用肺炎球菌に関しては、政府がお金を出すけれども、自治体もお金を出さなきゃいけないので、無料でないところも結構あって、特に東京都は多い。もう、かわいそうなことにですね、やっぱりワクチン代かかれば、受けに行こうっていう気がやっぱり減りますよね。もともとこの病気の怖さをご存じないですからね。それから、ご存じであっても、所得の格差が命の格差になる可能性があるわけですよね。それで、定期接種は無料と誤解されていますが、ほとんどは無料の地域が多いんですけども、あれは実費を取ってもいいっていうことになっている」

高橋:「そうなんですか」

薗部:「ですから、完全無料でない地域も少ないけれどもあるんですね」

高橋:「あー、そうですか。それはやっぱり無料にしてほしいですよね」

薗部:「その通りですよね」

高橋:「いろいろ日本の問題点が分かってきましたね」

薗部:「そうですね。これだけ日米で差がある。これはもう、防げるんですからね、手を打てば。それも国が潰れるほどのね、予算が必要なわけではないんで、みんなどの国でもやっていることですから、ぜひぜひ、日本政府にしてもらいたいですけど。それにはまず、皆様方が、今日のテレビをご覧の皆様方が、ぜひ、国民のね、声なき声をたくさん集めて言っていただくことが大切だとわたしは思っております」

高橋:「はい。それではいったんコマーシャルを挟んでまた伺います。」

【CM】

高橋:「科学朝日、本日のゲストはこの方、日赤医療センター小児科顧問で『VPDを知って子どもを守ろうの会』代表の薗部友良さんをお迎えしています。ここまで、子どもとワクチンについて詳しくお話いただきましたが、ここで番組からプレゼントのお知らせがございます。以前番組でもテーマとして取り上げた子宮頸がんについて、わたしが執筆しました『最新 子宮頸がん予防』が7月20日に、朝日新聞出版から発売になりました。番組ではこちらを抽選で5名の方にプレゼント致します。住所、氏名、番組の感想などをお書き添えの上、ご覧のあて先までお送り下さい。朝日ニュースターホームページでも受け付けております。たくさんのご応募お待ちしています。この本で取り上げている子宮頸がんも、VPDとして会で取り上げていらっしゃいますね。これは、赤ちゃんに打つものではないですね。でも、会としては勧めておられるわけですね」

薗部:「はい。もうこれは非常に重大な病気ですし、今でも被害が出ているんですけれども、この子宮頸がんワクチンと検診を組み合わせることで、極めてゼロに近づける可能性のあるものですから、当然のことながら、このワクチンが日本中に無料で接種できて広まることを、常に願っております」

高橋:「この、『VPDを知って子どもを守ろうの会』はいつ頃できたんですか?」

薗部:「2008年からです」

高橋:「割と新しいんですね。設立のきっかけは何かあったんでしょうか」

薗部:「特別なことはありませんけれども、やはり、今までの、ワクチンで防げる病気の被害が多いっていうことをなんとかしようという考えを持っている小児科医が多かったんですね。たまたまあるきっかけでそういう会を作ったら、今は500人以上の小児科医も会員になって、一生懸命サポートしてくれております。こういう先生が地方にもたくさんおられるのでね、非常に患者さんにとってもありがたいことと思っております」

高橋:「会員になられるのは、小児科の先生方なんですか」

薗部:「基本的にはそうなんです」

高橋:「すると、一般のお母さん方は、会員ていう形ではないわけですね」

薗部:「はい。その代わり、このホームページを作っておりますので、ここは自由にアクセスできますし、それから携帯でもできます。ここに行きますとですね、こういう病気がどういう病気であるのか、それからワクチンはどういうものであるのかというようなことを、簡潔に分かりやすく書いておりますので、毎月8万人ぐらいの方は見に来られるということです。それから、ワクチンのスケジュールというのを立てるのが難しいんですけど、そういうスケジュールもダウンロードできますし、それで、このスケジュールは、なんと、今度の交付金制度のHibやなんかの時に、政府もこれを推奨してくれている」

高橋:「この会が作ったスケジュールを」

薗部:「民間のものをですね。載っておりますので。それから今度ロタワクチンっていうのが、たぶん9月か10月に出ますので、そういうときのスケジュールもいち早くここに出しております。その他ワクチンに関係する一般的なことは、ほとんどホームページのどこかに出ていますので、ご利用いただければ、これは患者さん方がいろいろ情報も得られるし、ドクターの方でここを見に来られる方も多いですね、はい」

高橋:「スケジュールというのは、わたしが子育てしたのはずいぶん昔の話ですけれども、基本的には行政からのお知らせが来て、じゃあ受けに行きましょうということで、自分でスケジュールを考えるなんてことはちょっと思ってもみなかったんですけれど、今はそういうことが必要なんですか?」

薗部:「その通りです。ワクチンの種類がぐっと増えました。それから新しく増えたほとんどは当然定期接種になっていません。任意接種が極めて多いわけですね。そういうのが、それも例えばロタウイルス、今度発売のもそうですし、それからHibや肺炎球菌も、生まれて2カ月から接種ですよね。そうすると、それを1本1本やっていたんでは毎週お医者さんのとこに行かなきゃいけない。世界中、もう生後2カ月から、アメリカで言えば6種類のワクチンを同時接種するんですね。そこには欧米の人種の方も受けますけれども、アジア人も日本人もたくさん受けていて問題ないんですけどね。そういうように、同時接種ということでスケジュールを作っていかないと、子どもを守りきらないわけですね。Hibや肺炎球菌にかかる方の、髄膜炎になる方の半分は1歳前にかかっちゃうんです。それから、保育所に行く方は多いんです。2~3倍増えるんです。ですから、そういう意味で、全てのワクチンを2カ月からどんどんやっていけば最短のスケジュールでお子さんを守りきることができる。それで、そういうことに関しては、行政は任意接種に関しては基本的にはあまり啓発をしませんから」

高橋:「そうですね。それは、ぜひ母子手帳に書いてほしいですよね」

薗部:「その通りですね」

高橋:「お母さんにとっては、母子手帳ってバイブルみたいなもので。あれを常に持ち歩いて、あそこに書いてあることはきちんとやっていこうと、こう思うわけですよね」

薗部:「でも今は、もうその母子手帳が間に合わないというか、逆に言えば今ある任意接種ワクチンがみんな定期接種になれば母子手帳に書かれるわけです。だからそっちの方が早いか、その前から母子手帳を変えるかっていう問題がありますけれども。おっしゃる通りでですね、非常に難しい点がありますけれども、この会のそういうスケジュールの立て方の考え方とか見ていただければ、かなりお役に立つと思います。ただし、地方の状況によって、接種スケジュールが、例えばBCGを集団で接種する地域とか、個別で打つとか、その他いろんな状況がありますので、これは我々が最短でできる方法をお示ししていますけれど、最終的には主治医の先生が、その地域のことを一番ご存じですから、その先生と相談されて決めていただくと。そうしないとお母さん方1人では確かに」

高橋:「無理ですよね、やっぱり。それ以外にも新しいことにたくさん直面してですね、お母さんは戸惑うことがいっぱいある中で、こう難しい話でちゃんとスケジュールに沿って注射しに子どもを連れてくっていうのはそうできることじゃないですよね」

薗部:「そうですよね。それで会社も休まなきゃいけなかったりとか、そういうこともありますから、そういうことも含めて、子育てがしやすい社会に、日本をよりいっそう強化する必要があるし、その中では、最終的にはこういうのをやれば、お母さん方が会社を休まないで、病気になればもっと休みますからね。全般的に、日本は子どもに優しい国っていうふうに誤解されてますが、ご存じのように実際問題は子どもに使う予算は極めて少ない。日本学術会議でもそのことを問題にするぐらいですよね。ですから、少子化問題も全部含めて、最終的には国が子どもを、日本の未来ですから、守るんだという姿勢を明確にしてもらえばいい。やることは世界中のやってることと同じことをやればいいわけです」

高橋:「子どもを大事にするんだっていう、政府の姿勢の示し方がですね、子ども手当っていう形になっちゃっているところがちょっと残念だなという感じもしますね。こういうことを一つ一つやっていくっていうのは、政府にしかできないことなんですよね。そっちはなおざりにしておいて、人々に受けがいいといいましょうか、分かりやすい政策をやっていくっていう方針ですね、今の政府は」

薗部:「言い出したらあれですが。やっぱり今までの流れがありますからね。それを昔から変えていればこんなことなかったわけですけど」

高橋:「自民党時代からですね。今の民主党政権の問題ではないということですね」

薗部:「民主党がいいとか悪いっていうことは全て置いときましてですね、我々は、子どもの立場から考えれば、前からやっておいてほしいし、今度急にね、子どもにと言っても、日本がこんなに子どもを守ってない国だっていうことが知られていませんのでね。我々VPDの会は、子ども手当でワクチンをっていうキャンペーンもやっていたんです。でもそういうことよりか、全て定期接種化していただければね、それはまたいろいろ使えたと思うし。でも本当にOECD、先進30カ国の中で28位っていうぐらいに、子どもに対する予算の使い方が少ない国っていうことが知られていませんのでね」

高橋:「そうですね。分かりました。先生方の情報を提供する活動は大変大事だと思います」

薗部:「ありがとうございます」

高橋:「ただ、ウェブだけだとなかなかアクセスできるお母さん方も限られると思いますけど、なんかもっとね、手に取りやすい形で皆さんに情報が広まるようになるといいですね」

薗部:「一応、本を作りましたので」

高橋:「あ、そうですか」

薗部:「1月に作りました。大きい本屋さんには、『お母さんのためのワクチン接種ガイド』という本が置いてありますので、それを見ていただければ、インターネットができない方にもお役に立つかと思います」

高橋:「分かりました。今日はいろいろ大事なお話をありがとうございました。科学朝日、本日はこの辺りで失礼します」