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iPSを支える学界の論議が見えない

米本昌平

米本昌平 東京大学教養学部客員教授(科学史・科学論)

 京都大学の山中伸弥教授が開発したiPS細胞(人工多能性幹細胞)が、基本技術としての地歩を確実に固めている。このほど、アメリカで特許が成立し、これによって、ほぼ世界中でiPS細胞の特許を京大が押さえたことになる。さらに、この技術を使って京大の斎藤通紀教授らのチームは、マウスのiPS細胞から精子をつくり、これを卵子と体外受精させてマウスの子を誕生させるのに成功した。これによって、iPS細胞から分化させた組織が、生殖機能の場合でも完全な機能をもつことが実証され、真の基幹技術であることが確認された。今後、発生や分化の基礎研究がさらに進むはずである。

 こんな報道に接すると、ほとんどの日本人は、これで再生研究における日本の地位は安泰、と思うかも知れない。ところが実態はまったく逆なのだ。その理由は、ヒトES細胞(胚性幹細胞)を用いた研究が、日本では極端に少ないからである。

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筆者

米本昌平

米本昌平(よねもと・しょうへい) 東京大学教養学部客員教授(科学史・科学論)

東京大学教養学部客員教授。1946年、愛知県生まれ。京都大学理学部卒業後、三菱化成生命科学研究所室長、科学技術文明研究所長などを経て現職。専門は科学史・科学論。臓器移植からDNA技術、気候変動まで幅広く発言。著書に『地球環境問題とは何か』(岩波新書)、『バイオポリテイクス』(中公新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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