須藤靖(すとう・やすし) 東京大学教授(宇宙物理学)
東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。1958年高知県安芸市生まれ。主な研究分野は観測的宇宙論と太陽系外惑星。著書に、『人生一般二相対論』(東京大学出版会)、『一般相対論入門』(日本評論社)、『この空のかなた』(亜紀書房)、『情けは宇宙のためならず』(毎日新聞社)、『不自然な宇宙』(講談社ブルーバックス)、『宇宙は数式でできている』(朝日新聞出版)などがある。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
須藤靖
毎年の帰省でこの太平洋に再会するたびに、自然と心が落ち着くはずなのだが、今年は複雑な思いを禁じ得ない。そもそも以前よりこの地域では、南海地震が発生する可能性が指摘されていた。1946年(昭和南海地震)、1854年(安政南海地震)、1707年(宝永地震)、1605年(慶長地震)、1498年(明応地震)をはじめ、過去1000年以上にわたり100年から150年の周期で南海地震が発生している。基本的には、この過去の統計にもとづいて、今後南海地震が発生する確率は30年以内に60%、50年以内に90%程度であると予想されている。また高知県がまとめた被害予想によれば、安政南海地震を再現するような震源モデルを仮定した場合、揺れによって3万、津波によって3万5千、崖崩れによって1万など、火災や液状化まで考慮すると8万から9万もの家屋が全壊するとされる。
しかし、これらのデータをどう解釈し、どう対応すべきかを考え始めると自明ではない。予想される地震の周期が人間の平均寿命と近すぎるためだ。
論座ではこんな記事も人気です。もう読みましたか?