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南海地震は忘れた頃にやって来るのか?

須藤靖

須藤靖 東京大学教授(宇宙物理学)

 8月上旬に帰省した。私の故郷は、高知県安芸市。これといって何があるわけでもないが、美しい自然にだけは恵まれている(1965年以来、阪神タイガースのキャンプ地であったのだが、来年から一軍の春季キャンプは撤退するらしい)。第三セクター「土佐くろしお鉄道会社」による「ごめん・なはり線」が海岸沿いに運行しており、車窓越しに見える太平洋はまさに絶景である。御免駅から安芸駅に至る約30kmの区間には、海と山にはさまれたわずか数百m程度の領域に沿って人々が住んでいる地区がかなりの割合を占める。過疎・高齢化という問題に直面しつつも、海と山と川に囲まれつつのどかな生活をゆったりと楽しめる地域である。
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 毎年の帰省でこの太平洋に再会するたびに、自然と心が落ち着くはずなのだが、今年は複雑な思いを禁じ得ない。そもそも以前よりこの地域では、南海地震が発生する可能性が指摘されていた。1946年(昭和南海地震)、1854年(安政南海地震)、1707年(宝永地震)、1605年(慶長地震)、1498年(明応地震)をはじめ、過去1000年以上にわたり100年から150年の周期で南海地震が発生している。基本的には、この過去の統計にもとづいて、今後南海地震が発生する確率は30年以内に60%、50年以内に90%程度であると予想されている。また高知県がまとめた被害予想によれば、安政南海地震を再現するような震源モデルを仮定した場合、揺れによって3万、津波によって3万5千、崖崩れによって1万など、火災や液状化まで考慮すると8万から9万もの家屋が全壊するとされる。

 しかし、これらのデータをどう解釈し、どう対応すべきかを考え始めると自明ではない。予想される地震の周期が人間の平均寿命と近すぎるためだ。

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筆者

須藤靖

須藤靖(すとう・やすし) 東京大学教授(宇宙物理学)

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。1958年高知県安芸市生まれ。第22期・第23期日本学術会議会員。主な研究分野は観測的宇宙論と太陽系外惑星。著書に、『人生一般二相対論』(東京大学出版会)、『一般相対論入門』(日本評論社)、『この空のかなた』(亜紀書房)、『情けは宇宙のためならず』(毎日新聞社)、『不自然な宇宙』(講談社ブルーバックス)などがある。

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