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消された歴史―宇宙膨張、本当の発見者は?

須藤靖

須藤靖  東京大学教授(宇宙物理学)

 宇宙が膨張しているという話はどこかで耳にしたことがあるだろう。理論的には一般相対論の自然な帰結なのだが、それを支えているのは、遠方銀河があまねく我々から遠ざかっておりしかもその速度がその銀河までの距離と比例しているという観測結果である。

 この速度・距離関係は1929年の論文でそれを初めて発表した米国の天文学者エドウィン・ハッブルの名前を冠してハッブルの法則、そして速度と距離の比例係数はハッブル定数と呼ばれている(ハッブル定数の逆数は近似的に現在の宇宙年齢に対応するから、その数値を決めることは宇宙がいつ始まったかを推定することでもある)。これからもわかるように、宇宙膨張という世紀の大発見をなし遂げたのがハッブルであることは完全に確立した事実とされてきた。しかしごく最近、「ハッブルの法則」の発見を巡る意外な歴史的事実が指摘され、一部の天文学者の間で大いに盛り上がっている〈末尾の注を参照〉。

 発端は、2011年6月6日にカナダの天文学者ファン・デン・ベルフが、研究者間の最新論文の公表の場となっているインターネットサイトに投稿した論文(というよりもどちらかといえばエッセイ)、「ルメートルの方程式24番にまつわる奇妙な事件」。 ・・・ログインして読む
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筆者

須藤靖

須藤靖(すとう・やすし)  東京大学教授(宇宙物理学)

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。1958年高知県安芸市生まれ。第22期・第23期日本学術会議会員。主な研究分野は観測的宇宙論と太陽系外惑星。著書に『ものの大きさ』、『解析力学・量子論』、『人生一般二相対論』(いずれも東京大学出版会)、『一般相対論入門』(日本評論社)、『三日月とクロワッサン』、『主役はダーク』『宇宙人の見る地球』(いずれも毎日新聞社)などがある。

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