高橋真理子
2011年09月14日
政治評論家たちの間でも、小宮山発言を「勇み足」ととらえる向きが多い。だが、普段は省庁の壁を突き破ることが必要と口をそろえている人たちが、こういうときになると壁を踏み越えるなといわんばかりなのは、どうにも違和感がある。
それぞれの大臣が自らの信念で日本全体のあるべき方向を語るのは、歓迎されこそすれ、批判されるべきことではない。むろん、その内容については賛否両論があるだろうし、自由に議論を重ねればよい。しかし、発言を封じ込めるような内閣はおかしいと思う。藤村修官房長官は、9日の閣僚懇談会で「テレビ出演などでの発言は政府方針を十分に踏まえるように」と全閣僚に注文をつけた。たばこ増税論は政府方針を踏まえていないということのようだが、そもそも日本はたばこ規制枠組み条約(FCTC)を批准していることを官房長官は認識しているのだろうか? この条約を批准した日本政府は、条約を誠実に実行する国際的義務を負っている。「(1箱)700円台ぐらいまでは(値上げしても)税収も減らない」と禁煙促進のために増税を促した小宮山発言は、この国際的義務を果たそうとするものだ。その認識こそ全閣僚にまず持ってほしいと思う。
FCTCは、世界保健機関(WHO)の下で作成された初めての多国間条約で、2003年5月の第56回世界保健総会で全会一致で採択された。日本政府は翌年ニューヨークで署名、すぐに国会が承認し、日本は19番目の批准国になった。批准国が40カ国になった日の90日後に条約が発効するという取り決めに従い、05年2月27日から発効。以後、締約国会議(COP)が07年、08年、10年と開かれ、各種のガイドラインが策定されてきた。
条約の「第四条 基本原則」には、以下のような記述がある。
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