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「超光速」にみる正しさの度合い

須藤靖 東京大学教授(宇宙物理学)

 ニュートリノという素粒子が光よりも速く進む可能性(以下、超光速と略す)を示唆する実験結果が9月に発表された。新聞やマスコミは大騒ぎである。私にまでも本欄でこの話題について書くように依頼があった。繰り返しお断りしたのであるが、それすら面倒になってきたので、今回ついに書くことにした。ただし、おそらく期待されているのとは異なる観点から。

 単純化すれば「(超光速という解釈が)本当だとすれば、物理学の基礎を根底から変える大発見である」というのが、マスコミの報道の要約であるし、まさにそれは事実として間違いない。しかし「本当だとすれば」という留保に対して想定されている確率がいくらなのかは、一般の方がイメージするのは困難であろう。その値をいくらと考えるかによっては、過剰な反応を生むことにもなりかねない。そこで、あくまで私の個人的な印象であると明確にお断りした上で、具体的な数値を使ってその雰囲気を述べてみたい。

 日本物理学会の会員は約2万人である。

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