2011年12月03日
京都議定書は、制度・参画者の視点から整理・分析すれば,1)法的削減義務、2)先進国の削減先行、3)5カ年1期間、の3つの特徴がある。温室効果ガスの排出削減目標を期限付きで決め、各国別に排出割当を行い、削減義務(2008年から2012年までに、対1990年比、EUは8%、アメリカは7%、日本は6%削減する)を負わせる一方で、削減目標達成のため、森林吸収源等による温室効果ガスの吸収量を用いることができると規定した。とくに重要な制度は、市場メカニズムを利用した京都メカニズム(JI,CDM,排出量取引)の採用である。
参画者の参加面では、先進国と旧社会主義国のみに数量化した削減目標を課し、他方で途上国はCDMのもとで先進国から資金や技術の提供を受け、温暖化対策を自発的に行うよう位置づけられている。もっとも先進国の参画者間でも、削減義務量に差異が生じている。EUは域内での共同達成が認められ、EU各国の削減量に差異化が図られた(EUバブル)。旧社会主義国は90年の排出量が基準になったために(ソ連崩壊は1991年)、余剰排出承認証(ホット・エアー)が生じている。アメリカは気候変動枠組み条約には留まるものの、京都議定書を離脱した。
今のままでは、最大のCO2排出国となった中国とアメリカが削減義務を負わない京都議定書の効果は少ないが、地球温暖化のリスク、原子力のリスク、輸入化石燃料依存のリスク、この3つのリスクを総合的に減らす取り組みが必要であり、そのために、京都議定書の成果と制度を生かす必要がある。
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