2011年12月05日
京都議定書は第1期(2008~12)だけの削減目標を決めている。もし、COP17(気候変動枠組み条約締約国会議)で第2期の内容が決まらなければ、手続き上の時間切れで、13年以降は、削減義務のない空白期(ギャップ)ができることがほぼ確実になる。そうなると、京都議定書の最大の武器である「各国に削減の義務を課す」ことがなくなり、議定書は形骸化し、事実上、死を迎えるともいえる。その代替となる制度はまだ遠い。
京都議定書は日本人にとって特別な思い入れがあった国際条約だ。しかし、今は崖っぷちに立っている。そして日本政府も京都議定書が消えるのを待っている。
南ア・ダーバンは南緯30度、今は夏、丘陵地をサトウキビ畑が埋めている。今は雨期で、夜になると突然に雨が降り出す。「最近、雨の降り方が変わってきた。今年は洪水も起きた」と地元の人がいう。
南アだけでなく、脆弱な農業基盤しかもたないアフリカ諸国にとって気候変動は大きな脅威だ。3日には、COP参加者ら5000人が、ダーバン市内で、気候変動を起こした先進国の責任などを問う「climate justice」を掲げてデモを行った。NGOは「Don’t kill the Kyoto」も掲げている。
COP17(11月28~12月9日)は会議期間の半分を終えた。ここで何かをぜひ成し遂げようという熱気はなく、雰囲気は低調だ。
テーマは、1)京都議定書の第2期をどうするのか。2)米国や中国など京都議定書で削減義務をもたない国を含め、「すべての主要国が入る枠組み」をどうつくっていくのか、である。
12月4日には、中国代表団団長の解振華・発展改革委員会副主任が、「中国は2020年以降将来、法的な拘束力のある新しい枠組みに入るのか?」という質問に対し、「議論することに同意する」と答え、少し注目された。
いくつかの作業部会に分かれて議論し、1週目の終わりには、それまでに議論をまとめた文書がでてきたが、まだ各国の主張を羅列したようなものでしかない。
《主張はばらばら》
各国はどんな主張をしているのか。米国はそもそも、京都議定書を批准していないので、「議定書の第2期」の議論には関与していない。ただ、11月28日の記者会見で、米国代表団は「ポスト2020」という単語を盛んにつかっていた。それまでに京都議定書は完全に終わり、20年以降は次の枠組みとして話しているとみられている。ただ、その「新たな法的枠組みでは、中国、インドなどとの義務の同質化を譲らない」としている。将来、何かをつくるとしたら米中は同等に、ということだ。「Legal Parity」という言葉で主張している。
中国、インドを含む途上国は「削減義務は先進国のみ」の原則を主張し、「議定書の第2期を設定して、先進国は削減義務を継続するべきだ。米国も削減義務を受け入れるべきだ」としている。「まずは米国など先進国。そこが動かなければ動かない」という立場だ。
ここで、現在、削減義務にそって努力しているEU、日本、カナダ、ロシアなど姿勢が重要になる。
欧州連合(EU)は議定書の第2期の設定に積極的だ。「何年か後に広範な国が参加する法的枠組み(legally-binding framework)に合流する道筋が示されるならば第2期の設定に賛成」というものだ。つまり、議定書の第2期をつくって「空白期」をなくす一方、すべての主要国が入る法的枠組みづくりのロードマップを15年ごろまでにつくり、2020年ごろからはそれを実施しよう、といっている。現実的で理にかなっているが、どこまで賛成が得られるか。
さて、日本である。いまのところ、日本、カナダ、ロシアは、「第2期つぶしの急先鋒」だ。3カ国の主張は、「世界のCO₂排出量の25%しかカバーしていない今の議定書のままでは、第2期をつくることは反対」だ。「限界を迎えている京都議定書に固執していれば、世界の温暖化対策は進まない」という。それはそれで筋が通っている。議定書の代わりに狙う「全ての主要国が入る実効性のある単一の枠組み」ができれば文句はない。
しかし、いまのところ、これは理想論で、現在の国際交渉には、それに向かう雰囲気がないのである。理想論をいうだけでは、京都議定書が死ぬのを、静かに見ていることにほかならない。
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