米本昌平(よねもと・しょうへい) 東京大学教養学部客員教授(科学史・科学論)
東京大学教養学部客員教授。1946年、愛知県生まれ。京都大学理学部卒業後、三菱化成生命科学研究所室長、科学技術文明研究所長などを経て現職。専門は科学史・科学論。臓器移植からDNA技術、気候変動まで幅広く発言。著書に『地球環境問題とは何か』(岩波新書)、『バイオポリテイクス』(中公新書)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
国際合意は、参加するすべての主権国家が認めうる部分だけが文書となるから、最小限の内容に傾きがちで、どの立場にとっても都合のよい表現をとることになるから、評価するのは難しい。しかもCOP17の課題は、複雑でかつ激しい対立をはらんでいたから、決裂しても不思議ではなかった。だが最終的には、温暖化対策が不可欠であることを世界中の国々が認め、京都議定書の形とは異なった、全加盟国の参加を前提とする枠組みの交渉に合意したのであり、この成果は決して小さいものではない。
言い換えれば、ダーバン合意は、地球温暖化問題を再確認し、21世紀初頭の事態に合わせて書き直したものである。このことは同時に、京都議定書を軸としたこれまでの温暖化交渉とはいったい何であったのか、総括すべき時点にいることを意味する。実際、来年で条約締結20年、立派な現代史研究の対象なのだ。
COP17が異例の日程延長の末、からくも次の枠組みの交渉スケジュールで合意したのに対して、温暖化条約そのものの成立過程は極端に短く、わずか15ヶ月の交渉で成立した。
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