須藤靖
2011年12月16日
今回話題となったヒッグス粒子とは、この素粒子の標準理論において、唯一存在が確認されていない素粒子である。それがいかなるものかは、すでに別の場所で繰り返し紹介されているはずなので、ここでは繰り返さない。むしろ、12月13日にセルン(欧州合同原子核研究機関)で行われた発表前後の報道を通じて考えた最新の科学成果を共有することの意義を論じてみたい
この世界を構成している未知の構成要素を発見する。その行為は極度に抽象的であり、ごく少数の選ばれた、浮世離れした学者が小さな実験室に閉じこもって研究に没頭しているというイメージがぴったりするのではなかろうか。むろん現実は全く異なる。
今回の舞台となったスイスのジュネーブにあるセルンのLHC(大型ハドロン衝突型加速器)は、14年の歳月をかけて20カ国以上が5000億円を超える巨費を投じたビッグプロジェクトである。今回のヒッグス粒子探索に関与した2つの実験のうちの1つであるアトラス実験は、世界中から約150の研究機関(日本からは15の大学・研究機関)が参加し、2200人以上の研究者からなる国際共同研究とのこと。上述の偏見を完全に覆すスケールの実験である。
ここまでくると、その実験自体がもはや国際社会の縮図と呼ぶにふさわしい規模観を帯びてくる。
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