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「冷温停止状態」「事故収束」宣言の現実

吉田文和

吉田文和 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

 政府は福島第一原子力発電所の「冷温停止状態」「事故収束」を宣言したが、これは、政府と東電が事故収束の工程表の第2段階(ステップ2)として「冷温停止状態」の年内達成をめざしているなかでの発表だった。

 冷温停止状態は、原子炉内の圧力容器底部が100度以下の温度に保たれ、外部に漏れる放射性物質が十分少なくなっているのが条件とされた。だが本来、「冷温停止」の意味は、定期検査などで原発の運転を止め、密閉された原子炉の中で冷却水が沸騰していない安全な状態のことなので、事故を起こした原子炉については、通常の意味での「冷温停止」の定義が当てはまらないはずである。

 しかも、住民帰還の目途がたたないなかでの「事故収束」宣言である。これに対して、福島県の佐藤雄平知事が「事故は収束していない」との認識を示したのは当然である。佐藤知事は、原発で処理水の漏れや汚染水が増え続けていることを県民が不安に感じていると説明した。

 原子力安全委員会の班目春樹委員長でさえも、「これは普通の原子炉施設ではなくて、かなり、中がどうなっているかも分からない、炉心状態がどうなっているかも分からないというようなものですから、今後、何が起こるかということについて、きちんと予想するということは非常に難しい」(原子力安全委員会のウェブサイト「記者ブリーフィング」12月12日)といわざるを得ない現実である。

 このように、原発事故の収束からまだほど遠い状態にもかかわらず、なぜいま「冷温停止状態」「事故収束」宣言なのか。

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筆者

吉田文和

吉田文和(よしだ・ふみかず) 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

1950年生まれ、兵庫県出身、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。北海道大学大学院経済学研究科教授を経て2015年から現職。北大名誉教授。専門は、環境経済学、産業技術論、主著『ハイテク汚染』岩波新書、『環境経済学講義』岩波書店、最近は低炭素経済と再生可能エネルギーの普及に関心を持つ。札幌郊外の野幌原始林の近くに住み、自然観察と散歩を趣味とする。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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